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伝えられた力

バニッティとシダイズという新たな同行者と共に

魔王たちが向かったのは港町モッチャだった。

そこから船に乗ってナザード大陸を目指す。

しかし、彼らのなかに状況を全て把握している者はいない。

ただ、ゼンがナザード大陸の魔王城に向かうように

という言葉を残して姿を消したことで

全員がナザードを目指すことで合意していた。

ところが、意志の統一がなされた矢先に

ペンの失われた腕の傷跡に激しい痛みを覚え

原因不明の発熱により、昏倒する。

それは奇しくも、正統勇者組合の四兄妹が力を得た時と

同じ時刻だった。

勇者たちは彼の症状回復を待つつもりだったが

それを制して、ディアス残って彼を介抱する。

と言いだした。

ペンの異常な状態に何かを感じ取ったのだろう。

その雰囲気は他の勇者たちにも伝わり

ここで魔王と勇者は別行動をとることになった。

その夜、ペンの様態が少し落ち着いたのを確認したディアスが

リッジの元を訪れる。

夜も更け、他の皆は寝静まっている時間だったが

ディアスが扉をノックするとすぐにリッジが現れ

部屋へと招き入れる。

部屋のソファを勧められ、腰を下ろしたディアスが話し始めた。

「夜分にすまない。

今回、我々が別々に行動する前に

君に伝えておかなければならないことがあったのでね」

それはリッジも予想はしていた事だった。

ただ、高齢な自分の力で、ディアスの代わりを務める事ができるのか?

彼の中でそんな不安が渦巻いていた。

そんな気持ちを察したのか、ディアスが言葉を続ける。

「これは本来、私がやらなければならなかったことだ。

だが、今の状況では確実にできるという確証が無くなってしまった。

そこで君に、後の事を伝えておこうと思う」

そう言った彼はゆっくりと立ち上がり、リッジに向かって

静かに右手を差し出した。

それに応えるように、リッジも右手を差し出す。

お互いの右手が固く握られた。

そして、ディアスからリッジへの力と知識の移動が行われた。

「大丈夫、何もなければ私がやろう。

これは万が一の保険、と思ってくれ」

そう言うと、やや疲れた表情でディアスは部屋を出て行った。

部屋に残ったリッジは、その力と知識はディアスの死によって

自分の物となる事を認識し、その時が永遠に来ないことを願いつつ

明かりを消して、眠りに就くのだった。

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