時を超えて
魔神ベーゲルの存在に興味を示したアブソルートが
ギャストリック荒野に現れたのは、エンビーが
紋章を開放し、最後の聖獣と戦おう
としていた所だった。
エンビーの紋章解放による力の増大で、既に戦意を無くしている聖獣の
姿を見たアブソルートは聖獣を消滅させる。
そのあまりにも簡単な聖獣の最後をみて、その場にいた勇者たちに
それを行った者に対する恐怖が
生まれていた。
そんな事には興味が無かったアブソルートだったが
昔懐かしい、カルウ王国の紋章を開放するエンビーを見て
魔神ベーゲルが現れるまでの座興を思い立つ。
「偶像を一体、用意してください」
その言葉にシーミングが小型の偶像から自分の分身を作り出す。
この分身がベーゲル教団で魔人衆と戦った物の正体だった。
偶像がエンビーと対峙する。
先に魔法を放ったのはエンビーだった。
黄色の魔法陣が生成され、魔法を発動させる。
「圧殺」
ただし、その魔法は偶像に対して、効果を発揮することは無い
それでもアブソルートが感嘆の声を上げた。
紋章の解放を行う事も通常の勇者程度では困難だが
さらに黄色の魔法陣までも使いこなす、ということに驚いていた。
だが彼にしてみれば、それも魔神ベーゲルが現れるまでの余興
としての反応に過ぎない。
エンビーは放った魔法を無効化されたことによって
紋章の更なる解放を行おう、と呪文を唱え始めたその時
彼らの丁度中間にある空間に、歪みが生じた。
そこから現れたのは、クロツ大陸で、貪欲な手に引き込まれた
魔王女フィリンだ。
突然現れた彼女が周囲を見回すとアブソルートの存在に気が付いた。
「あら、勇者コム、お久しぶりね。
どうやら道を間違ったみたい」
そんな彼女の姿を見たアブソルートは、激しく動揺し
その場から掻き消えた。
すぐその後をシーミングと偶像が続いて姿を消す。
その様子を見たフィリンは
私の接吻は、彼の心に大きな傷を残してしまったようね。
と、小さく呟いた。




