大きな傷跡
蜃気楼を封印した魔王たちが蜃気楼大陸を封印し
後は空間の歪みを消すだけだった。
そんなほんの少しの気の緩みが
魔王たちにあったのかもしれない。
空間の歪みから、貪欲な手と呼ばれる物が次々に現れる。
普通の状態であれば、空間の歪みを消す事や手など
全く問題にならないのだが、今回は先の攻防で疲弊した神経と感覚が
その存在を見ているのに認識していない。
そのせいで勇者たちは、貪欲な手によって
次々に歪みの中へと引きずり込まれる。
そしてそれはついに魔王たちにも襲いかかる。
標的になったのは、ミグリスとリッジ
彼らは蜃気楼に共鳴して暴走するレヴァのクリスタルを抑えており
そのせいでピヨピナたちが蜃気楼に移動した後の制御に
力を貸す事ができなかった。
そして、落ち着いてきたとはいえ、まだ
予断を許さないレヴァの状態に身動きができない。
そんな二人に手が伸びてくる。
その手を遮るように飛び出したのは魔王女フィリンだ
混濁した思考ながら、二人を庇うために
その身を投げ出した。
体を掴んだ二つの手は、魔王女を歪みの中へと引きずり込んで行く。
そして再びその手がリッジたちに襲いかかろう、と手を伸ばすが
これはパナシアによって歪みごと消滅させられる。
その時、ようやくレヴァの状態も安定させることができた。
力を使い果たしたミグリスがその場に崩れ落ちる。
そんな彼より、ほんの少しだけ余裕があったリッジが
周囲の様子を見回すと、刺客として現れた勇者のうち
無傷だった者は、バニッティとシダイズの二人だけのようだが
彼らは恐怖で腰が抜けているようだ。
後の者はどこかしら負傷して、戦力と呼べる状態ではない。
伝承者を見ると、ヒダンはミグリス同様に地面に倒れている。
パナシアは、戦闘中に左腕を失ったペンの傷を癒していた。
後はディアスが、何とか立っている
と言う様子だった。
パナシアがペンの治療を終えた後、これ以上一緒に旅をすると
今回以上に危険なことが起こるかもしれない
と、ここで分かれることにする。
パナシアたちがその場を去り、日が陰りを見せた頃
ゼンがどこからか馬車を用立てて来た。
こうして彼らは馬車に乗り、町へと向かう。
バニッティとその部下たちは、近くの詰め所から救援部隊が現れ
搬送されて行った。
そして辺りは夕闇へとつつまれていく。




