最後の砦
魔王と勇者たちが入り乱れて魔力の暴走が止まらない
それを魔王の放つ「支配の棘」によってその空間の魔力を
穿っていく。
魔力の膨大な勢いにわずかだが乱れが生じたようにも見えた。
ただ、これ以上の干渉は更なる暴走の引き金になるかも?
そんな不安を抱えて、これ以上の行動を起こせない。
この未知なる事態に魔王と勇者は共に戸惑い、決断しかねている。
そんななか、パナシアが放った「境界門」の発動により
蜃気楼とこの世界を断ち切る門が現れる。
この世界でこの状態を掌握ししているのは、パナシアと
ゼンの二人だけだった。
その二人の表情が同時に険しくなる。
彼らの視線の先には、門の扉が閉まる力を凌駕する勢いで
実体化する蜃気楼の存在があった。
このままでは門を閉じることができない。
そう判断したパナシアは
「ヒダンさん、しばらく、お願いします」
そう言って新たな魔法を唱え始める。
パナシアが魔法のを唱えるために周囲に放っていた魔法が一部解除され
その負担がヒダンにのしかかる。
しかし、ヒダンも限界近くまで魔法を駆使していたようで
パナシアの力を補いきれない。
パナシアの加護を受けられなくなった勇者たちが次々に
魔力の渦に巻き込まれて絶命する。
そんななか、パナシアが新たな魔法を完成させた。
「守護門番ライラング」
その言葉に答えるように一名の屈強な衛士が門の前に現れる。
そしてその反動だろうか、周囲が爆発したかのように
街道沿いの木々がなぎ倒されていく。
そして爆発に巻き込まれた勇者たちが吹き飛ばされてしまう。
しかし強大なライラングの力により、右の扉は徐々に閉じようとしていた。
ただ、左の扉は尚も解放されたままで、そこから溢れ出る蜃気楼の存在が
ライラングの力を押し戻し、再び右の扉を開こうと勢いを増していく。
それを見たパナシアが絶望の表情を浮かべる。
自分が新たに「守護門番」を唱えるために魔法を解除すれば
今の魔力の渦や、ライラングの波動に対する防御を失うばかりか
さらにレフラングの波動までも受けることになる。
これはここにいる全員の消滅を意味していた。
それを察したのか、ゼンがパナシアに向かって
「私が守護門番を使います」
そう言うと呪文を唱え始める。
それを聞いたパナシアがゼンの魔法詠唱尾が終わるまでに
胸元で素早く印を切って結界を張る。
「七十三法印」
特定の空間に結界を張り、波動を結界内に封じるつもりだ。
その結界をはるリスクとして、再びパナシアの力の庇護を
失った者たちが消滅し、異常な力で捻じ曲げられた空間が
数か所浮かび上がる。
その歪みが蜃気楼の力を取り込み、拡大しようとしていた時
ゼンの詠唱が終わり、レフラングが現れる。
と同時に、波動の力によってパナシアの結界が破壊されていく。
さらに左右の門番の共鳴により、波動の勢いが増していく。
七十三重ねの結界が全て破られようとした頃、扉は閉まり
門番は姿を消した。
固く閉じられた門も朧げに形を失っていく。
後に残ったのは、数か所の捻じ曲げられた空間だった。




