伝説 7
ナザード大陸より東に位置するトーレス大陸。
洞窟の奥深くに彼らの姿はあった。
「こんな所で不便は無いのかい?」
僅かな蝋燭の光しかない薄暗い中であきれたような表情をしながら問う。
「特には・・・。」
さほど気にした様子もなくもう一人が答えた。
恐らく洞窟の主。
ということはナザード大陸の魔王
ということになるのか。
そっけない返事を気にする様子もなく聞いたのは
先ほどと同じ人物。
「ナザードの魔王は封じられちゃったみたいだけど
君はこれから始めるのかなあ?」
よく見ると、彼はナザード大陸の魔王に撤退を促した側近だった。
「あいつは事を急ぎすぎたからな。」
彼らの中で特に体が大きく、全身を毛皮にくるまれた男が言った。
「順番でいうと、クロツ大陸ってことなんだろうけど
カルウ王国の神官長がここに来てたみたいなんだよねえ。
月の女神ミリアの加護を受けに来たんだったらめんどくさいなあ。
ここが先でもい良いんじゃないかなあ」
希望、とも独り言、ともいえる口調で側近が言う。
「時間、かかるから。」
ト-レス大陸の魔王はそっけない返事だ。
側近は面白くなさそうに唇を尖らせる。
「なんだか面倒事が多そうだし俺もトーレスに乗っかることにするか」
などど毛皮の男が大声で笑う。
「良いけど、最後は起こすから」
表情を変えずにトーレスの魔王が呟く。
「こういうのは結果じゃなくて経過がおもしろいのになあ」
側近はあきれた様子だ。
「それじゃ、今度は私の番ね」
それまで気配を完全に消していた彼女の発言に、二人が驚く。
「おぉぁあ・・・。いたのかよ」
「ま、まかせる」
「そーだねえ、それじゃあ今度はクロツちゃんの所に行こうかな?
君はどんな面白いこと考えてるか楽しみだなあ」
などど軽口をたたきながら側近は一人、闇へと消る。
「それじゃ、私も準備があるから」
クロツの姿も続いて消える。
「俺はのんびり待つとするか、じゃあ、頼んだぜ」
毛皮の男も消えていった。
残ったトーレスの魔王は明かりを消そうと立ち上がるが
ふと背後に気配を感じた。
「忘れ物しちゃった。
僕からのアドバイス。
ナザ-ドの魔王には気を付けたほうが良いよお
もし、何かあったら僕も力を貸しちゃうかもしれないし」
それだけ言うと、再び闇へと消えていくのだった。
一人残された魔王は
「わかった」
と一言呟いて、明かりを消した。