作戦失敗、そして
聖獣と戦う勇者たちが幻術を使って混乱をさせる。
その作戦はどうやら上手くいったようだ。
一匹目の聖獣の動きが止まり、幻の中の敵と戦っているのか
近づく勇者たちの存在には気が付いていない。
そこで勇者たちが一斉に武器強化をかけた剣や槍で
聖獣に攻撃を行った。
これで倒せる。
その場にいた勇者たちは皆、そう思っていたが
攻撃を受けた聖獣が反撃に出た。
不用意に近づいた勇者たちが次々に聖獣の餌食となっていく。
状況観察と万が一のための援護として、少し離れた所にいた勇者たち三人が
異変に気付き、救援に駆け付けた。
「幻術が効かなかったのか?」
そう問いながらも倒れた仲間をできるだけ救おうとする。
しかし息があったのは一人だけで、後の者は絶命していた。
彼らはその一人を救出すると、素早くその場を離れる。
討伐隊たちが陣営に戻ると、支援部隊の隊長はエンビーとジェラスに呼ばれ
その場で何が起こったのか確認が行われた。
話を聞いてジェラスが
「聖獣の意識が無くとも、攻撃に対する反撃を行う魔法か
本能が備わっていたようだな。
しかも武器強化の魔法物理的な攻撃も通用しない
となると、手の打ちようがない」
そう言ってちらり、とエンビーを見る。
すると今度はエンビーが
「もう一度確認するが、幻術に対する耐性は持っていなかったんだな?」
再び問われた隊長は、幻術に掛かったことは間違いが無いと念を押す。
そこで再びエンビーが
「では、幻術で不安定になった精神を封印する事にしよう。
ただ、これには二つの問題がある。
一つは、敵が精神を封印した聖獣の肉体を操るのではないか?
という点で、そうなってはもはや精神封印の意味がなくなってしまう。
だから聖獣の精神を封印した後は速やかに敵の聖方陣使いたちを
倒さなくてはならない。
もう一つは、先程戦った聖獣が幻術に対して、既に耐性を持ったかもしれない
という事だ。
もしそうであれば無理をせず、他の魔獣から封印することにする。」
それを聞いてジェラスは
「だったら他の聖獣も耐性を持ったんじゃないんですか?」
という素朴な疑問に対して、今は聖獣が個々の自我を持っているようだし
彼らが個体として完全なら情報の共有などは行われないだろう。
というのがエンビーの考え方だった、ただしジェラスには
最悪の場合も考えておくようにしなければいけないね。
と、いったんその場を締めくくった。
こうして再び部隊の編成が行われ、新たな五人の勇者が選抜される。
しかし、今度この作戦が成功したとしても、聖獣との戦いを行った勇者は
すぐに敵の本隊に対して闘えるわけでは無い。
そのうえ、一匹でも聖獣が倒されれば敵の本隊が押し寄せてくるだろう。
もしかしたら最初の一匹の異常を感じ取って、既に動き出しているかもしれない。
最初の一匹を倒してから残りの全てを倒すまで、迷いや失敗が許されない。
戦力となる勇者は既に五十数名、聖獣七匹に総勢三十五名を向かわせ
三人一組の救援部隊が三組、となると本隊と戦う事ができる戦力は僅か
十名程しかいない。
これに対して敵の聖方陣使いは五十名、加えて兵士が一万という。
そんな状況の中でエンビーは、こんな時自分が二人いれば。
と思っていた。
しかしそれは思っただけで、さすがに言葉にはしなかったが・・・。
代わりに彼はひとりの勇者を伝令に出した。
そしてその夜、再び聖獣との戦いが幕を開ける。




