伝説6
カルウ王国、円卓広間。
魔王討伐の報告を受け、パリット公爵の働きかけにより
国の主軸である面々が召集されていた。
魔王軍の脅威が去った今
その功績が誰にあったのか
を国王に報告しなければならない。
そのためにの集会だった。
王国宰相トソが口を開いた。
「皆には伝わっていると思うが、遂に魔王軍を討伐し
その根源である魔王を倒すことができた。
ナザード大陸六国の中で唯一、カルウ王国のみが成しえた偉業である。
これも、日頃から我が行政府が平民に至るまで、王国国民としての
誇りを持たせた、その粉骨砕身の努力によって成しえた結果だと考えている。
我らの力なくして、この時を迎えることは叶わなかっただろう」
最年長であるトソが皆の顔をゆっくりと見回す。
すると、少しおどおどした様子で
神官長総代補佐のヘイスが言った。
「た・確かに優れた国民を有する我が国だと思います。
ですが、今回の魔王討伐では勇者の存在があればこそだと
思うのですが・・・」
最後は消え入りそうな声でうつむきながら発言を終えた。
そんな彼の言葉にアロ元帥が
「勇者、と言うが
この戦いで十三人のうち八人は敵に倒されているようだが?
いかも、我ら三人を前に神官長総代たるベノア殿はなぜ現れないのか!」
強い口調で問われ、再び消え入りそうな声で
「ベノア様は、新たに勇者を求めてほかの大陸に向かわれました」
「家族や財産を持ってか!?」
そんな話を聞かされていなかったヘイスは動揺し黙り込んでしまう。
鼻で笑いながら、アロが続けた。
「今回の戦いにおいて最も力を尽くしたのが国王軍兵士だったのは明白です。
彼らの犠牲が無かったら、今日を迎えることは叶わなかったでしょう!」
先代の元帥であったアロの父もこの戦いで命を落としている。
彼にしてみれば、戦場で戦うことのない文官や神官が功績を語るなど
許されないことだった。
知らぬ間に拳を強く握り、頬には涙が伝っていた。
そんな姿を見てパリットが声をかける。
「全く、国王軍兵士の勇猛さには頭が下がる。
しかも、その兵士を幼き頃より育てる地盤を築いた国造り。
このどちらかが欠けても王国は成り立たなかっただろう。
しかし、それだけで魔王軍が倒せたか?
といえば、もちろん倒せただろう。
だがそれは恐らく今ではない先のことだったかもしれん。
今、魔王を倒せたのは何故か、勇者がいたからか?
もちろんそうだろう。
貴族である勇者がいたから、魔王を倒すことが出来た。
そう、王国とともに生きた貴族だったからこの偉業が成し遂げられたのだ」
大陸の失われた五王国の領地をめぐり少しでも多くの恩賞を得ようと
自らの手柄を誇示しようとしていたが
国を思い国のために尽くした者達の成果
と言われてしまうと、自分たちだけが特別
とは言えなくなってしまう。
これで恐らくは現在の爵位によって
大陸の領地が振り分けられていくのだろう。
と予想された。