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あふれ出る思い

パリと公国の正統勇者組合の本部でその長であるエンビーは

新たな悩みを抱えていた。

魔王討伐に向かった息子らの連絡では、出発から二週間たっても

その所在すら掴めなかったからだ。

彼らの無能ぶりにエンビーは落胆し、残った子供たちを向かわせるか

迷っていた、たとえ彼らが応援に駆け付けたとしても

成果を出せなければ意味が無い。

情報によれば、勇者商会のミグリスがカルウ王国国勇リッジと

行動を共にしているようだ。

このまま何も手を打たない、と言うことも出来ない。

自分が二人いれば、魔王を見つけて討伐するなどたやすいことだが

子供達にはまだ荷が重いようだ。

そんな考えを巡らせていた所に、新たに情報が入って来る。

トーレス大陸においてインフェクシアス教団と交戦中のだった

勇者エンビーが討たれたというのだ。

この報は公式にパリット公国から受けたもので、間違いようがない。

公国としては、如何に非公式とはいえ公国の勇者の訃報を重く受け止め

エンビーに対してインフェクシアス教団を狂信者の集団として抹殺するように

との命が下された。

当主の訃報を聞いたジェラス家は幹部会を招集し

そこで次のジェラスを受け継ぐ者の候補者を決定する。

現状の状況を考えると、商業的能力に長けている者でなく

本来の勇者としての資質ある者が選ばれるべき、と言う幹部の総意で

決まったのはボーンリスと言う青年だった。

彼は他の候補者に比べて魔法の知識が多く、戦闘能力にも秀でていた。

ただ幹部たちの認識によると、今回の他の候補者と比べて

という感じでしかなく、有事の際だから仕方がない。

と言った声も多く聞かれた。

そこで幹部会で彼の承認にあたり、ボーンリスの当主就任は暫定

という事で話が収まり、彼がトーレスで事態を収拾できれば

改めて人格、品格、能力を含めた選考が行われることになった。

結局、彼はトーレス大陸のためだけの使い捨てだったが

本人はそんな事を知ることも無く、初めて受けた重責に

心を震わせていた。

元々、勉強が得意では無かったが自分の得意な魔法や戦闘技術などを

ひたすら頑張って来た。

落ちこぼれと馬鹿にされ、虐げられてきた自分が今回の幹部会で

認められ、当主を任されることになり

彼は命に変えてもクロライド教との盟約を守ろうと心に決めていた。

そして彼は急いで準備を整え、自分を慕ってくれている者達を連れて

カルウ王国からトーレス大陸絵と向かう。

彼にとって、計算や策謀などは思いもよらぬことで

ただ、純粋に自分の責務を全うしようとしていた。

そして後に残された幹部らがその後、自分達が動きやすいように

根回しを開始している。

ボーンリスが教団を撃破し、再びこの地に戻って来た時に

彼が滞りなく引退できるように。

それは唯一、教団幹部たちの優しさだったかもしれない。

こうして新しいジェラスが旅立った。

しかし、勇者エンビーの苦悩は続いていた。

ジェラスに対する公然の秘密と言えるような内情を知っても

公国から命じられた事が反故になるわけでは無い。

全てに対して自分は不運だと嘆き、いつものように

「なぜ、自分が二人いないんだろう?」

と頭を抱えるのだった。

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