わがまま
南ナザード連邦魔王討伐隊の人選が確定する。
元々、勇者コム直系の子孫であるミグリスは確定していたが
彼を補佐する二人の人物の選考が、ミグリスの希望により一度撤回されたためだった。
当初、チャーバンは単純に姉に貰ったリストから優秀な人材を選び
二人に絞り込んでいた。
チャ-バンの姉ソミンはこれで自分の計画が完全なものになると
思っていたのだが、甥のミグリスがこの人事に対して異を唱える。
「優秀とはいえ、知らない人たちと旅をするのは心細い」
というのが理由だったが、息子に甘いチャーバンはその言葉を受け入れ
再選考を行う。
ところが選考が終わり、その人物と対面してもミグリスは了承をせず
再び選考が行われる。
という状態が続き、三週間という時が過ぎ去ろうとしていた。
この頃になるともはや彼には出発する意思が無いのではないか?
魔王に恐れをなして逃げているのではないか?
という噂が各所でささやかれ始める。
この噂を広めたのはソミンだったが、ミグリスの対応を見ていると
あながち間違っていないのではないか?
と思われていた。
だがそんな状態に、遂に終わりの時がやって来る。
ミグリス自らが同行者を決定したいと申し出てきたのだ。
「父さん、このままではいつまでも出発できません。
ここは僕に人選を任せてもらえないでしょうか?」
確かに今のままでは息子の納得する人物を選ぶのは困難だ
そう考えた父は了承し、その人物が誰かを聞く事にした
すると息子が名前を挙げた人物は、ミグリスの幼少期より
共に過ごしていた幼馴染のエートリアムとベントリキュラだった。
この答えにチャーバンは動揺する。
彼らは二人とも勇者の中では能力が乏しい存在だったからだ。
しかし、そんな感情は出さず、息子には少し時間をくれ
と言葉を濁して息子を送り出した後
すぐに姉の所に向かった。
そして姉、ソミンが出した答えが
その二人とでであれば出発をする、と言うのであれば
認めるように。
との答えで、これ以上世間の噂によって表面上は勇者商会の評判が下がることを懸念し判断をする。
と言う形になったが、彼女にしてみれば側近が無能の方が始末もしやすい
という単純な考えからだ。
そんな事とは知らず、チャーバンは姉の許可が下り、息子に対して
良い返事ができる事を単純に喜んでいた。
そして出発の日、息子のために勇者商会を挙げての出陣式を行う。
その出陣式は朝から夕方まで行われ、結局ミグリス達の出発は翌日になった。
そして翌日、改めてミグリス達が出発する。
そんな三人が夕方、ある宿屋で出会ったのがディスの子孫であるリッジと
ディアスの忘れ形見である少年レヴァだった。
ただ、この出会いは偶然ではなく、全てミグリスの計画によるもので
一緒に旅をするための選考に難癖をつけ、時間を稼ぎながら
リッジと連絡を取り魔王討伐に向けた仲間を集めていた。
こうして勇者コムの子孫と、勇者ディアスの子孫は
時代を超えて、再び魔王討伐の為に行動を共にするのだった。
そして、そんな事は知らないバニッティの娘、ソミンは
ようやく事態が動き始めた事に、大きな野心を募らせていた。




