トーレス大陸へ
パリット公国、非公認勇者であるジェラスはカルウ王国に対して
中型の商船の手配を依頼していた。
王国内の真正勇者協会の勇者をトーレス大陸に移送するためだ。
カルウ王国からトーレス大陸へは順調にいけば約二週間ほどの船旅だったが
王国にトーレス大陸からの特使が到着してから既に四日が経過しており
彼等が出発するのはインフェクシアス教団が出兵に対して遅すぎる対応だと言える。
そんな彼らがトーレス大陸に到着した時には
教団に対して一カ月以上もの遅れが出ているだろ。
この状況を少しでも何とかしようと、勇者移送に際して
大型の船を避け、更に一隻に乗る人数を減らす事で船脚を速め
魔法で水の抵抗を軽減するなどを行い、十日ほどでトーレス大陸に到達する計画だった。
また、カルウ王国以外にもパリット公国、南ナザード連邦より
商船を借り上げ、それぞれの詰め所から勇者を派遣している。
そんなナザードの勇者の動きにインフェクシアス教団も動き出していた。
勇者を海上で撃退するために勇者達の航路に海軍を出兵する。
この時、既にカルウ王国とパリット公国から出向していた勇者たちの船団は
既にトーレス大陸に到着していたが、トーレスに最も距離のある南ナザード連邦からの
船団が海上でインフェクシアス海軍に遭遇する。
そこはまだトーレスに到達するまでにあと三日ほど必要な場所で
既に大陸に到達している他の勇者に援軍を求めることができず
南ナザードの勇者達は現存の戦力で戦わなければならなかった。
勇者側の戦力は、商船一隻に勇者二十人を乗せた船が三隻に対して
教団側の戦力は戦船一隻に信者四十人を乗せた戦船十隻のだった
この勇者側に不利な状況で戦いが始まった。
教団側は数の上での優位に敵を包囲してから殲滅しようと勇者達の船を中心に
左右から囲い込もうとする。
包囲されて集中砲火を受ける前に、勇者側が教団の船に対して魔法の攻撃を放つ。
勇者達の船三隻から放たれた光刃は包囲しようとした教団の船を破壊し
その攻撃に教団戦船の船員に動揺が広がる
単純に兵士を乗せていると認識していたが、この攻撃により
勇者達の魔法に対応すべく、聖導師が甲板に上がる。
そして聖導師達が聖方陣を展開し、攻撃を防ぐ。
ところが先制攻撃である魔法は、勇者が制空権をとるための布石で
混乱に乗じて複数の勇者が戦闘海域上空に配置されていた。
そして今度は勇者達による上空からの魔方攻撃が教団の船を襲う。
戦船の帆や舵を狙い、次々に魔法の攻撃を行っていく。
この段階で教団の船を三隻は、なんとか航行不能に陥れることができたが
教団の迅速な対空防壁の聖方陣によりこの攻撃が弾かれるようになる。
しかし、勇者側もこれを逃しては数で劣る自分達に勝機はない事を知っている。
勇者側は対空防壁に対して二人で同時に一つの防壁を攻撃し
障壁を破壊する手段に出た。
これが功を奏したのか、防壁が徐々に削られているように思えた。
ただ、攻撃に集中するあまり、教団の聖導師が空戦のために船から離れたのを
認識できていない勇者が数名いた。
そして彼らは聖導師によって次々に撃墜されていく。
この事態に上空からの攻撃が困難になってしまい
もはや勇者に打つ手はない、と思われた時
轟音と共に教団の戦船が数隻撃沈される。
その数は四隻にも及んだ。
勇者達の最終的な攻撃によるものだった。
戦闘を船上に集中させ、上空からの執拗な攻撃で
海中に対する警戒を解かせるのが狙いだった。
但し警戒を怠り、撃沈できた船は四隻だけで
後の七隻は用心深く海中にも対策を行っていた。
ただ、実質的には航行可能な船は三隻しか残っていないため
ここで勇者側は撤退を行う。
教団側は撃沈された船の乗組員の救助や航行不能になった船の
修理、もしくは曳航を行わなければならないため
これ以上の戦闘は不可能だろうと思われたからである。
そして勇者側は多大な被害を受けたがなんとかその海域を離れ
再びトーレス大陸を目指すのだった。




