苦渋の選択
パリット公国で勇者カスミとクラウスの後継者として新しい組織を立ち上げた
公認勇者であるエンビ-の子孫はその時から代々当主を拝命する際に
エンビーの名を受け継ぐという事になっており。
これは二つに分かれたもう一つの勇者ジェラス家も同様だった。
そして今回の事態にあたり、エンビ-の」正統勇者組合は魔王討伐の人選に悩んでいる。
この遠征に当主である自分が動ければ、恐らくは二カ月も経たぬ間に事態は解決し
世界は救われるだろう。
ただ、真正勇者協会がトーレス大陸でインフェクシアス教団との戦った場合
彼らの手におえず、恐らく自分に泣きついて来ると考えていた。
自分一人であればトーレス大陸統一に半年もかからないだろうが
魔王討伐とト-レスの平定を両方同時に対応するとなると、少し時間がかかってしまう。
これを行うのは自分一人で完遂するのは一年ほどかかりそうだ
そうなれば、この公国を離れる期間が長くなってしまう。
無能な部下達ではその間に公認勇者を剥奪されてしまうかもしれない。
そんな優秀な彼の口癖は、他人に対して
「なぜできないの?
俺だったらこんな事はすぐできるのに」
というもので、なぜ自分がもう一人いないのかと日頃から思っていた。
自分と対等に語り合える相手がいないことに不満を募らせていくのだが
その様子を見て彼の子供たちは彼に対し冷ややかな視線を送っている。
また、口癖に対してもその言葉を発する度に、人望と髪の毛が無くなっていく、と笑っていた。
そして連日の苦悩の末、ようやく結論にたどり着く。
その日、子供たちが正統勇者組合本部の組合長室に集められる。
息子が三人、娘が二人だ。
「お前たちの一人に当主を譲ろうと思う、そして私は会長となりお前たちに
最善の指示を出そう」
彼の出した答えがこれだった。
自分が二人いない以上、自分が現場に行くことは全てにおいて損失となる。
であれば、せめて無能な者達を導いて少しでも早く
事態の収拾を図るのが最善の策。
その為に会長として就任し、全権を持ったまま彼らに指示すれば
魔王討伐に一カ月、トーレス大陸の統一に三カ月ほどで達成できる予定だ。
これで、自分一人で両方の対応を行うよりも
期間を短縮できる。
これが悩んだ末に出した結論だった。
「我こそは、と思う者はおるか?」
子供たちに問いかけるが返事はない。
内心では情けない。
と思いう反面、ほっとしている部分もあった。
もし、当主希望者が出て自分の思惑と違っていた場合に
計画が遅れることに対しての危惧があったためだ。
結局、息子一人と娘一人が魔王討伐に行くことになる。
そして、会長として立てた計画は
魔王を探し出し倒す、と言うものだった。
この時、子供達から魔王をどうやって探すのか?
という疑問が出てきたが
「そんなものは、向こうに行って尋ねれば良いだろう」
と、子供たちの愚かさに対して、もはや怒りすら沸いてこなかった。
後にに残った子供達には真正勇者協会からの要請があった場合は
トーレス大陸に赴き、 総主教ビクティム並びに八十賢人
及び十三聖者を倒すように指示をする。
再び子供たちが質問しようとしているのを察して
「そんな事は考えればわかるだろう」
と制してしまう。
子供らを退室させた後、自分一人であればこれだけかかるであろう
という日数に対して人数を増やす事で短縮する目的だったのだが
彼らの無能ぶりを見ると再び
「なぜ、自分は二人いないのだろう」
と再び頭を悩ませるのだった。




