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国営勇者

カルウ王国の貴族でナザ-ド大陸の魔王を討伐した勇者ディアス。

彼は当時、最高の栄誉を以て称えられていた。

しかし、その彼は魔王討伐後の混乱の最中

戦闘中に崖から転落して行方が分からなくなってしまう。

そして、魔王がいなくなった世の中で勇者と言う存在意義が薄れ

忘れ去られた存在になりつつあった。

そこにナザ-ド大陸各地で反乱や暴動、更には干ばつが大陸を襲う。

当時の国王は勇者ディアスの孫娘を第四婦人とし

政治的に利用する事を考えた。

こうして、カルウ王国に国の運営する勇者の集団『国勇』が誕生する。

彼らは大陸で初めて勇者を国営事業とし、旧魔王城を観光地として活用する。

だが、これら全てに第四婦人であるモルティアナが関与していた事は、公にはされなかった。

国の存亡にかかわる事態で、もしも計画が頓挫もしくは失敗するようなことがあれば

彼女が全責任を負っていたかもしれない。

ただ、結果として状況は好転し

その危機は国王の英断と采配によって乗り越える事が出来た

と後世に語り継がれることになった。

そしてまた、勇者に対する不遇の時代は繰り返される。

魔王復活のその日まで。


カルウ王国謁見の間にディアスの子孫で『国勇』の代表である

リッジが召集されていた。

王は彼が謁見の間に入って臣下の礼をとろう、とする間もなく問う。

「魔王、魔王が復活したそうだ。

しかも、クロライド教団からは援軍の要請まで来ている。

どうする?どうしたら良い?」

ストレスの為か青白い顔をして落ち着きが無い。

そんな国王の問いに対する答えは既に決まっていたようで

「まず、国勇選りすぐりの者達を魔王討伐に差し向けようと

現在、人選を行っております。

明後日には選抜が終了し、来週には出発できる予定です。

また、クロライド教団の件に関しては、公国の勇者協会が協力を申し出ていますので

彼らに任せるのも良いかと存じます。」

問いかけに対しての対応策がすぐに提案されたことによって

国王の顔色は少し良くなったように見えた。

「それは良かった、協会の連中を向かわせる、という事で教団には返事をしておこう。

しかし、魔王の方は不安が残るな。

人選と言っても、彼らは勇者の子孫ではないし、他の国は全て勇者の子孫が

討伐に参加するのに、わが国だけが偽物を送った、と言うのも

国の名前に傷がつきそうだ。」

国王の中途半端に名誉を重んじる気持ちがリッジを困惑させる。

そんな王の表情が笑顔に変わる。

「そうだ、お前が行けば良い!」

その言葉を聞いてリッジは愕然とする。

彼は今年、五十八歳を迎え、そろそろ引退を考えていた所だ。

そこにブラックなサプライズが待っていようとは夢にも思っていなかった。

ただ、国王の命令は絶対で断ることが出来なかった為

討伐にあたり、一つ、願い出たことがあった。

「かつてこの大陸が魔王の脅威に晒された時

魔王を討った勇者の末裔が、再び魔王と対峙しようとしています。

ただこの中に一人、伝説に名前を記されていない勇者がおり

その子孫が、我がカルウ王国に今も住んでいる。

との情報があります。

その彼を、今回の討伐に同行させようと考えております。」

その言葉を聞いた国王は

「カルウ王国の名に恥じぬような人選であれば任せる」

と、既に魔王討伐が成されたかのように彼に興味を失い

退室をした。

そして残されたリッジは空になった玉座に深々と礼をし、謁見の間を後にする。

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