南ナザ-ド連邦
南ナザ-ド連邦は、かつてナザ-ド大陸に存在した五つの国
その国の末裔達が興した連邦国家であり、ナザ-ド大陸第二の勢力を誇っていた。
その彼らに『魔王再来』の報がもたらされた。
これを受け、緊急に首脳会談が行われる。
そこには勇者コムの末裔であるチャ-バンの姿があった。
全員がそろったことを確認した議長は皆を招集した理由を述べる。
「半月ほど前、クロツ大陸のドステン平原に紅い魔法陣が出現した。
と言う情報が入って来ている。
現地の者達の話によれば、再び魔王が現れたのではないか?
と、危惧しているようだ」
議長の言葉に各首脳は思い思いに話し始める。
「しかし今までこの世界では、紅い魔法陣など聞いた事も無い」
「いや、伝承によれば過去にクロツ大陸で魔王が現れた時に紅い魔法陣が現れた
という記述がある」
「そのような迷信に惑わされるのは、危険ではないのか?」
「いや、歴史に目を向けず、自らの判断のみで結論を出す方が危険だ!」
「そもそも、魔王と言う存在自体を疑うべきではないのか?」
彼らにとって、大切な日常が壊されようとしていた。
変化のない淀み切った日常が、最も居心地が良く
自分達が得意な分野や経験したことが通じなくなると
それらを否定し、見なかったことにしようとする。
そんな彼らが出した結論は、勇者コムの子孫であるチャ-バンへの
丸投げだった。
議会会場を出て帰路についたチャ-バンはこの事態に困惑していた。
ナザ-ドの魔王を倒し、更にクロツ大陸でも魔王を倒した至高の勇者。
その末裔である自分がほぼ魔法が使えない、という事実もあり
この大役を誰に任せるか、と考えると足取りが重くなっていく。
結局、候補が纏まらないまま、経営する『勇者商会』へと着いてしまった。
そこで待っていたのは、姉のソミンだ。
彼はことの顛末を姉に話して指示を仰ぐ。
「それでは、勇者として現地に赴き、魔王が出現しているようなら
討伐するように、という事なのね?」
首脳陣にしてみれば、その為の勇者で自分達が力を貸すことは無い。
と言うのが言葉の端々に現れていた。
そのような話を持って帰った弟に呆れながら
「貴方の息子に行かせなさい」
姉の言葉に慌てて
「ミグリス!?
あいつは普通、ふつうなんだよ!
もし、万が一魔王がいたら殺されてしまう!!」
姉の無慈悲な言葉に声を荒げてしまう。
「何も一人で、とは言っていないわよ。
いま直ぐに集められる者の中で優秀な二人を護衛につけなさい。
そして、全支部に連絡して優秀な者を呼び寄せるのよ。
彼らにはミグリス達を影から護衛させなさい。
たとえ魔王がいたとしても、最終的に誰が倒したか?
なんてことは、報告する者にしかわからないの。
でも、責任ある者がが勇者の末裔でなかったり
ましてや大人数で出発した、なんてことはすぐに噂になる。
それは避けなくてはいけません。
ナザ-ド大陸で唯一、二人の魔王を倒した至高の勇者の名前に傷がつく。
そうなれば、パリット公国の勇者やカルウ王国の勇者に市場を荒らされる。
でも、この話が本当で、魔王がいたなら勇者商会の総力を挙げて魔王を倒しなさい。
そうすれば、私たちの地位は不動のものになるでしょう」
それを聞いたチャ-バンは早々に各支部へと使者を出し
同時に息子と、この支部の優秀な勇者に準備をするよう指示したのだった。




