クロツ大陸 18
カノア森林地帯で強襲を受けている中で
解放軍兵士達は混乱の只中にいた。
彼らには既に、小鳥の羽音でさえ恐怖の対象となっているようだった。
ただ、伏兵の目的が解放軍の混乱と戦意喪失を目的としていた為に
大きな被害にはならなかった。
とことん追い詰めた挙句、捨て身の反撃を受けたのでは
数で劣る先住民族の兵士達に勝ち目が無い。
それは初めからわかっていることだ。
ただ、その策を察知したババロとコム、そしてオジの魔導士部隊は何とか体勢を立て直し
反撃に移る。
彼らはワイフから手に入れた魔法を解析し
老婆ユリイが兵士にかけた憑依魔法を解除する。
これにより、先住民族兵士が近づくことが出来なくなり
彼ら三部隊は森を抜けることが出来た。
一番に森を抜けたのはオジの率いる魔導士部隊だ。
彼らは対魔獣要員の為、左右をババロとコムの部隊に守られ
ほぼ敵と接触すること無く、直線的に平原に到着した。
正面に魔獣がおり、それを囲むように飛龍が旋回しているように見える。
ただ、何かおかしい。
魔獣を攻撃しているはずの飛龍の中に異形の物が存在している。
「黒い、竜・・・?」
見上げた兵士の一人がそう呟いた。
自分達の世界に存在する飛龍とは異なる。
神話の中に存在していたという『竜』の姿そのままだった。
そして竜は飛龍を次々に捕食する。
「何をしている、援護だ!魔法を放て!」
空中戦に魅入られたように固まっていた彼らににオジの激が飛ぶ。
我に返った百名程の魔導士が次々に呪文を唱え、光の刃を放つ。
その攻撃は魔獣と黒竜に命中した。
ただ、それだけ。
ナザ-ド大陸の魔法は彼らには通用しなかった。
しかし、攻撃が魔獣に対してオジ達の存在を認識させ
攻撃の対象となる。
魔獣は再び呪文を唱え始めた。
その間にも黒竜が次々と飛龍を襲う。
そんな混戦の中、飛龍の操騎兵が魔導士たちの中に落下した。
彼は黒竜の正体をオジに伝え、戦線を離れる。
ここで彼らは憑依の魔法を解除する呪文を唱える。
そこに魔獣の光弾が襲いかかる。
その攻撃で二割の魔導士が倒されてしまう。
しかも動揺した彼らは呪文は中断してしまった為に
再び唱えなければならない。
残った人数で再び呪文を唱えようとした時
魔獣が猛然と襲いかかる。
飛龍の部隊が身を挺して盾になろうとするが
圧倒的な力で弾き飛ばし、魔導士たちに喰らいついた。
ここでまた二十名程が倒されてしまう。
更に、魔獣の真下に新たな魔法陣が浮かび上がる。
このままこの位置で魔法を喰らえば全滅は避けられない。
オジは撤退の指示を出す。
だが、この状態で無事に逃げ切れるとは思えず。
彼らはただ、終わりの時を待つばかりだった。
魔法陣から現れたのは何本もの鎖だった、鎖が具現化され
魔獣を拘束し始める。
オジ達はこの様子をただ見守るしかなかった。
また、上空でも異変が起こっていた。
今まで圧倒的なスピ-ドで、飛龍を捕食していた黒竜が
突然、飛龍の行方を見失ったかのように
標的を求めて迷走している。
鎖が魔獣の自由を完全に奪った時、皆の前に
ババロとコム、そして彼らと行動を共にしていた魔導士達が現れた。
対魔獣戦闘において一般兵士の無力さを知っていた為に
彼らを森に残し、自分達は平原近くに潜んで機会を伺っていたのだった。




