クロツ大陸 16
封印のクリスタルを発見した日。
カ-クは主だった者を夕食に招いた。
今後の方針を決めるために、皆の意見を聞いておこうと
思ったからだった。
今までであれば、解放軍と戦闘することなく
穀物などの供給を交渉の材料として
上手く共存していくことも出来たかもしれない。
しかし、魔獣と言う思いもよらない力を手に入れてしまった為に
解放軍も脅威となる者を容認はしないだろう。
カ-クは魔獣の力を手に入れた。
この事実を消し去ることは出来ず
その情報が既にターヅやベルクの耳に入るのも、防ぐことが出来ない。
このまま、せっかく築いたこの土地が戦場になってしまう。
その日、カ-クは自分が不幸の星の元に生まれた事を確信した。
かつてナザ-ド大陸で領主をしていた頃は、国王の命により
他国訪問し、外交を行い。
領主同士の派閥争いに巻き込まれ。
領地の民の要望にも応える多忙な生活だった。
いつ終わるとも知れない窮屈な日々
そこに、魔王にの侵攻を告げられた時
彼は、これこそ神の啓示だと思った。
この機会に、すべてを捨ててクロツ大陸に移り住み、気の合う者達と大陸を南下する。
苦労は多かったが、余計な束縛もなく、自由を感じていた。
その上、先住民族とも友好的な関係を築き上げ
皆で穀物を育て、豊かに暮らしていた。
しかし神が彼に微笑んでいたのは、ほんの数年だった。
先住民と解放者の争いから逃れる人々が
大陸を南下して助けを求めてきたのだ。
初めは穀物の収穫に余裕があり、問題が無かったが
増え続ける難民の居場所を確保する為に、カ-クは更なる土地の開拓を行った。
そこで魔獣を封印したクリスタルを発見してしまう。
「無かったことには出来ないか?」
カ-クの問いかけに皆、無言で首を振る。
「じゃ、どうしようか?」
再び問う彼に視線の先に、老人がいた。
「ここはやはり、封印を開放して、この大陸を手に入れる。
それが良いでしょう」
重々しく、一言、一言に力を込めて答える。
「却下」
即答すると、答えを聞く相手を間違えた、と視線を他へと泳がせる。
そして新たに目に留まったのは最上級の味方。
妻であるミディアだ。
仕切り直し、と言わんばかりにわざとらしく咳払いをして
改めてミディアに問う。
「さて、どうしようか?」
「私も、ジェラ-ド翁に賛成ですよ。
クロツ大陸の覇者、カ-ク王。
そして妻ミディア、とっても魅力的ですね」
冗談とも、本気とも取れる表情で笑う。
そこそこ危険を感じたカ-クは、あわてて
「でも、あれだよ、魔獣との契約って
卵からかえった雛が最初に見た物を親だと思うのと同じで
ずっとついて回るんだよ?」
バナヤ-ハットの魔獣の容姿を噂で聞いている彼が尻込みをする。
すると、四歳になったばかりの娘が
「ぱぱかっこいい」
と目を輝かせてカ-クを見上げる。
そんな娘の無邪気な笑顔に
「もう夜も更けた、子供は寝る時間だよ」
娘を抱き上げてミディアに渡すと、おやすみ。
と言って、二人を部屋から追い出した。
「すまなかった、少し冗談が過ぎたようだ」
あくまでも今までの会話が無かったように
彼は今一度、問いかける。
「で、どうしようか?」




