伝説 2
魔王軍は、大陸を時計回りに侵略し
最後にカルウ王国に攻め入ろうとしていた。
この時点で王国には残存兵力が2千しかおらず
攻め込まれていれば、おそらく陥落していただろう。
だが、王国にはまだ運が残っていようだ。
それは魔王軍に対する緊急の報。
勇者が魔王城に迫っている、との知らせだった。
勇者の戦力は、未だ不明。
この状況で魔王軍司令は、躊躇なく全軍を魔王城に向かわせる。
王国から魔王城までは、彼らの速度を持ってしても約五日。
最短距離を進む魔王軍が、三日目に敵の軍勢を確認する。
二人の勇者と王国の兵達が、魔王城にほど近いカルアナ平原で陣を張っていたのだ。
この時、王国軍の兵力が4千に対し、魔王軍は約1万2千。
王国軍の将軍が少数で平地、という不利な戦場をあえて選んだのは
命を捨てて戦いに挑むという意思表示と思われた。
これを見た魔王軍のゲル将軍は、軍の両翼・上空にを進軍させる。
その数中央3千、両翼に各4千、さらに上空から1千と王国軍を
殲滅しようとしているように見える。
王国軍は4方向から攻められ、完全に包囲されるのも時間の問題
と思われていた。
ここで王国将軍リベッツは、正面の2千に対して中央突破を図る
包囲網が完成してしまえば全滅は免れない。
敵将を討って混乱を招き、少しでも時間を稼がなくてはならない。
魔王討伐隊を信じ、自らを犠牲にする采配だ。
ところが、予想に反して魔王軍からの攻撃が少ない。
上空からの攻撃も防御魔法で耐えしのげる程度だった。
違和感を感じたリベッツは状況を把握すべく、偵察を送る
すると、両翼各3千の兵と上空にあった1千ほどの兵力が留まらず
魔王城への援軍として向かっている。
というのである。
魔王軍の狙いは殲滅ではなく、魔王城への救援にあった。
このままでは、魔王城攻略の王国軍8千の背後から魔王軍7千の
攻撃を受けることになる。
決断は早かった。
現存戦力から1千、魔王城に向かわせる。
しかし、実行に移せるかというとこれが簡単ではない。
正面に2千、左右に各1千の敵兵力があり
完全包囲とまではいかないものの、味方の兵と同数の為
ここで兵力を割けば総崩れとなり、全滅も免れない状況だ。
リベッツが二人の勇者を呼んだ。
「クラウス殿、千の兵を率いて魔王城に向かってい頂きたい」
リベッツとクラウスが共に戦うようになって7年。
強い信頼で結ばれた二人だからこそ、この窮地を任せられる
というリベッツの気持ちが表れていた。
「では、兵士が離脱できるように私も何とかしてみます。」
この戦いで13人目の勇者として2か月前から編入された
最後の勇者がそう言ったあと、呪文を唱え始める。
それを聞いたクラウスは兵をまとめ、魔王城へと向かって進み始めた。