クロツ大陸 11
二か月後、ドステン平原の北にあるクラ-ジュの森に
ワイフ、ダロアと老婆と一緒にいた娘セリアが供も連れず集まっていた。
「私の方は、準備が出来でいるんですが
ダロアさん達の方はいかがですか?」
ワイフの問いかけにセリアが
「兵士たちにかけている魔法の呪文が記されています」
そう言ってメモを差し出す。
「ただ、魔法の大系が違うようなので、唱えたからと言って
効果が現れるとは限らないようですよ」
と、ダロアが捕捉を入れる。
「ありがとう、あちらには勇者コムもいる事だし
何とかなるでしょう」
メモを受け取った後
「では、私は近日中に主だった首領と共に投降します。
このメモもありますし、優遇はしてもらえると思うのですが・・・」
そんなワイフを横目にダロアが
「我々の準備にはもうしばらくかかりそうですね
しかし、準備が出来次第、皆を連れて北の地へ向かいます」
そう言いながらセリアを見た。
彼女も静かに頷く。
祖母と別の道を行く決心をしたようだった。
そうして彼らが平原の陣に戻ろうとしていた時
「いや-、不用心だなあ」
三人の前にペンが現れた。
セリアが腰の剣に手をかける。
それを制止しつつワイフが
「我々三人がかりでも、勝てませんよ」
この状況を見て
「諦めが良いんだな、でも、これじゃ
ちっとも頼りにならないじゃないか」
ペンがかたを竦めながらボヤく。
ため息をつきながら
「ベルクの指示ですか?」
とワイフが問う。
「警護も連れずにこんな所にいる君たちを思っての親心だよ」
「丁度よかった、今から本陣に戻ろうと思っていた所です
警護をお願いできますか?」
悪びれる風もなく言うワイフに対してペンも
当然のように答える。
「もちろん、その為に来たんだから」
こうして四人は無事、本陣へと戻ったのだった。
そして数日後
ワイフが数名の首領とその家族を連れて
ババロの元を訪れていた。
ババロは各首領とワイフに対して好待遇で迎え
戦いに勝利した暁には、自分の領土を持つ事さえ約束していた
これもすべて、セリアが渡した呪文にあったのは間違い無い。
こうしてバナヤ-ハットの約一割に当たる人数が
解放軍へと寝返った事になる。
主だった投降者は日頃からベルクに対する不満を陰で言っていた者たちだったが
ワイフ他数名のベルクに近しい側近がいた事がバナヤ-ハット軍の
動揺を大きくしていた。
そうした不安が消え去る前に、新たな問題が起こった。
ダロアとセリアが動揺した兵士達とその家族を連れて
離反したのだ。
彼らは全体の三割ほどのを連れてその地を離れた。
多くは女、子供であったが、この時にも戦力の中二番目に力のある部族が
共に離れた為、戦力としての低下は否めなかった。
後に残された陣ではベルク、老婆、ペンの三人が
今後の計画について話し合っていた。
「残念だけど、魔法は完成しそうにないよ。
今の私には無から魔獣を召喚するのは不可能だね」
老婆の言葉に続いてペンも
「こちらの魔法を研究してみたけど、私の魔法に組み込んでも
召喚は無理だった。
ただ、攻撃力や防御力を上げることは出来そうだけど
もう少し、時間が必要だね」
「決戦の日は近い、すまないが
それまでできる限りのことを頼む」
ベルクは、決戦までに新たな魔法で魔獣を召喚し
自軍の被害の被害なく敵を攻撃できれば
と思っていたのだが、未だに良い結果は得られずにいた
かといって、決戦の日をずらせば、敵に渡った呪文によって
新たな力を得るかもしれない、という解放軍の脅威があった。
こうして、ベルクの思う決戦の日まで、あと二か月程になっていた。




