都合の良い話
ジェラスが勇者商会の当主チャーバンの実姉ソミンの
夫と娘を殺害したことは、アブソルートとシーミングの
二人だけが知っていた。
しかし、いずれはみんなの知る所となるだろう。
そう思ったアブソルートは、主だったものを集めた。
集まった者の中には、インシディの姿があった。
彼は、集まった者の中にジェラスの姿が無いことに
不満を感じていた。
真正勇者協会の当主がこの場にいないまま話が進むようなら
各国に進言し、この場の者たちに後悔させなければならない。
そう思っていた。
結局、集まったのは
インシディ、アブソルート、シーミング、ベーゲル、リンナー、カフェイロ
ハミット、ムントエ、リッジ、ミグリス、エンビー、ボーンリス。
フィリンとゼンは魔王城でサイデンと膠着状態に陥っているが
ここにいる者たちは知ることはできなかった。
「この場に現れない他の者には、改めて時間を作ろうと思う」
そういったのはシーミングだ。
そして彼は、その場の誰もが驚愕する真実を告げる。
ジェラスの裏切りと、バニッティ、シダイズ親子の死だ。
その事実にその場にいた者たちは衝撃を受けるようだった。
ところが、インシディが突然立ち上がり
「おかしな事を言ってもらっては困る」
と、シーミングを非難する。
そして、そのまま彼の自己中心的発言が続いた。
「君は今、我が協会の当主、ジェラスが裏切った。
そう言ったが、当主は今、この場で我々と共にある」
言いながら、ボーンリスを指さした。
さらに続けて
「確かに彼は協会の者だった。
しかし彼は元々、勇者としての力が弱く、心も弱かった
恐らく、それで魔王に操られてしまったのだろう。
人の心の弱さに入り込み、操るという卑劣な魔王を
許してはならない。
長い年月に及ぶジェラス家とエンビー家のわだかまりを解くために
ジェラスをエンビーに預け、二つに分かれた紋章の力を
一つにしようとした私の計画が、仇となってしまった。
だが、その犠牲を糧にして、我々は魔王に立ち向かわなければならない!」
こぶしを握り締め、力説する。
この話に、誰一人納得する者はいなかったが
事実を公表しても何も良いことはない、と言う事も理解していた。
結局、ジェラスの護衛として彼の留守を守っていた男が
魔王の力によって操られ、事件を起こした。
しかし、調べを進めるうちに、男が名乗っていた名前は偽名
だったことが判明し、協会関係者ではなく
魔王が送り込んできた刺客だった事が、後に判明する。
こうしてボーンリスは、再びジェラスとして
協会に戻ることになった。




