伝説
森の奥深く、その城はあった。
周囲には魔獣や猛獣が生息し、人を寄せ付けないよう
数々の罠が張り巡らされている。
しかし、それらを乗り越えて、ついに勇者達は魔王の城に
到達した。
翌日にはカルウ王国の精鋭8千の兵士たちも到着することになっている。
決戦に備え、野営の陣の中で勇者達のミーティングが行われていた。
「いよいよ、明日」
カルウ王国の貴族でもある勇者ディアスが口を開くと
女勇者カスミが続けて
「5年、長かったわね」
言いながら、二人の勇者を見て微笑んだ。
「ここに来れなかったみんなの無念をはらしましょう。
クラウスさん達も来れたらよかったんですけど」
最年少勇者コムの言葉にディアスの表情が曇る。
「あいつらには、あいつらの役割がある。
魔王軍本隊を足止めしなければ俺たちがここに来るために
大きな被害が出ていただろう。
奴らの死を無駄にしない為にも、俺たちが必ず
魔王を仕留めなければならない」
強い口調でコムに言うと陣を出て行ってしまう。
「僕はただ・・・」
「わかっているわ、でもディアスはみんなに対する責任を感じているの。
誰かがやらなければ、世界は混沌に包まれてしまう。
クラウス達もそれが分かっていたから、引き受けてくれたのでしょう」
コムを引き寄せ、頭を優しくなでながら
「もう、休みましょう」
と言い、自分のテントに戻っていった。
一人残されたコムは陣の明かりを消して
静かに自分のテントへと戻っていった。