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君の父親に出会った
「えっと……」
僕が困っていると彼が手を差し出す。
「初めまして。千草真美の父親です」
「あっ、初めまして」
僕も手を出し握手を交わす。
彼は、スーツを着ていた。
どうやら仕事中に飛び出してきたといったところだろう。
「娘がよく言っていたのですよ。治療に付き合ってくれる、同級生がいるって」
「はぁ……」
あまり彼女とは家族との話をしていない。
だから、そんな家族構成なのかを知らない。
「これからも、よろしく頼みます」
「いえ、こちらもどうか宜しくお願いします」
お辞儀をし合いながらも、まるで彼氏のような感じを受ける。
「千草さん、ですよね」
看護師が彼を呼びにきたようだ。
「はい、私ですが」
「こちらへ来ていただけますか」
奥にある個室のようなところに、彼を案内したいようだ。
「それではまた後で」
「はい、後でまたお会いしましょう」
彼にそう言って、僕はまた一人になった。