こうして出会った
その日は、朝から澄み渡った青空だった。
久しぶりに外に出た気がする。
それは、僕が病院で入院していたためだ。
ずっとずっと、長い間、病室の景色が全てだった。
検査で病室から外に出ることがあっても、建物の外へ出ることがなかったからだ。
だから、こうして中庭まで出てこれたこと自体が、僕にとっては奇跡にも等しい。
厚生労働省の難病指定を受けている病気の一つである「先天性魔術粒子貯留症」というのに、僕は罹患している。
簡単に言うと、魔術を使えず、どんどんと魔術粒子が体内に溜まり続け、最終的には体内から破裂するという病気だ。
魔術粒子自身は、世界のどこにでもあるため、僕は隔離された、魔術粒子が無い空間でないと、あっという間に破裂する。
その治療のために、ずっと入院していたのだ。
今日外に出れたのは、手野気象会社が魔術粒子が一番薄いと言っていたからだ。
医者からも許可をもらって、中庭にいる。
すると、点滴をしながら本を片手で読んでいる少女が、先客で座っていた。
周りには誰もいない。
カタカナのロの形をした病棟のちょうど真ん中には、大きな噴水があり、それを取り囲むようにして、ベンチが置かれている。
往々にして誰かいるものとばかり思っていたから、意外と誰もいなくて驚いている。
「あの……」
いつの間にか少女は僕へと話しかけていた。
「あ、こんにちは」
「こんにちは」
僕らは互いに挨拶を交わした。
それが、これからの人生を左右するような、壮大な出会いだとは、この時、二人とも気付かなかった。