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07話「メサリア先生」

 ノルトバルが目覚める前にメサリアが淹れたお茶を飲みながら、まばらに低木が生えている程度の乾いたアファーズ山脈を見渡す。マリエン川の支流の気配すらしない所まできた。

 今は安値で仕入れ、違う場所で高値で売りさばくということを繰り返しながら転々とアファーズの山道を通って行商をしている。関税があるので入らなかったが、クロキエ王国東部の国境まで行った。あそこまで行くと人の顔が全然違ってくる。高地の薄い空気には若干慣れてはきたし、飯は毎食出るし変な物を食うこともない。隊商のみんなは親切だし、何よりメサリアが優しくて甲斐甲斐しく面倒を見てくれる。こんな人間いていいのかと思うぐらい。

 メサリアの教育のおかげで、難しい話じゃなかったらシェテル語だけで会話が出来るようになった。シェテル語はこの辺一体の共通語で、世界の共通語とも認識されているほど重要で、習得しやすいように今も改良され続けている貴重な言語らしい。

 メサリアは値の張る本を、その内容について講釈して知識人に売り込む仕事をしているぐらいなので教えるのが上手だ。最初の内は知ってると便利だとか、暇つぶしにとか、そんな感じで何気なく勉強が始まったが、段々と彼女の本性が表れてきた……勉強になるとメチャクチャ怖い。昔は貴族や富裕層向けに家庭教師をやっていたが、教え子達は直ぐに音を上げるので続かなかったと隊商の人が教えてくれた。例を挙げる。発音がおかしいと「舌はこう曲げる」と口に指突っ込んできて舌引っ張られる。昨日教えたことを覚えていないとぶった叩かれる。道具の扱いが荒いと蹴られる。ちょっと得意になると出来て当たり前だと殴られる。

 まだ布で顔を隠してないメサリアが研ぎ終わった剃刀を持ってくる。毎朝見るたびにこんな美人いるのかと感心してしまう。

「剃るから動かないで」

「うん」

 顔に剃刀が当てる。ザルハルからこっちにくるまでの間に髭が生えていたらしく、今ではメサリアが定期的に剃ってくれている。全部ではなく、綺麗に長さと形を整えてくれる。顔に触れる指が心地よくて、真剣に顔を見る青い目の瞳孔に模様が見飽きなくて、このままずっと何かしててくれないかという気になってくる。

「なあ、次に頭も剃ってくれねぇか? 俺、前は頭ツルテンにしてたんだよ」

「ザフカークみたいに? こっちの方がいい男よ」

 そう言われると何も言えなくなる。寄ってきた山羊の頭を足で挟む、少し間をおいて嫌がって頭を振り、逃げる。

 剃り終わり、頭に黒い布を巻く。皺なく頭を隙間なく覆った上に、余った端が背筋に沿って垂れるよう、綺麗に巻けるぐらいになった。メサリアはタハル王国の中でも少数民族のブリバク人だそうで、そのブリバク人の男はこういう風に頭に布を巻く。タハル人の丸帽子どっちがいいかと聞かれた時に選んだ。好みでどっちも付ける人がいるらしい。服は彼等の民族衣装ではなく、マリエン軍の外套に近い物を貰った。

 食事が始まるまで恒例のシェテル語の勉強が始まる。シェテル語で有名なお話を聞かされ、一区切りごとに同じ言葉を繰り返し、同時に地面にも書く。

「黙らない、どもらない、抑揚を消さない」「あーとかうーとかえーとか言わない」「発音違うそこ喉絞って舌先下の前歯に付ける」「三番目の字書き順違う」「文違う別の国の言葉になってる」「そこの発音指示記号は上げる方」

 五発目の拳骨を食らったあたりで今日の朝食当番が呼びにくる。メサリアが布で顔を隠すの待ってから向かう。

 今日は水と小麦粉だけで作ったパン、この前歳で動けなくなって潰した馬の焼肉、つれて歩いてる山羊の発酵乳、ぶどう酒、塩の欠片。地面に人数分が円座を組めるように置かれている。メサリアの隣に座る。

 彼らタハル人、そしてブリバク人は正神教テムル派を信仰している。食前にはテムル派式のお祈りがあるので、隊長が音頭を取ってそれが始まる。前から疑問に思っていたことをついつい口に出す。

「前から思ってたけどよ、何で食う前にお祈りすんだ?」

「しっ、静かに」

 静かにしていると、いつもおかしいと思っていた文言がくる。「神が与えたもうた恵みに感謝します」と。

「自分達でとったのにか?」

 メサリアにスパンッと頭を叩かれる。お祈りが終わると、我慢してたように隊商の皆が吹き出す。

「ノルトバル、あんた……」

 メサリアは言葉を溜め込む。

「馬鹿ッもう。分からないんだったら口挟まない」

「だってよ、食う前に神さまなんちゃらってわけわかんねぇよ」

「大抵の地域じゃ食べる前にお祈りするものよ」

「生き物捌く時とか、畑で収穫する時にするもんだと思うけどなぁ。料理した人にお礼言うってんなら分かるけどよ」

 裏拳で小突かれる。

「いいから食べなさい」

「うん」

 また皆に笑われる。

 食事が終わったあとは仕事。メサリアと一緒に隊商より先に目的地に向かい、道中に異常はないか確かめるのだ。

 メサリアに馬に乗る姿勢を指導されながら谷底を進み、見晴らしのいい道に出る。禿山には挟まれた渓谷を流れる川には緑があふれてる。最近は乾いた色の景色ばかりだったが、こういう風景には安心する

 緑が多く、当然生き物がいる。道の下の草むらに鹿の群れがいる。馬を止め、無言で指差す。メサリアも何も言わないで馬を止める。了解と受け取ってノルトバルは火縄銃を手に取る。

 タハルの火縄銃は銃身が長く、湾曲した銃床が特徴的。また銃身内に施条が切ってあり射程も長くて命中率も高く、瞬発式なので射撃時の震えが最小限に抑えられて更に命中率が高い。反面、弾を込めるのに普通の小銃より力が必要なので連射が難しく、中にゴミが溜まりやすいので掃除は小まめにしないといけない。そして火縄の用意が多少面倒。

 火縄を用意して、火打石と車輪状の当たり金を組み合わせた着火装置を使って火を点ける。火の点いた火縄に息を吹き掛けて火種を確かにして火縄銃に付ける。そして弾薬を装填してから構え、今までメサリアに教わった通りにする。草木が風に揺れるほう方角をみて風向風速を確かめる。今回は無視していい程度の風で、獲物との距離を頭に入れる。息を止めるか止めないかぐらいにゆっくり吐きながら鹿の胸に照準を合わせ、丁度いいところで息を止め、火縄銃を揺らさないようにゆっくりゆっくり引き金を絞り、気付いたら銃声が鳴ったぐらいで引くと狙った鹿が倒れ、他の鹿は一目散に逃げ去る。

 道の下に馬を進め、仕留めた鹿を見る。脇腹に当たって血が脈に合わせて溢れ出ている。

 短剣を抜いて鹿の解体を始める。メサリアは道の方で周囲を警戒している。ここ最近は敵を見ていないが、時々山賊がいるらしいので気は抜けない。金槌で頭をカチ割り、脳みそと内臓を埋めて”獣の母”に祈る。食前の祈りはともかく、”獣の母”に祈ってない肉を食べてきたせいか、バチが当たりそうな気がしてくる。これで帳消しにしたい。

 鹿肉を馬に積んで道を再び進む。どんどん緑が深くなってくる。そして緑の獣道に分かれる所でメサリアが止る。

「ここで到着を待つ。休憩よ」

 馬から降りて、体を折り曲げ股を広げたりして強張った所を伸ばす。メサリアも馬から降りて、スラっと音を立てて刀を抜く。刃先をこっちに向けてクイクイ動かし、掛かってこい、と。

 少しでも時間が出来れば訓練に勉強。怖いからサボる気にもなれず、分かりやすくて面白いというのもあり、そして将来役に立つとくれば反抗する気にもならない。

 こちらも刀を抜いて掛かっていくが、

「あれこれ考えないで動く! 力みすぎ、動きが丸見え」

 指導通りに殺す気で掛かっているが刃が立たない。刀だけでは駄目だから足に拳も混ぜるが、

「殴るのも蹴るのも動きは最小限、軸をぶらさない」

 と足を刈られて転んだと思ったら腕を掴まれ、肘を極められ動きが取れず、首筋に刃先が当たってる。

「すばやさが重要。関節技は何をしているか悟られる前に慈悲なく一気にへし折れ」

 二回戦目。メサリアの出方を伺おうと構えていたら、土で目潰しをされて隙を作ってしまい、頭を刀の峰で殴られる。

「攻撃のための攻撃、攻撃のための防御に回避はしていいが、防御のための行動はするな。それくらいだったら戦闘を止めて逃げろ」

 目から土を払っていると腹を蹴っ飛ばされてから腰も蹴られて地面に転がる。

「油断しない。何もしていない敵は堅い。何かをしている敵はもろい」

 三回戦目。刀を振り下ろすと見せて顔目掛けて突きを放つと、刀身をメサリアが素手で掴んで引っ張り、突きの勢いも相まって刀を取られて頭を刀を掴んだ拳で殴られる。

「変な小細工覚える前に真っ直ぐ振りなさい。あと」

 今ので手のひらに出来た、血が滲んだ傷を見せてくる。

「死ぬくらいなら手傷を負うこと。刺される、斬られるぐらいだったら手で掴め」

 四回戦目。力でなら押し切れるかもしれないと、体当たりするように斬りかかる。メサリアは刀で受け止め、押せばいけるかと思ったら指が捻じ曲げられて動けなくなる。

「最初はよくてもあとが遅い、対応する暇を与えてる」

 そして足を刈られてすっ転ぶ。

「重心を崩さない。転んだらあとは殺して下さいって言うのと同じ」

 その後も何回もぶっ叩かれて転ばされる。

「これでお終い」

 と言って背中を向けたメサリアに掛かっていっても簡単に倒された。地面に寝転がり、息が整うまで待つ。そうしてからメサリアの袖引っ張る。

「なあ、腹減った」

 メサリアはチラっと横目で見て、軽く笑う。

「はいはい」

 メサリアが手早く手に止血の軟膏塗って包帯を巻いてから、服に付いた草と土を払い、朝に作った飯の残りに鹿の生肉を混ぜて二人で食べる。

「手ぇ、大丈夫か?」

 無言で頭を撫でられる。心配ないらしい。

 食事を終え、シェテル語で書かれたそこそこ有名な散文集を、単語や文が理解不能なところをメサリアに教えてもらいながら読んで隊商を待つ。そして合流してから道を下り、隠してあった船を引っ張り出し、荷物や馬に馬車を載せ、半分に切った丸太で道を作って川までその上を滑らせる。それから丸太を隠して岸に半分乗ってる船を押し出したノルトバルと男達はズボンを川の水で濡らして船に上がる。

 赤地に二列黒柱で中央に聖メサリアが描かれたタハル王国の旗を掲げ、帆を広げた船は下流へ帆走する。聖メサリアというのは生きながら列聖した人物でまだ存命中らしい。その聖人様にあやかって同じ名前を持つ人はいくらでもいるそうだ。我等がメサリアもその一人。

 船が風と川に追われると、時折水しぶきが甲板に上がるくらい速い。船尾で立小便すれば相当後ろにまで流れて見えるほど速い。隣に隊長が立ち、一緒に小便することになり、小便をぶつけ合う。

「ガキの癖にデケぇもんぶら下げてるじゃねぇか」

「舐めっていいですよ」

 隊長は含み笑い。そして真面目な顔になる。

「メサリア。お前はもう聞いてるかもしれないが……一四で結婚。産んだのは男が三人、女が四人。旦那は戦争で死んだ。娘三人は嫁に行って、戦争で行方不明になったのが一人、子供産む時に死んだのが一人、病気で死んだのが一人。嫁に行ってないのは親戚の子なしのとこに養子だ。男の方は小さい時に一人が病気で死んで、もう一人は商船に乗ってて行方不明。最後の一人はこの前、お前さんに会う五日前だ。仲間逃がそうって殿引き受けやがった、ガキのくせに。三一の年増だがまだまだ別嬪だしな、子供産めるのは証明済みだ。互いにいいと思ってるんだろう? 結婚しないか。分からないことがあったら教えてやるよ。ま、メサリアに任せとけば全部大丈夫なんだがな。頭もいいし物も知ってる。やれないことはないんじゃないかってくらい器用だしな。俺のとこは嫁さんがいまだにピンシャンしやがってるせいでそうもいかない。考えてみてくれ」

 そして小便が出る所をブルンブルンと振るった手でノルトバルの肩を叩いて隊長は船尾から降りる。

 その場に座り、航跡を眺める。

 川沿いの港町が見えてくる。タハル王国の旗ももちろん立っている。隊商の一人が手旗を振って港町の管理役人とやり取り。

「入港許可出ました」

「よし、やっと家に帰れるぞ」

 隊長がデカい声を出す。隊商の皆の表情も明るくなる。

 役人の誘導に従って桟橋に船を係留させ、馬車を乗せても大丈夫な板が渡されて隊商は下船する。隊長が役人が持ってきた書類に署名をしてから港町に入る。

 ここはまだその家ではないそうで、道を素通り。家があるのは向こう側、丘の上に霞んで見える要塞がある都市だそうだ。そのまま港町を出て、石畳で整備され、丁寧に看板や目的地までの距離も書かれた看板が立っている街道に出る。途中途中に井戸が用意され、共用の水桶が置かれている。駅があって馬の貸し出しも行われ、専用の役人までいるんだから信じられない。蹄鉄の整備までやるらしい。ザルハルで街道といえば雑草に挟まれたデコボコの泥溜まりで、獣道に毛が生えた程度なのに。

 道がいいおかげで夕暮れ時には都市に到着する。名前をパルドノヴォというらしい。

 都市側が隊商を扶養、便宜を図る代わりに、普段は交易に従事して経済を回し、有事には武器を取ってともに戦うという契約関係にあるそうだ。それがあるから隊長が太守に到着の挨拶しに行くので市内に入って直ぐに別れる。

 家に向かって市内を進む。人や馬に駱駝に馬車がごった返して進むのに苦労する。道の脇には店や露天がずらりと並ぶ。建物は全て白い石造り、地面も一部は土だがあとはほとんど石畳だ。ほとんどがタハル人でブリバク人が混じっている。そしてシェテル人みたいな三角耳もいる。肌の色が色々だから人種が別かもしれないが。

 城壁を背に人が磔にされ、投石されているところに差し掛かる。血まみれで皮も肉も剥げていてもう死んでいるのに投石が続く。拷問してから処刑するような刑罰にしたって随分妙だと思いながら見ているとメサリアに肩を小突かれる。

「同情したらとばっちりがくるわ。嫌なら見ない聞かない考えない」

「んあ? どういうこったよ」

 メサリアを一回首を捻る。どうやら考えていたことがかみ合ってないらしい。

「あれは悪魔……魔法使いかその容疑がかかった奴。化物は殺したぐらいじゃ死なないかもしれないってあそこまでやってるの。あとでまた火刑にして灰が土に混ぜられてから川に流される」

「俺はジジイどもから魔法使いだろうが一発ぶち込めばくたばるって教えてもらったけどな」

「簡単に考えることが出来る人って案外少ないのよ」

「宗教絡みだからか?」

「そう」

「俺の近所に……」

 と言い掛けてメサリアに口を手で塞がれる。

「話はお終い」

 魔法使いの知り合いがいるなんて言うなということか。

 家に到着すると番犬が何頭も吠えて迎えてくれる。普段は隊商の皆が寝泊りする所で、留守中は人を泊める宿になるそうだ。荷物を倉庫に運ぶ。市場で売りさばくのは明日以降になる。

 厩舎に馬を入れる。背中を向けると鼻息がブルブル聞こえたので、馬の額に額をゴリゴリこすり付けてから家に入る。常駐している、もう旅にはついていかない年寄りや若すぎる子供が夕食を用意していた。

 隊長の奥さんが音頭を取り、家に帰ってこられなかった人達への追悼、そしてテムル派式のお祈りが終わって食べ始める。いつも通りなら、隊長が宮殿から帰るのは早くても明日の昼になるらしい。

 食事は牛に駱駝に羊に山羊と肉は一揃い出て、焼き飯、パン、麺、汁物も合わせて十種類を超えて、野菜に果物に酒は数え切れない。調味料も塩に魚醤に香辛料がたくさん。

 隊商の皆の家族が集まり、再会を喜び合っている。新入りだとノルトバルが紹介され、自己紹介が上手く出来ずに笑われる。見たことがない人、ノルトバルにはなかなか子供が近づかない。隊商の一人は、俺の息子だと膝に乗せてくれたが直ぐに泣き出した。常夏の南国にいるという極彩色の鳥を腕に掴まらせた一人が鳥に言葉を喋らせる手品を披露し、手品じゃなくて本当に喋ってる気が付いてむせて、食ってた飯が口から鼻に入って鼻水と一緒に出てきた。

 食事中に、マンゼア軍がザルハルの占領を完了するまで危険だからと、南のウィーバル方面軍へ商売しに行くことになると話が出てくる。逃げたとはいえ、故郷が遠くなっていくのは寂しくなる。

 食事が終わり、眠い者は早くに床に付き、そうではない者は市内方々へ散り、また家の中で食後のお茶を楽しむ。そしてノルトバルはお勉強。しかも今日は随分難敵だ。時間と年月日では日に月に年をまたいで、用途別の長さに重さに距離面積体積の単位を使い、通貨に貴金属の交換比率を考慮した金勘定。そうしてそれらを組み合わせた計算だ。

 隊商の金勘定の仕事をやってる奴でも「おいおい俺も頭痛くなってきたぞ」と横から言ってくる。

「難しすぎるぞ」

「だからそれが出来ると仕事になるの」

「おう、そうか」

「おう、そうなのか?」

 隊商の勘定をやってる奴が口を挟む。

「外野は口出さない」

「はい先生」

 皆が爆笑。何とか指折りながら考えていると、

「計算で指使わない見っともない」

 また爆笑。真剣な面なのはノルトバルとメサリアだけだ。

「じゃ紙と筆ねぇか?」

「こんな小さい桁でいちいち使わない」

 今日はそのぐらいで勘弁してやれよというような声にメサリアは頑として首を動かさない。夜になって眠たくなってきた子供を膝に乗せられても同様。疲れてノルトバルが眠くなってきたあたりでようやく勘弁してくれる。

 もうその場で寝てしまおうかと思っていると家の屋上に連れて行かれる。長椅子があって、二人で腰掛ける。そこから星の話が始まる。

「北を示す一年中微動だにしない星”天の目”が全ての基準になる。それから他の星座に星を使って年月日、方角、緯度に経度が算出出来る。星座はそれぞれ世界の支配者達の名であり、星はその子や配下の者、妻だったり友人の名前が与えられている。天文学については一部の過激派を除けば、テムル派でも彼等の名前を使う……」

 色々と面白い話をしていると思うが、眠くて全然頭に入らない。寝ぼけたノルトバルの顔を見たメサリアが溜息を吐き、そして肩に頭を寄せてくる。

 勉強は終わりなのか、実は始めてもいなかったか。ノルトバルはメサリアの頭に頭を寄せる。

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