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君の事を本当に天使だと思った。
僕はやっと許されるときがやってきたのだと
そう、思ったんだ。
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暗闇の中で目がさめた。しかしそれは間違いのようだ。
すごく深い場所に意識がもぐりこんでいて
浮き上がってくるのに時間がかかっているみたいだった。
私はその暗闇の中に漂っていたけれど、少しずつ
体が重みを帯びてきたと同時に、周りの気配が私に
流れ込んでくるようだった。
柔らかなシーツの感触とか、ひんやりとした空気だとか
それから強い花の香り。花、、、薔薇?、、、。
「気がついたようだね?」
頭の上の方から、人の声が聞こえてきた。
低くもなく、高くもなく。とても心地よい声。
声の顔を向けようとする。
けれど何も見えない。目を閉じたままなんだ。
私はそっとまぶたを開く。
ぼんやりとした像が目の前で結ばれる。
「水、のむかい?」
そのぼんやりと見える人影が言う。
私は黙ってうなずくと、体を起こそうとした。
けれどどこにも力が入らなくて、どのように起き上がったらよいかと
戸惑っていると、細い腕が、ゆっくりと私の体を支えてくれた。
「大丈夫?」
と問うその人に私は焦点を合わせる。
目の奥がぐっと突っ張るような感じがする。
やがて私を覗き込む、柔らかな緑の瞳を確認する。
その瞳を見つめながら、渡された水を口に含んだ。
からからに乾いた口を潤すその水に、喉の動きを思い出した。
「、、、ここ、は?」
私、こんな声だったろうか?
「無理に、しゃべろうとしなくていいから。」
自分の声に驚き、喉を押さえた私を見て、緑の瞳が心配そうに、窺う。
「もう少し、休むといい。心配は要らないから。」
そういうと、立ち上がり、私のそばを離れた。
その人の一連の動作を私は追う事ができずに、また眠りが私を誘い込む。