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断罪されて追放された悪役令嬢、頭を打って前世JKに戻ったら 、RPGチートが覚醒して逆ハーレム作る旅が始まりました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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8/14

最初の村

 土の道を抜けると、あるタイミングで再び石畳の道になっていた。

 低い柵、畑、煙突から細く上がる煙。

 木と土で作られた家々が、寄り添うように並んでいた。


「……着いたわね」


「長かったですね」


 思っていたより、小さな村だった。

 王都の喧騒とは比べ物にならない。

 でもーー人の気配が、確かにある。


 カン、カン、と金属音。

 水桶を運ぶ音。

 子供の笑い声。


(……生きてる場所だ)


 その感覚に、胸が少しだけ緩む。

 村の入口を一歩、踏み出した瞬間ーー

 空気が変わった。


「……あれ?」


 フローレが、わずかに歩みを遅らせる。

 視線。

 最初は気のせいかと思った。

 でも、違う。

 畑仕事をしていた男が、こちらを見る。

 水を汲んでいた女が、手を止める。

 遊んでいた子供が、母親の背に隠れる。

 ひそひそと、声が走る。


「……あの服」


「貴族かな?」


「いや、でもあんな格好で?」


 こっちを見ている。

 私は無意識に、自分の姿を意識した。

 裂けたドレス。

 泥に濡れた裾。

 雨と森で乱れた髪。

 王都では、断罪され、追放された姿。

 ここではーーただの異物。


(そっか……私はもう”お嬢様”じゃない)


 私がそう理解した瞬間、胸の奥がきゅっと縮んだ。

 ほんのちょっとだけ、目が潤んできたような感じがする。

 そのとき。

 フローレが半歩前に出た。


「……失礼いたします」


 少しだけ緊張した声。

 でも、はっきりと。

 朝方に倒れていた姿とは違っていた。


「あたし達は旅の者です。森を抜けてきて、休める場所を探しています」


 村人達の視線が、今度はフローレに向いた。

 質素な服。

 でも、所作は丁寧で声に品がある。


(……あ。私を”守る側”に回ったのね、この子)


「泊まれる宿は、ありますか?」


 一瞬の沈黙。

 それを破ったのは、年配の女性だった。


「宿は一件だけだよ」


 しわだらけの顔で、私を見る。


「でもあんた、大丈夫かい?」


 その言葉に私は一瞬、言葉を失った。


(大丈夫……?)


 昨日の王都では誰も、私を気遣わなかった。

 罪人を見る目しか、向けられなかった。

 爵位を追放される前は、色々と気遣われて傅かれていたのに。


「……はい」


 少し遅れ、一拍置いて私は答える。


「大丈夫です。たぶん」


 自分でも、曖昧だと思った。

 でも、嘘じゃない。


(この村、私が爵位を追放された札付きの元公爵令嬢っていうのは知られていないのね)


 ここでは、まだ私は”罪人”じゃない。

 それが少しだけ、救いだった。

 女性はふん、と鼻を鳴らして、顎で道の奥を示した。


「宿はあそこさ、食堂も兼ねてる。金は、あるだろうね?」


 私は一瞬、言葉に詰まる。

 だって私の持ち物には、お金の類いは一切無い。

 王都を追放される時にはお金を持たされなかったから。


(運-13……)


 でもその前に。


「はい。多くはありませんが、あります」


 フローレが、きっぱりと言った。

 女性はそれ以上何も言わず、畑へ戻っていった。

 視線が、少しずつ散っていく。

 完全に受け入れられたわけじゃない。

 でもーー追い返されなかった。

 それだけで、十分だった。


「入れたわね」


 小さく呟くと、フローレがこちらを見る。


「はい。グローリア様」


 そして、ほんの少しだけ、声を落として。


「ここから、始められます」


 私は、村の中へ一歩踏み出した。

 追放された悪役令嬢としてではなく。

 まだ何者ではない、”旅人”として。

 ーー最初の村。

 物語は、ここから本当に動き出す。

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