肩を並べて戦う私とフローレ
「とりあえずマップの方向に進んで行きましょう」
「地図、持っているんですか?」
UIとしてのマップだったね。
だから気をつけないと。持っていないものを言ったら、状況がおかしくなるから。
「まあね……」
冷や汗をかきながら、歩いていく。
森の出口を抜けて、土の道を進んでいった。
地平線には、最初の村の屋根が小さく見える。
「もうすぐ、着くわね……」
空腹が私の頭を支配していたが、もうすぐ村に着くと思えばある程度は我慢できた。
「はい……グローリア様」
フローレも多少動けるようになったとはいえ、疲労は溜まっている。
村に着いたら休ませないと。
私のために彼女を壊したくない。
「もう少しだから、ね?」
その時ーー
地面が『ズンッ』と震えた。
「え? 何、この音……?」
茂みを揺らし、黒い影が突進してくる。
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◆魔獣イノシシ
◆敵の行動予測
【次:直線突撃→角突き】
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「えっ、イノシシ!? でかっ!!」
本来のイノシシより倍はある。
テレビで見たくらいだけれども、はっきりとでかかった。
額には黒い文様、目は赤。明らかに魔王軍の影響を受けた魔獣。
「フローレ、下がって!!」
私が前へ出るけれども、イノシシの”突撃スピード”は狼より速い。
(無理! これ避けられない!)
その瞬間ーー
フローレが手を伸ばしていた。
「風よ……敵を退け!」
バシュッ!
目に見えるほど強い風がイノシシの体勢を崩す。
「えっ……フローレ!?」
何なの今の魔法……?
風魔法なのね?
「大丈夫です、まだ……いけます……!」
フローレは疲労があるみたいだけれども、歯を食いしばるような表情をしていた。
イノシシはすぐに立ち上がって、今度はフローレに狙いを定める。
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◆敵の行動予測
【次:小ジャンプ→横薙ぎ突進】
【狙い:後衛】
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「フローレ、危ない!」
反射的に私は彼女を守るために、飛び込む。
私の身体が勝手に動いていた。
悪役令嬢時代には、絶対しなかった行動。
逆に誰かを盾にしていたと思う。
「守る……私が守らなきゃ!」
こんな気持ち……ゲームの中の悪役令嬢だった頃には、一度も覚えたことがない。
私は杖を横に構え、全力で振る。
衝撃で腕がしびれ、足が地面にめり込むほどの力。
「ぐっ……!」
イノシシは怯むが、まだ止まらない。
「グローリア様、下がって……! あたし、できますから!」
フローレが胸に手を当て、小声で祈る。
「光よ……癒やしと守りを……!」
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◆フローレ:光魔術『守りの初灯』
味方の防御力:+20%
痛覚軽減
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(な、何これ……あったかい……!)
強化魔法の光が身体に染みこみ、痛みが少し消える。
「今です、グローリア様!」
イノシシが最後の突撃を仕掛けてくる。
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◆敵の行動予測
【次:最終突進『急所狙い(致命)』】
【狙い:グローリア】
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(ここで倒すしかない!)
「いけぇぇえ!!」
私は杖を両手で持ち、フローレの風魔法が空間に残した流れを、私も掴むようにして……
目の前のイノシシへ叩き込む。
「吹き飛べぇっ!!」
ズドォン!
大きな風と衝撃がぶつかり、イノシシは地面を転がって動かなくなる。
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◆戦闘に勝利
経験値+24
グローリア:Lv2→3
フローレ:Lv1→2
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「ふぅ……倒した……?」
「はい……す、凄いです……!」
二人でへたり込みながら、思わず笑ってしまう。
私達で敵を倒したんだ。
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◆フローレ・ザグレブ
レベル:2
HP:38/38
MP:14/56
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「……あ、MPごっそり減ってる!」
フローレが魔法を使っていたから、かなり少なくなっている。
下手に使い続けたら、すぐに魔力切れになってしまうのかも。
「フローレ、あなた……本当に魔法が使えるのね」
「はい。でも……あたし一人じゃ無理でした。貴女が守ってくれたから……」
フローレはそっと私の手を握る。
温かくて柔らかい感触。
「こちらこそ、あなたがいてくれたから、勝てたの」
私は微笑みながらフローレの手を握り返す。
「ありがとう、グローリア様」
フローレもはにかんで、私の心を満たしていく。
「これからも、一緒に戦わせてください」
「……もちろんよ。だって、あなたはもう仲間なんだから」
こうして、私達は初めて”肩を並べて”戦った。
また道を歩いていく。
村の屋根はすぐそこに見えていた。
「……あたし、頑張ります。グローリア様と一緒にいられるなら」




