表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪されて追放された悪役令嬢、頭を打って前世JKに戻ったら 、RPGチートが覚醒して逆ハーレム作る旅が始まりました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/4

森の奥の少女

 薄暗い森をさらに進んでいく。

 マップの青い線を頼りに。

 太陽はあまり見えず、明るさを感じられない。

 夕方になっても気がつかないかもしれない。

 ここはどれくらい歩けば、抜けられるのだろうか。

 そう思っていた。


「早くどこか村にでも着きたい……」


「それは無理じゃない?」


「えっ……?」


 私の呟きに答えるように、居るはずのない少女の声が聞こえてくる。

 声の方向を見てみると、明らかに私よりも幼いであろう少女が立っていた。

 腰まで伸びた銀色の髪をしているが、肌が白すぎて普通の人間ではありえないような感じだった。

 耳は尖っていて、エルフみたいな感じ。

 目は紫と赤のオッドアイ。


「貴女は誰?」


「名前くらいは教えてあげる、あたしはリリィ・ノックス。魔王軍の一員。よろしくね、グローリア・ルイーザ・ネウムちゃん」


「なっ……なんで私の名前を……!」


 目の前の少女は明らかに敵意を持っていて、私はすぐに警戒する。

 この子が魔王軍の一員なんて。

 短剣を握りしめ、戦いに備える。


「命令されているの。あんたを”殺せ”って」


 ふっと風が吹いた瞬間、リィリエの姿が消えた。

 するとポップアップが表示された。


ーーーーーーーーーー


◆敵の行動予測

【次:背後へ高速移動→爪撃(急所狙い)】


ーーーーーーーーー


(速い!)


 反射的に身体をひねる。

 さっきの狼より遙かに鋭い気配が背中を掠めた。


 バシュッ!


 ドレスの背が裂ける。


「おお、避けたんだ。”無能令嬢”って聞いてたけれど、全然違うじゃん」


「勝手に無能扱いしないでちょうだい!」


 短剣から杖を構えるが、手が震えている。

 今のは避けられたんじゃない、”予測ウィンドウが無かったら死んでいた”。

 リリィは舌を覗かせ、にやりと笑う。


「次は当てるね?」


 空気が張り詰める。

 予測ウィンドウが瞬く。


ーーーーーーーーーー


◆敵の行動予測

【次:上空飛躍→着地と同時に回し蹴り】


ーーーーーーーーー


「……上!?」


 見上げると、木の枝を蹴ってリリィが落ちてくる。


(どうする……受けたら終わる……!)


 私は気がついたら初めてなのに杖へ魔力を流し込んでいた。やったことはないのに。

 使い方なんて知らない。でもーー


「届いてっ!!」


 杖の先が一瞬だけ光る。

 リリィが驚いた顔をしている。


「は?」


 衝撃波のような風が前に押し出され、リリィの身体が横へ弾かれた。

 木に激突する音。

 落ち葉が舞う。


「……嘘でしょ、今の……」


 私自身が一番驚いていた。

 こんなのが出てくるなんて。

 何で魔力を杖へ流し込めたんだろう。

 分からない事ばかり起きている。

 でも、リリィはすぐに笑いながら立ち上がる。


「へぇ、やるじゃん。やっぱりさ、”噂通りの悪役令嬢”じゃなかったね」


「あなた……!」


 私に対して悪役令嬢なんて言葉、この世界の人物は知っているはずがない。

 なのにどうして知っているんだろう。明らかにこの世界の存在なのに。


「残念だけど、今日はここまで。”殺せ”って言ったけれど、本当は魔王様から”試してこい”ってしか言われてないし」


 リリィは指をひらひら振って後ろへ下がる。


「殺すのはーー次。もっと面白くなりそうだもんね」


 そして、風のように森の奥へ消えた。

 残されたのは、鼓動と震えだけ。


「……なんなのよ……あの子……魔王軍って、あんなのばっかりなの……?」


 私はへたり込み、消えていったリリィを思った。

 でも胸の奥で小さく灯る感情が起こる。


(強い。怖い。でも……負けたくない)


 少しして私は立ち上がって、森の出口へと進んでいく。

 既にドレスはボロボロ。

 髪は泥にまみれている。

 でも、既に辺りはより暗くなっていて、夜になろうとしている。


「ここで野宿するしかないのね」


 私はその辺りにあった折れた枝を使って、たき火を作る。

 地面は湿っているから、枝も同様かなと思ったけれども、幸い乾いているのもあった。

 とりあえず、石を使って火花で火を起こそうかなって思ったけれども、難しい。

 マッチでもあれば良かったけれど。

 確かによく何時間も試しているのを見たことがあるけれど。


「これ、朝になりそう……」


 そう思っていると、急にたき火に火がついた。

 この様子に驚いていると……


「えっ……?」


 どうして急に火が……

 そう思っていると、銀の甲冑をまとった女戦士が現れた。

 頭からは角が出ていて、明らかに人間じゃない。


「ひっ……!?」


 さっきのリリィと同じなのかと思った。私を殺しに来た。

 私は震えながら短剣を持つ。


「安心しろ。我は……今は殺しに来たわけではない」


 ぞっとする声。

 安心できるわけない。


「先程はリリィが大変失礼した」


 と言っても、頭を下げてはいないけれど。


「それにしてもグローリア嬢、そなたは王国に捨てられたか。ならば我らが拾ってやる。力も、居場所も、衣も食も……全てだ」


 はっきりとこの女戦士は私の名前を言っていた。

 おそらく、いや確実に魔王軍の一員なのかも。


「な……なによ、悪の組織みたいな勧誘は……!!」


「悪か。グローリア嬢も悪と言えるのでは?」


「ち、違うから……!」


 リリィだって、私のことを悪役令嬢って言っていた。

 確かに私が悪役令嬢っていうのは合っているけれども、この世界の存在が知っているはずないのに。


「しかし王国の方がよほど残酷だろう? こんな場所で夜を明かす事になるのだから」


 確かにそれは言えているけれど。

 この女戦士が居なかったら、たき火だって出来なかったのだから。


「選べ、グローリア嬢。死ぬか、生きるか」


 私を魔王軍の一員にしようとしている。

 確かに魅力的なのかもしれないけれど、死ぬよりは何倍も。

 でも……


「……お断りするから。私には逆ハーレムを作って、魔王を倒したいのよ」


 完全な悪役になんてなりたくない。


「そうか。では好きにしろ。ただし覚えておけ、王国はそなたを”二度と守らない”」


 確かにフィリップ王子は私の言うことを信じなかった。それにアレクサンダー公は事実上、私から爵位を奪う署名をした。

 それに対してこの女戦士は、たき火に火をつけてくれた。

 でも、私は……


「私は……王国に戻って見返したいのよ!」


 はっきりと言い放つ。

 それを見て、この女戦士は笑っていた。


「良い。望む道を進め。いつでも我らは歓迎しよう。”裏切られた者”は特にな」


 笑いながら女戦士は去っていった。

 こんなスカウトが来るなんて……

 私はたき火の前で色々と考えながら、夜を明かしていったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ