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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
99/102

99.ずるがしこい聖女

「うん、吸収できてるね。」

 魔王から精霊王達へ魔力が流れているのがわかる。

 だが、うまくいっているとはいいがたい。当たり前だが、魔王も抵抗するからだ。

 魔王は、より多くの精霊を吸収しようと暴れだす。


「うーん、皆さんが一斉にしないと難しいかもしれません。」

 精霊王達の方を見ると、嫌そうな顔をしている。この人ら、本当に利己的ね。

 とかやってるうちに、今度は魔王が魔法を放ち始めた。


「あっシュレインさんゴメン!これ、私が行かないといけないやつだ!ベイダルさん、シュレインさんをお願いします!」

「私もやっていいということか?」

 フィアルさんが先に反応する。

「フィアルさんはもうちょっと待ってください!精霊王たちが諦めたらです!」

「チッ。」

 舌打ちしやがったぞ。


「もう!ほら!皆さんやってください!」

 私が叫ぶと、残りの精霊王達も魔王へ近づいていく。私は魔王から放たれる魔法の処理について行く。


 そこからは割とすんなりいった。というか、魔法を対消滅させている間に、気がついたら精霊王が増えて、皆で吸収してくれていた。

 そして、魔王戦は三十分程度で終了したのである。はーやれやれ。




「……。」

「……。」

「……。」

「……。」


 魔王吸収作戦終了後の会場は、見たことない精霊王もいるし皆美形なので盛観であるが、なぜかお通夜状態になっていた。


「だ、大丈夫ですか?」

 精霊王たちの方に声をかけると、苦々しい顔つきの皆さんがこちらを見る。

「あなたの言ったことは正しかったと言わざるを得ないです。これからは、あなたの言った通りにしましょう。」

「は、はい。お願いします。」

 私がそう返答すると、ほとんどの精霊王が消えた。帰っていったのだろう。


「あなた、面白い子ね。」

 残ったダーラがそう言った。

「別に。戦わないで済むならそれでいいですし。」

「そうね、これで魔王との戦いは終わったわ。それに、私たちも結局は力が強くなった。私たちは感謝しなくてはいけないわ。ね?そうでしょ?セラ。」

 ダーラは同じく残っていたセラに問うた。


「そうですね。今後あなたの言う通りにして魔王が復活しないのなら……。私たちは、一体何をしていたのか。」

 苦々しい顔なのは、気持ち悪い事をした後なのと、今までの無駄な戦いを思ってなのだろう。まぁ、そうだよね。自分たちが暮らしやすいようにしてたから、魔王が復活してたんだもんなぁ。

「恨み言を言うのはお門違いだよ。」

 パケマネがセラの肩をたたいた。


「メリル、ありがとう。私は、メリルが言った通りになると信じるよ。それと、これからも私たちは家族だからね。何かあった時は、今まで通り呼びなさい。」

 パケマネはそう言うと、消えた。


「私は今まで通り、あまりかかわらないけれど、あなたに会えたことを感謝するわ。それと、面白かったわ。幸せにね。」

 ダーラもそう言って消えた。


「私たちのかわいい子よ。あなたは根本からこの問題を解決しました。」

「それは、時がたたなければわかりません。」

「そう……。でも、あなたが言ったことは本当だったのでしょう。だって、吸った魔力が、自分たちが作り出したものだとわかりますから。」

「そうですか。」

「ドラゴンたち。私たちは思い違いをしていました。あなたたちは、何も悪くなかった。申し訳ないことをしました。」

「別にいいよ。」

 セラの言葉にベイダルさんが答える。他の面々も異論はないようだというか、あまり興味がなさそうである。ルーシルさんなんてあくびをしているし。


「そう……。ではメリル。お仕事ご苦労様でした。もうあなたは自由です。残りの人生も、精霊と共に……。」

 セラも消えた。


 終わったのだ。


「じゃ、あたしは帰るね。」

「私が送ろう。」

「お願いします。ありがとうございました。」

 ルーシルさんとディアンガさんが帰っていった。興味が本当にないのだと思う。


「で、こうなったわけですよ。」

「ふん。」

 フィアルさんにそう言うと、面白くないように鼻を鳴らした。


「だが、魔素はまだ濃い。すぐにでも復活するかもしれないぞ。」

「そうですね。」

「精霊王が約束を本当に守るとでも?」

「そこはわかりませんが、少なくとも私の存命中は守ってくれると信じたいです。

 今は納得しきれない部分もあるかもしれませんけれど、精霊王たちもバカではないでしょう。もう一回くらいは試すかもしれませんけどね。」

「その時お前が生きていたら、私との約束を守るんだぞ。」

「受け入れないと帰らなそうですね。」

「ずっと付きまとってやろう。」

「わかりましたよ。その代わり、何もなければ、もう来るのをやめましょう?」

「ふん。仕方がない。まぁ、遊びに行くくらいは許せ。そして、お前もたまには来い。後、結婚する気になったら来い。」

「結婚はないですけど、遊びには行くかもしれません。遊びに来るのも、月一は止めてください本当に。」

「考えておこう。では、さらばだ。」


 フィアルさんが帰った。私はようやく安堵のため息をついた。

 

「まぁ、そういうわけで、今後は前に言った通りなので。ベイダルさんとグレンドさんもありがとうございました。」

「あいよ。まぁ、フィアルの言う通りまだ魔素は濃いからな。精霊たちの動向いかんではすぐにでもってことだから、お前も気を抜くなよ。」

「そうだね。気を付けておく。」

「じゃ、またな。」

「ありがとー。」

 ベイダルさんとグレンドさんもトウワに行ったのだろう。こっちはまたすぐにでも会うだろうな。



「さて、お気は済みましたか?騎士様。」

「途中は見れませんでしたし、話が分からないことが多すぎましたが……。」

 無表情でそう答えるシュレインさん。

 まぁ、もう話してもいいかと、口を開けかけた時、つないでいる私の手をシュレインさんの額に当てた。


「あなたが無事で、何よりでした。」

 そう言って手を頬に当てたあと、手の甲に軽くキスまでしてきた。ひええええええ!

「え、あ、はい。」

「あなたを失うのが怖かったのですが、流石聖女殿。ずるがしこく立ち回って、まさかほとんど戦わないで済ませるとは。」

「え。ずるがし……え?」

 そう言って、シュレインさんはクソデカため息をついた。


「魔王討伐?お疲れさまでした。さ、ディアたちが心配するといけません。帰りましょう。」

 おい。なぜ疑問形なんだ。おい。





 自宅に帰ったが、姉たちはまだいなかった。

 お茶でも入れようと思ったら、シュレインさんがそれを制し、入れてくれた。


「二人ともまだ帰ってないねぇ。」

「すぐ終わりましたしね。」

「思ったより人数連れてきてくれたからなぁ。」

「それはよかったですね。」

「何よー。さっきから若干棘がある言い方だよね?」

 私はぶすっとそう言うと、シュレインさんは半目でこちらを見る。


「私は!……ずっとあなたが一人で戦うのだと……そう思っていました。」

 まぁ確かにそんなこと言ったな。


「精霊やドラゴンの思惑もあるのでしょうが、我々人間は非力すぎて手を貸すことすらできない。ヴァスカマス親子と手を合わせて、それを痛感しました。二人ですら次元が違う。さらに強いだろう魔王ともなれば……。」

 そう言って。シュレインさんは大きく息を吸い込み、小さくため息として出した。眉間にしわを寄せ、目をつむる。


「あなたは確かに強いでしょう。ですが、その小さな手で、その華奢な体で、魔王と戦う。それを見送ることしかできない。それが、どれだけ悔しかったか……。」

 苦悩の顔でそう言う。


「それが……まさか、戦わないとは……。」

 そう言うと、ゲンドウポーズのようになり、手に顔を伏せている。

「何?戦った方が良かった?」

「まさか!よくわかりませんが、あなたが主体で戦わなくて済んだのは何よりも良かったと本当に思っています。ただ!」

 そう言って一区切りつくと、今までで一番のクソデカため息をついた。


「ただ、私にだって説明していただきたかった。それなら安心して送り出せたものを!」

 そしてもう一度、クソデカため息をつく。

 それを見て、私もため息をはいた。


「あのねー。うまくいったけど、一応は賭けだったんだよ。だから、戦うことになったかもしれなかったしさ。」

 私はそう言ってそっぽを向いたが、改めてシュレインさんを見る。

「全部が、ただの偶然だったからな。」

 そう言って、ここに至るまでの話をすることにした。



はじめはちゃんと戦う予定だったんですが、戦わない方がメリルらしいと思いました。


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