97.武闘大会の後で、その時の前に
今回は短いです。
二人の戦いも書こうと思ったんですが、戦闘シーンって、説明しても伝わりきる気がしないので省いています。
すみません。
「うへ。」
広場で配られていたという新聞を見て、私はうなった。
姉が仕事帰りにもらってきたのだ。
「なんで優勝したディアよりもメリルの扱いの方が大きいのよ!しかも、金髪の美女って誰よ!変な術使うから!」
姉はプリプリと怒っている。
そんなわけで、武闘大会はディアが勝った。まぁ、ベリンダールの時の差を考えると妥当なのだが、試合では均衡していたので正直びっくりした。
決勝までの試合は何だったのだろう?とすら思わせる動きだった。
体のつくりが変わったディアもだが、シュレインさんは私も知らないほどに強くなっていた。
とはいえ、二人はよく打ち合いもしていたので、お互いは知っていたのだろう。
「負けました。」
「いや、シュレインの伸びは凄いよ。ゲーベリオンの頃とは大違いだ。」
「そうは言うが、ディアも体が変わってまだ本調子じゃないだろ?なのに全然隙を感じない。」
なんて、いつも通り仲よさそうにしていた。
そして、大穴だったディアに財産をぶっこんだおねーちゃんは、皆の前だと言うのにディアに飛びついていた。
慌てふためいてまわりを気にするディアとは違い、頬にキスまでする勢いだった。ハイハイお熱いようで。
まぁ、私やアマンダさんをはじめ、ギルド関係者どころかビレートさんですらシュレインさんとの二点買いをしていたので、気持ちとしては同じだ。
多分、そのメンツ以外はほぼ買ってなかったと思う。その倍率たるや。いやぁ、儲けさせてもらいましたわ。ヒヒヒ。
そんなわけで、無名の剣士様だが、髪の色と背丈でこっちもばれてしまっていたようで、おねーちゃんを仕事場に送り迎えしてる時に色んな人にもみくちゃにされたようだった。
新聞を片手に憤慨しているおねーちゃんの後ろで、げっそりとしている。これからモテて大変だぞーと思いつつ、今はいないシュレインさんを思う。
普段通りにしているが、悔しかっただろう。それを外に出す人ではないからこそ、ちょっと心配だ。
「ってわけでさ、大丈夫?」
すぐにギルドで仕事をしようと誘い、二人で出かけた時に聞いた。
「もちろん大丈夫ですよ。」
いつも通りの無表情だ。
「ただ……。」
「ん?」
歩みを止めてこちらを見るので、私も止まって見返した。
「勝てたら、認めていただけるのではないかと思っていた部分はありました。」
「誰に?何を?」
「もちろん、聖女殿にですよ。」
「私?」
シュレインさんは無表情のままだが、若干ムッとしているのがわかる。なんでだ。
「私は未だに、聖女殿がどういう考えで何をなさろうとしているのかがわかりません。きっと、エスカルパ嬢もでしょう。だから、誰にも話すつもりがないのだろうとは思います。でも、私は知りたい。」
まっすぐそう言われたので、私は困った。
「え?いや、別に何も考えてないけども……。」
いやホントに。何をどう勘違いしてそんなことを考えているのか?
「聖女殿とフィアルの会話を聞いていて思いました。我々にはまだ知らされていないことがあるのだろうと。
我々は確かに非力で何の役にも立たないでしょう。ですが、私は知りたいんです。」
「そっかー。」
さりげなくフィアルさんの事を呼び捨ててるのだけでも、シュレインさんもフィアルさんの事嫌ってるのわかるわー。
「私は、ずっと、聖女殿に認めてもらいたかったんです。だから、そういう意味では、悔しいです。」
シュレインさんは少しうつむき、小さなため息を吐いた。
「認める認めないって、よくわからないんだけど。シュレインさんが強いのとか、真面目だとか、誠実だとか……。色々と認めていると思うんだけどな?
確かにまぁ、話してないことはあるけども、聞いたところで知らない方がいいことだってきっとあるからなー。」
「それを、共有していただきたかっただけなんです。まぁ、優勝すれば……なんてことも勝手に思っただけなので。」
そう言って、シュレインさんは寂しそうに微笑んだ。うー……いつも無表情なのに、こういう時そういう顔するのずるいなぁ。
「うちの護衛騎士さんはわがままでしょうがないですねぇ。」
私は大きくため息をついて、シュレインさんを見た。シュレインさんは何も言わず、少し困った顔をする。
「怒らないで聞いて、今まで通りみんなの前で無表情でいられると約束するなら、教えますよ。」
私が意を決してそう言うと、シュレインさんは目を見開く。しかし、そのまま首を振った。
「私の言い方が悪かったです。聖女殿が乗り気ではない状態で話していただいても仕方がないと思うのです。私になら話してもいいと。そう思っていただきたかったのです。」
そう言うシュレインさんの顔は、今度はひどく悲しそうな顔になっていた。ずるい!が、面倒くさい!
「あー、それなら一生話しませんよ。信用とか認めるとか、そういうことで判断する次元じゃないですし。」
「……そうですか。すみませんでした。」
「だから、聞きたいか!聞きたくないか!はっきりと言って頼むべきだと思いますよ!察してもらおうだなんて甘い考えは無駄ですし、心証が悪くなるだけ!みっともなくすがってでも聞きたいかどうかです!」
私がイラついてそう言うと、シュレインさんはひるむ。
「さぁ!どうしますか?!」
「うっ……。」
さらに詰めると、一歩後ずさるシュレインさん。しばらく考えた後、その場に跪いた。そして、手を胸に当て私を見上げる。
「お考えをすべてお話しいただきたい気持ちはもちろんあります。知りたいと思う欲もあります。でも何より、あなたが何をなすのか、この目で見たいのです。
どうかお願いいたします。魔王討伐のその時、私を連れて行ってください。」
話して諦めさせることができないようにしたのか、素なのか。しかし、ずっとこう言っていたなと思いだす。
私はため息をついた。
「死ぬかもしれませんよ。」
「かまいません。」
「そうではなく、私が死ぬかもしれませんよ。」
「……そうなった時、この目で見なくては、絶対に信じられませんから。」
「はぁ。仕方ないですね。状況によってはどうしても無理かもしれませんが、そうでなければ連れて行きますよ。約束します。それでいいですか?」
私がそう言うと、泣きそうで嬉しそうな顔で小さく何度も頷くシュレインさん。
「はい。」
小さくそういった声が少しかすれているのは、どういった心境なのか。面倒くさい護衛騎士だ。
「さ、さっさと討伐してご飯に行こ。あーきっとおごってくれるだろうなー。」
「どうぞ、十回でも二十回でもおかわりしてくださいね。」
「するかっ。」
まぁ、ベイダルさんたちも見守りに来てくれるって言ってたし、いざとなった時のシュレインさんのおもりも頼もう。
魔王討伐対決ならフィアルさんに勝てないのは明らかだから、私が連れ去られるのをシュレインさんが阻止しないようにって意味だけど。
さすがに、そんな約束しているのは言えないよなぁ。はぁ。
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