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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
94/102

94.武闘大会1

 夏が終わり、稲刈りの季節がやってきた。

 そしてやって来る、武闘大会。


 今回はシュレインさんとディアが出場するので、見に行こうと思ってはいたが、なぜか城から席を設けたので見に来て欲しいとのことで、招待された。なので、特等席から観戦だ。

 城に借りは作りたくないが、向こうが来て欲しいというのだから、仕方ないので行ってあげることにしたのだ。(上から目線)

 シュレインさんとディアはすでに控室の方に行っている。ここには私とアマンダさんと姉だけしかいない。

 しかし、すぐ横が王族のスペースなので、姉が端っこの方で固まってるのは気にしないでおく。ホントゴメン。



「お、王子も参加するんだね。」

 トーナメント表を見て、私はつぶやいた。


 武闘大会は二ブロック制になっていて、総勢十六人が戦う。

 そして、シュレインさんとディアは別のブロックに位置し、勝ち進めば決勝で戦うのはもちろんのこと、その一戦前がシュレインさんが騎士団長と、ディアが王子とぶつかることになる。


「そうみたいですね。でもこれ、すごく作為的な配置に感じます。きっと、騎士団としては団長と殿下を決勝でぶつかるように配置したんでしょうね。明らかに殿下の方は若手の騎士ですから。」

 横からのぞいているアマンダさんがそう言った。

「そうなの?」

「ですね。殿下が最初に当たるのは、一番最近入った人ですね。まぁ、第一部隊なので、それでもかなり強いですけど、殿下に本気出せる度胸はないと思いますよ。で、二戦目にあたるのが殿下についている騎士ですね。お会いしたことあるんじゃないですか?」

 多分、ご飯食べた時にいた子だろう。

「その子の相手が勝つってことは?」

「もちろんあると思いますけど、殿下についている方なので、第一部隊の中ではかなり強いはずですよ。」

「シュレインさんより?」

「どうでしょう?今までの大会に出ていなかったので分からないんですよね。」

 秘蔵っ子&年齢的な理由なのかもしれないが、多分これって、学園の最後の方のイベントな気がするんだよねぇ。これで王子が優勝する的な。ありがちだもんね。

 だからこそ、呼ばれたんじゃないかと思ってしまう。ぱっと見、婚約者のはずのドリルちゃんが横のスペースにいないし。


「ってか、そんな中によくディアが入ってるね。」

「ちゃんと予選してますし、強ければちゃんと勝てますよ。でも、すごいですよ。いつもは第一部隊だけになっちゃいますし。」

「他の部隊は?」

「部隊長たちは一番新しい人よりは強いはずですけどね。毎回参加してません。多分、これってお披露目的な意味もあるんじゃないかと思うんですよね。こんなに王宮を護ってる騎士は強いんだぞ!国で一番だぞ!っていう。

 ただ、騎士団長が参加することもなかったんで、今回は色々と裏を感じざるを得ないですね。」

「流石に騎士団長は王子より強くないとまずくない?」

「だからこそ、決勝で当てるんじゃないですか?流石に勝てなかったけど、準優勝なんてすごい!っていう感じにしたいんじゃないですかね?」

 よくわからん価値観である。


「ディ、ディア君は大丈夫なの?」

 やっぱり気になるのか、姉が蚊の鳴くようなか細い声で聞いてくる。

「大丈夫だよ。普通に決勝はディアとシュレインさんでしょ。」

「えええ?!騎士団長は?」

 姉の疑問ももっともである。

「殿下と当たらないとまずいですからね。本気で来ると思いますよ。ハルドリック様には命令が出ているかもしれませんね。」

 アマンダさんもそういう。

「そうだけどねー。それに屈するようだったら、出ないと思うんだよなぁ。真面目だけど、最近のシュレインさんはそういうのをよしとしない気がする。気のせいかもだけど。」

「……いえ、きっとそうですよ。」

 アマンダさんがにっこりとほほ笑む。

「まぁ、どうなるか楽しもう。」

「うん。」

「はい。」



 時間になり、試合が始まる。

「ディア君って一試合目なのよね?」

「だねー。あ、ほら、出てきたよ。」

 正面から、ディアとシュレインさんと同じくらいの歳の騎士が出てきた。


「ずるくない?あっちの人鎧着てるじゃない!」

 悲鳴にも似た声で、姉が指摘する。もうちょっと声落としてください。

 さすがに木刀での戦いだが、着ているものが違う。相手は王宮騎士の鎧だ。そして、ディアは革鎧の胸当てと腕当てだけだ。

 ちなみに、魔法も使っていいらしい。そこもディアにとっては不利だが、言わないでおこう。あと、舞台から落ちたら場外で負けのようだ。

「でもほら、ディアは木刀二本持ってるし。」

「そ、そうだけど!」

 体格が変わっても二刀流なのは変わらないようで、長剣と短剣の木刀を持っている。


 二人は舞台の上の真ん中からこちらにお辞儀をした。そして、向き合う。

 銅鑼の音が鳴り響き、試合が始まった。


 小さく震えながらも祈るようなポーズで見つめる姉の心配とは裏腹に、一試合目はあっけなく幕を閉じた。

「え……。」

 唖然とする姉と、しんと静まる会場。そして、徐々にどよめきに変わっていく。


 圧勝過ぎた。手を抜かないにもほどがある。

 そして、ゲーベリオンで見た時よりも、確実に強くなっていた。


 動きの滑らかさはどこがバランスが変わったのかというほどに健在だった。

 まるで踊るようにしてするりと懐に入り、相手が吹っ飛んだ。

 筋肉量が増えたことで、一撃が重いのだ。

 それに、一瞬だったが、魔力の流れを感じた。

 うーん、ディードの魔力が使えるようになってるなぁ。


 起き上がってこない相手を審判がのぞきこむ。そして、ディア側の腕をあげた。

 その瞬間、咆哮のような歓声が沸き起こる。


「ディアーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」

 姉もものすごい勢いで立ち上がり、名前を叫ぶ。


 完全なる番狂わせが乱入したのが、ここに居る全員にわかってしまった。

 横のスペースを見ると、苦い顔の王と王妃がいる。おっと、目が合うと厄介そうだ。


 反対を見ると、貴族たちの席があるが、そちらも困惑の表情だ。

 中にはワクワクを隠しきれない表情の人もいるが、少数派だ。


「これ、兵士になれるかねー。逆にまずいんじゃない?」

「どうでしょう。メリル様と一緒にいるのは知っているはずですから、大丈夫だとは思いますが。」

 出る杭が打たれないことを祈るしかない。

 

 

 試合は淡々と流れて行った。

 二試合目は無難に終わり、三試合目にやっぱり護衛騎士君が出てきた。

 二試合目の二人より、動きがいい。そして、案の定勝った。


 四試合目、王子が出てくると、会場が黄色い歓声に包まれた。まぁ、トーナメント表にクレスティオ殿下って書いてあるし。

 とはいえ、皆が字を読めるとも思えないので、事前に告知でもされていたのかもしれない。


 そして始まった試合。王子の動きは悪くなかった。どころか、予想よりもはるかによかった。

 騎士の剣をうまくかわし、器用に戦っている。そして、見事に勝った。

 確実に、前の二試合よりも盛り上がったので、王と王妃もニコニコだ。


「これなら、ディアが勝てそう。」

 ニコニコの王族の横で、そんなことをつぶやく一般庶民の姉。聞こえてないとはいえ、不敬である。

「まぁ、そらそうよねー。」

 とはいえ、私も肯定する。不敬なんて知らんがな。



 次の試合はシュレインさんだ。こちらに向いたときに、手を小さく振っておくが、ちらりと見ただけで、無表情である。

「真面目だなー。絶対気づいてるのに!」

「まぁ、振り返せないですよ流石に。」

 アマンダさんが苦笑する。そりゃそうだけどさー。


 そして、始まった試合。私はびっくりした。

 特に強くなってる印象ではなかったからだ。

 シュレインさんとは何度も一緒に戦ったことがあるから、その時のイメージと変わらない。

 特訓したんじゃなかったの????

 そうは思っても、シュレインさんもちゃんと勝った。なんだか腑に落ちないまま、次の試合に移っていく。


 次の試合には、城で会った嫌な騎士がいた。

「あ、あいつ嫌い。」

 私がそう言うと、アマンダさんは苦笑した。

「あの方、第一部隊の三番手ですよ。そして、例年の優勝者です。」

「そうなの?!」

「いつもは団長も副団長も出ないですからね。今回も副団長は出ていないので実質二位候補ですけど、団長とブロックを別にしていませんし、そこで落とすことにしたんでしょうね。」

「ふむー。」


 実際、強いのがわかる立ち回りだ。ディアを抜けば、一番いい動きをしている。

 相手の騎士も強いはずだが、やはりどうしても遊ばれているような展開になってしまう。

 そして、いいころ合いかな?というように、急に試合に決着がついた。やっぱり実力差があって、あしらっていただけなのだろう。

「やっぱりあいつ嫌いだわ。」

「あの方は、ロイエンタール侯爵家の四男ですよ。殿下の婚約者のエリザベス様覚えていらっしゃいますか?あの方のお兄様です。」

「げ。」

 それを聞いて、なんであんなに敵意のある視線だったのかが分かった。そりゃ、妹の婚約者を盗ろうとしてると思われてたなら仕方ない。それでも嫌いだけどね!


 そして次の試合。やはり最初のブロックとは違い、動きが格段にいい。

 本当にこっちに強い人たちを配置したようだ。姑息だなぁ。


 で、ついに騎士団長。またも会場がわく。

 王子の時とは違い、野太い歓声が多い。この人も嫌いだが、ちゃんと民衆の支持はあるようだ。

「今気が付いたけど、金髪ドリルちゃんのおにーさんの時、歓声無かったね。前回の優勝者なんでしょ?」

「そうですね。まぁ、戦い方が……。」

 アマンダさんは困ったように言い淀む。皆気が付いてるんだなー。次期王妃の兄が人望ないってやばいと思うけどなぁ。


「やっぱり、さっきの人がいつか騎士団長になるの?」

「そうですね。現団長はもういいお歳ですし、副団長ももっぱら裏方なので、もしかしたらそのまま副団長を飛ばして……なんてあるかもしれませんね。」

「うへぇ。」

「エリザベス様のお兄様なのも大きいですし、身分が高くて強いのは確かですから。」

 シュレインさんがギルマスの方を慕ってるってのも問題だとは思ったが、次代も怪しそうだ。


 と、そうこう話している間に、団長の圧勝で試合が終わった。

 ディアほどではなかったが、圧倒的に強さの差があった。

 歳だとか言っても、強さはこの国一番なのがわかる。ドリルちゃんのおにーさんよりも強いだろう。



 こうして、武闘大会の一周目が終わったのである。

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