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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
89/102

89.村

 結局トイレ休憩以外は休ませてもらえずに、次の村にやってきた。

 村から離れたところにおり、並んで村へ歩いていく。

 

「眠いです!寝たいです!」

「ここ、宿屋なんてないわよ?」

「は?」

「だから、さっさとご飯を到達して次まで飛びましょ。」

「いやいやいや!宿屋がないって、じゃぁ、ご飯食べるとこも……。」

「そこら辺の人間にもらえばいいんじゃない?」

 この魔族やばい。


「いやいやいやいやいや!そんなのできないですよ!」

「お金出せば大丈夫でしょ?」

「そうかもしれないですけど、そんな恥ずかしいことできないです!」

 ほぼ物乞いじゃないか!

「なんなの?本当に面倒くさい!」


 そんなことをギャースカ言い合っていると、声をかけられた。

「お嬢ちゃんたち、どっから来たんだい?」

 見ると、白髪のおばーちゃんがいた。

「あっちよ。」

 私がどう答えようかと思う間もなく、ピナさんが森を指さしそう言った。おいおい、そっちに道はないんだぞ!


「森?道を通ったんじゃないのかい?」

「はい。色々あって、森を突っ切るしかなくて。」

 飛んできたとは言えないので、仕方なく森ルートに乗って答えた。

「この森を?」

 そう言って、おばーちゃんは私とピナさんをじろじろ見た。そらそうよ。こんな小娘たちが深い森を突っ切ってきたっていうんだから怪しいことこの上ない。

 全然汚れてないしね。


「で、この村へ何しに来たんだい?」

 おばーちゃんはそうニッコリと言ってきた。そのニッコリさが逆に怖い。

「いえ、通りがかっただけで。」

 なんとなく怖くなってそう言ったのだが、横からピナさんが余計なことを言い出した。

「何よ。ご飯とか宿とか言ってたくせに。」

 空気を読め!本当に!

「いやぁ、流石に無理は言えないから。あの、私たち、またそっちに抜けていきますね。お邪魔しました。」

 そう言って、私はピナさんをぐいぐい通して村から出て行こうとした。


「待って。ご飯が欲しいのかい?だったらおいで。」

 おばーちゃんがそう言うが、私は怖かった。なんというか、あのニコニコした笑みの中に、何かのたくらみを感じるのだ。

「いえ。」

 断ろうとしたけれど、またもピナさんが面倒くさそうに私の返答を遮った。

「あんたご飯ご飯ってうるさいんだし、ここ以外寄る気ないからね?さっさともらってきなよ。」

「遠慮しないで。さ、こっちへおいで。」

 おばーちゃんがそう言って、ピナさんはついて行ってしまう。なんでこんな時ばっかり積極的なんだ!


 仕方なくついて行くと、ぼろいお家に通された。本当に悪いけど、ぼろいとしか言いようがない。

「さ、そこに座って。今から食べ物を持ってくるから、ちょっと待っていなさい。」

 そう言って、おばーちゃんは家を出て行った。


「ちょっと!なんでついて行くんですか!私が嫌がっていたのわからないんです?!」

「だって、ご飯とかトイレとかうるさかったじゃない。なんで今回だけそんなに嫌がるの?」

「ピナさんはわからないかもしれないですけど、人間の村って、本当に貧しいところは貧しいんですよ!

 本当に失礼だけど、この家見たってわかるじゃないですか。他人に出せるような食料がないとこだってあるんです。ここは多分そういうとこですよ。」

 うちの村だって、昔はその日を生きるのにいっぱいいっぱいだった時がある。そんな時はお金より食糧の方が貴重なのだ。

 お金は使えるとこに行かないとゴミになってしまうのだ。


「とりあえず、ちょっとトイレだけでも借りるわ。待っててね。」

 そう言って、私は家の中にあったドアを開けた。

 もちろん中はトイレじゃない。

 扉には開かないように魔法をかけて、自分の家のトイレに転移する。

 すぐに帰ればピナさんはおとなしくさっきの場所に座っているようだった。


「いやーお待たせお待たせ。」

「なんかさっきの人遅くない?なんで外に行ったの?」

「こういうとこって、台所は共同だったりするんだよ。ピナさんって都市部にしか行ったことないの?」

「こんな村に寄る意味ないし。」

 まぁ、そうだろう。寄ったとしてもトイレもご飯も必要ないから興味ないだろうし。

 トイレに行くって言って別の部屋に入っても、違和感に気が付かないくらいだもんなぁ。


 そんなことをコソコソと話していると、しばらくしておばーちゃんが帰ってきた。

 そして、後ろに数人のおじさんとおじーちゃんがいた。

 新しく来た村人たちも、なんだか嫌な感じにじろじろ見てくる。おばーちゃんは相変わらずニコニコしている。

「本当に娘っこだ。あんたたち、どっから来たんだい?」

 その中のおじーちゃんが、びっくりした表情でそう聞いてきた。

「だから、あっちよ。」

 同じことを聞かれて、ピナさんがイラついて答える。

「あっちって……。ともかく、道沿いじゃないんだな?」

「そうよ。」

「じゃぁ、道はまだあのままなのか。」

 皆落胆したような表情になった。


「何かお困りなんですか?」

 私が恐る恐る聞くと、またおじーちゃんが答えてくれる。

「あぁ、一番近い町に行く道が土砂崩れにあってね。ふさがったままなんだ。そう行く機会があるわけではないけれど、もう一年以上もふさがっているから困っていてね。

 あんたたちが来たというから、もしかしたら町の人間が気が付いて土砂をよけてくれたんじゃないかって思ったんだが……。」

 瘦せこけた人たちが言うので、自分たちでどけなよとは言い難い。

「あ、あの!その場所、近いんですか?」

「そうだな。割とすぐそこだよ。」

「じゃぁ、私がそれ、どけますよ!」

「「は?」」

 私の発言に変な声を出したのは、村人だけじゃなく、ピナさんもだった。


「なんでそんなことしなきゃいけないのよ。」

「困ってるんだから助けないと!」

「そんな時間ないわよ。っていうか、ご飯は?持ってくるんじゃなかったの?」

「いいじゃない!ごはんは一回我慢するから!」

 私がそう言うと、ピナさんはジトリとした目で見るものの黙ったので、許可と思って立ち上がった。

「私魔法が使えますから大丈夫です。案内してください。」

 


 村から十五分ぐらい歩いたところ、崖と崖に挟まれた道があった。道自体も上り坂になっており、多分山越えの道になっているのだろうと思われる。

 迂回しようにも、ちょっと難しそうなのはわかった。

「本当にこれがどうにかなるのかい?」

 あのままついてきたおじーちゃんがそう聞いてくる。多分この村の村長とかそんな感じだろう。

「大丈夫ですよ。ちょっと待っててくださいね。」

 私は道をふさいだ岩たちをさわり、呪文を唱えた。

『開けゴマ!』

 日本語で言えば、誰にも分らない魔法の言葉になるの不思議。


 私の不必要な呪文と共に、目の前の岩は砂になってさらさらと坂を流れていく。

 それを見て、どよめくおじさんたちとおじーちゃん。さっきの人たち、おばーちゃん以外は皆きてたのよね。

「す、すごい!こんなに強い魔法が使える方が来てくださるとは!何か食料と今日の宿をご所望だとか。是非とも今日はお泊りください!」

「いえ、急ぐのでこのまま町に行きます。じゃぁ、お元気で!」

 私はそういうと、ピナさんの手を引いて、道をかけだした。

「そんな!何ならずっといてくれてもいいんですよ!歓迎しますから!」

 そんな声が後ろから聞こえてきたが、振り向かずに走った。


 振り返っても村人が見えない位置まで来ると、私はようやく止まった。

「なんなの?ご飯食べるとか食べないとか!それに、町なんて行かないわよ?!全く人間って本当に面倒!」

「だって……。はぁ、まぁ、ごめんなさい。」

 多分、事情を説明してもピナさんにはわからないだろう。

 あの村、女性がとても少なかった上に、皆おばーちゃんだった。

 それに、さっき一緒に来ていたおじさんたち。おじさんだとは思えたけど、他の村人に比べたら若かった。

 あのじろじろと見てきた嫌な視線や、おばーちゃんの表情。

 ここまでの道すがらも、何かと話しかけてきてた。まぁ、ピナさんが空気読まない回答でばっさりやってたけど。

 多分、あのまま村にいたら、ゴブリンと過ごすのと同じような意味になるだろう。

 絶対に勝てる存在だとはいえ、一緒にいたくないという気持ちが勝ったのだから仕方ない。まぁ、自意識過剰だったらごめんなさいってことで!


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