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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
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61.水面下

「で、ディアですが、本当にどこかへ行っているのですか?死んでいたりはしませんか?」

「は?」

「いえ、とらえた騎士団の魔術師の中で、そのように発言している者がいたので。」

 あ、忘れてた。


「そうですか。じゃぁ、やっぱりディアにかかってた呪いはファムさんの仕業だったんですね。」

「呪い?そんなものを?彼女は思わせぶりにそう発言しただけで、詳細を語らなかったので。しかし、そうなるとちょっと厄介だな。」

「どうしたんです?」

「釈放となったので。呪いをかけられる者をみすみす逃してしまった。処分すべきだったようですね。」

 感覚がやはり怖い。第二王子はベリンダールのやり方を嫌ってはいるけれど、結局ベリンダールの王族なのだ。

「消息は分かっているんですか?」

「えぇ。表向きは下町でひっそり暮らしていますが、多分、教会が飼ってますね。」

 言い方よ。


「ディアにまだ固執してると思いますか?」

「それはわかりません。私も直接話を聞いたわけではないので。」

「では、伝わらないようにしてほしいですが、ちゃんと呪いを解いて元気にやってますよ。今もディードと共に行動していますし、毎日帰ってきてますのでご心配なく。」

「そうですか、それはよかった。できれば数日内に彼とも話せたらと思います。表向きには私がこちらによこしましたし。」

「伝えておきます。」


 とは言ったものの、ディアのことは心配だったりする。

 トウワで目覚めた後身長が伸びていたが、その成長は未だ続いているのだ。

 呪いを解いて死を乗り越えても、止まっていた分を取り戻す成長による体の激痛があるのだ。


 いわゆる成長痛だが、二年分の成長が一気に来るのだ。立ってるのだって無理なほどの痛みだと思う。

 骨や筋肉が急激に成長することなんて、普通ではありえない。

 骨や肉になる栄養素だってどこから来るのかわからないし、そこがうまくいこうとも、皮が耐え切れずに裂けるだろう。

 しかし、瞬時に絶命するほどではない。結果、何日もその激痛に苦しむことになり、その果てに出血などで死ぬだろう。

 常に誰かが回復魔法で支えなくてはいけない。そんなことができる人間はそういないだろうし、いたとしても処置してもらい続けるには莫大な予算を必要とする。

 彼がそれを用意することはできない。

 絶望の中、徐々に裂けていく体の痛みにさいなまれ、何日も死に向かって無力に横たわるしかない。


 そう考えると、想定していなかったとしても、二重と思われた呪いは三重になった。

 なんて執念深く、そして残忍な性格だろう。

 容姿が変わることで興味をなくすと予想していたが、もしかしたら呪いが成就しなかったことに怒りを覚える可能性もある。

 ファムの行動を気にすることも視野に入れないといけない。


 いや、いっそ……。


「あの、アマンダさんのこと、できる限りでいいのならお受けします。その代わり、報酬を本当に頂きたいです。」

「もちろん。」

「では、金銭ではなく、お願いが……。」


 ベリンダールの第二王子のことは何も言えまい。私もまた、脅威を取り除くのにためらいはない。

 きっとこれは、精霊王たちがチョチョイっと感じにくいようにしてくれたおかげだろう。そう思っておきたい。



 夕飯が終わり、今日はシュレインさんとディアしかいなかったので、話を切り出してみた。

「……というわけで、第二王子が会いたいそうだよ。」

「そうか。わかった。」

 稲刈りの時に倒れてから、年を超えるまでに身長が十五センチ伸びた。今は緩まってそれから五センチ伸びただけになっているので、だんだんと通常の伸び方になっていくのだろうと思う。


「体、痛くない?」

「あぁ。これが効いてるから。本当にお前には恩を受けてばかりだ。」

「もう。それはいいって。」

 ディアの右の人差し指には指輪がはまっている。それは、私が初めて作った魔道具だ。

 指輪は、常に回復魔法を発動させている。そんな魔道具は他にはないレベルでヤバイ物だとアマンダさんがおののいていたが、そうでもしないとどうしようもなかった。 


 トウワで意識が戻った後、ディアは普通に過ごしていたが、ディードがものすごく鳴き始めた。何かと思ったが、ディアが高熱を出していたのを隠していたのだ。

 体の急激な変化や痛みでそうなったのだろう。それを耐え抜く精神力。こんなことでそんなものを発揮するんじゃないと叱ったが、ディアに起こっている体の変化に全く気が付いてやれなかったことを悔やんだ。

 しかし、魔法をかけ続けるのにも限界がある。私だって寝たりしたい。なので、指輪を作ったというわけだ。


「でも、王子と会う時だけは外してもらわないとだめだわ。クレアライト使ってるのバレたらやばいし。多分チェーンにつけて首につるしても大丈夫だと思うけど。」

「そうだな。」

 そう、この指輪はさすがに普通の魔石では作れなかったので、倉庫にしまい込んでいたベイダルさんのゲボ石ことクレアライトを小さく削ってはめ込んである。

 この石は本当に凄くて、小さなかけらだというのに回復魔法をずっと放っているのにまだ魔力が枯渇していない。

 普通の魔石では十倍くらいの大きさでも一日くらいしかもたなかったのにだ。

 ベイダルさんいわく、「俺が近くにいるから勝手にそっちにも魔力が流れてるかも」との事。そうなるとずっとつけてるのもよくない気がするので、成長がある程度落ち着いたら外す予定だ。その日は近いだろう。

 

「いつベリンダールに行くんだ?」

「いつからかはまだわからないなぁ。でも、ディアは行き辛いよね?その間どうする?」

「俺はトウワにいる。」

「トウワ、気に入ったみたいだね。ディアがそっちで暮らしたいなら、行っていいんだよ。ディアンガさんに土地もらって、家を作らせてもらおっか。」

 私がそう言うと、ディアは困った顔になった。


「そういう意味じゃない。確かにディアンガ様は尊敬しているし、平和でいい場所だが。」

 なんとなく歯切れ悪くそう言うが、何かを迷っているような表情だ。

「何かあるの?」

「あまり心配させたくなくて言わなかったんだが、体のつくりが変わったことで、まだバランスが取れないんだ。正直、ろくに戦うこともできない。それで、重心の移動の仕方なんかを教わってる。

 それに、ディアンガ様が何か考えているようで。それの手伝いをしている。とはいっても、俺とディードの絆について調べたいからと呼ばれているんだ。」

「あ、そうなんだ。」


「それで、お前たちはできたらトウワに来ないでほしいんだ。」

「へ?」

「これ以上は俺の口からはすまない。これはディアンガ様が望むことでもあるんだ。ベリンダールに行くなら、そのまましばらくベリンダールにいて欲しい。」

「ちょっと待って?!凄く気になる!もしかして、今日ベイダルさんたちがいないのって。」

「あぁ。トウワにいるよ。」

 なんだか不穏な空気だが、こう言われて強行するのも気が引ける。大体、ドラゴン三匹で対応できないなら私が出て行ったところで何の役にも立たないだろう。

「田植えを手伝いに行くのはいい?」

「……確認する。」

 迷ってからそう答えるディア。トウワの平和が続くといい。私の和食が消し飛ぶことだけは何があっても阻止しなくては。

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