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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
57/102

57.王都の家

「ハルドリック様と話したのですが、うちが出資して、家を買うことにしました。」

「はい?」

 アマンダさんの唐突な話に、私の背後には宇宙が広がった。


「ハルドリック様の家が出資すると、どうしても騎士団の介入があるというか、ハルドリック様がメリル様を取り込んだみたいになってしまう恐れがあるんです。」

 うん、そういうことを聞きたいんじゃないんだよな?

「いや、あの、家ってどうして……。」

「あちらの家に帰るのもいいですが、やはり王都に家が必要だと思うんです。ハルドリック様の仕事も楽ですし、物資がそろいますからね。」

「え、あ、はい。」

「ほら、メリル様は家と家をつなげられますから、そこに入ってあちらに帰ればいいのではないかと。」

 あぁ、そういう!やっとわかった。

「じゃぁ、小さいお部屋みたいのお願いしても?」

「それは駄目です。この人数ですから、ちゃんとした一軒家にしないと。」

「待って?!アマンダさんの言うちゃんとは豪邸になりそうで怖い!」

 金銭感覚おかしいからなぁ。

「さすがにそれはしませんが、塀もあって部屋数があるものじゃないと怪しまれますから。そこはちゃんと見繕っているんです。」

 大丈夫だろうか?シュレインさんが抑え役を頑張ってくれたと信じたい。


「私たちは住み込みの使用人として働くという名目で、出入りもしやすいですし。」

 それ、グレンドさんには言わないでほしい。使用人扱いとか王都が焼かれそう。

「城から門番だけは来てしまいますが、そこはお許しくださいね。」

「やっぱそういうの無いとだめなんだ?」

「城に住まないで済むように、そこまでハルドリック様が交渉しましたので。」

 どうやら、シュレインさんとアマンダさんが出かけてたのはこういうことだったらしい。

 珍しくついてこないなとは思っていたが、また二人に裏で迷惑かけていたようだ。


「あのさ、アマンダさんのお家って大丈夫?国から嫌がらせされてたりしない?」

 私を取り込んだと思われるのはアマンダさんちもそうだろう。

「大丈夫ですよ。補助金が出されているので。」

「え?そうなの?」

「父に聞いてびっくりしたのですが、その方が国とのつながりができて、我が家だけが独占するつもりがないことを示せると。」

 確かにそうかもしれない。

「それもあって、メリル様のポーションをもっと欲しがらなかったみたいです。ルート作りの為だけにしておけば、そこまでうるさく言われませんから。」

「結局面倒そうなことを押し付けてるみたいですみません。」

「大丈夫です。これもまたコネ作りになりますから。」

 言葉通りならしたたかにやってくれてるようでよかった。言葉通りなら……だが。


「あとさ、第二王子のことはどうなった?話したの?」

「両親には話しました。」

「!ど、どうだった?!」

「正式なものではないので、アルバーニ商会の人から婚約の打診をされているという話にしました。一応祝福はしてくれましたよ。」

 頬を赤らめてうつむきがちに言うアマンダさん。良かったねぇ。


「ちゃんと言わなくて大丈夫?」

「春に正式なものが来るそうです。その時の方がいいかと。」

「そっか。良かった。アマンダさん、幸せになってね。呼んでくれたらすっ飛んでいくから。」

「あの、私はこちらに住みますからね。」

「え?」

「ベリンダールとしても、聖女にかんでおきたいんだと思います。手紙にも、望むならメリル様といていいと。」

 一気にきな臭くなってきた。

「それでいいの?なんか利用してそうで嫌だなぁ。」

「そういうものです。その駆け引きで商人でいられるなら構いません。」

 愛ある結婚とかこの世界の貴族では珍しいのだろうから仕方ないが、私としては腑に落ちない。

 しかし、商人になるのが本当に自分の夢なのかと迷っていた面影はない。それならそれでいいのだ。

「まぁ、全力で応援するから。」

「はい!ありがとうございます!」

 アマンダさんの笑顔、絶対護る!



 そんなわけで、数日後には引っ越しになった。展開はやくない?資本金ありすぎなんだよなぁ。根っからの庶民たる私、困惑。

 そして、ベイダルさんとグレンドさんだが、兄龍の方をお菓子で陥落させて、使用人枠として登録することを了承してもらった。待遇はそのままだし、門番さんが変な事さえ言わなければ大丈夫だろう。


「あら、しばらく見ないと思っていたのに。」

「仕事なので。」

 シュレインさんは王都に帰ってからは朝に顔を出すくらいでずっと居なかったのだが、引っ越しには来ていた。

「門番やる感じ?」

「別です。」

 ですよねー。


 結局、庭付き一戸建てに暮らすことになった。

 とはいっても、ここは出入りするだけで、主に生活するのは私の家だ。空間をつなげたので、簡単に行き来できるのだ。



「こっちは落ち着くな。」

 私の家の方のソファに寝そべりながらマドレーヌを食べるベイダルさんがそうつぶやいた。完全に自分ち感覚だ。やめて欲しい。

「でも、ソファはあっちの方が良かった。」

 アマンダさんちの家具とうちの家具ではベクトルが違う。アマンダさんの家の方のが高級なのだ。座り心地が違うのは当たり前である。

「こちらはごちゃごちゃしているな。」

 ベイダルさんの横に座るグレンドさんが言った。ごちゃごちゃとは失敬な。

 結局あの後、グレンドさんもアマンダさんの家に御厄介になっていた。


「こっちは台所も見える生活空間ですからね。アマンダさんのところとは作りが違うんです。」

 とはいえ、この部屋も日本で考えたらめちゃくちゃ広いし高級なんだけどね。くそーお貴族様と比べよってからに!

「でも、こちらの方が便利なんですよ。こんなに素晴らしい機能性を持った部屋は、ここが世界で一番だと思います。」

 うっとりとしてアマンダさんが言う。お世辞でも何でもなく、科学力という名の結晶を模した魔道具たちを指しているのだろう。

 

 ディアはディードと一緒に出掛けている。絆でつながってから、今まで以上に仲良くなったようで、アマンダさんの家にもほとんどいなかった。

 お前のために働くとか言ってたので、シュレイン二号となってくっつかれるのではないかと思っていたが、いらぬ心配だったようだ。

 ここ最近はシュレインさんとも離れていたから、気楽でいい。

 王都の家との接続を切ったら、逃げれるな。と思っているのは内緒である。


「しばらくやることも無さそうだし、庭に畑でも作るかなー。いい?」

 出資者たるアマンダさんに確認をする。

「いいですけれど、今の時期からですか?」

「確かにこの時期だと種まきするものもそうないんだけど、空気を入れておきたいんだよね。土壌も確かめたいし。」

「どうぞお好きに使ってください。」

「わぁい。」

「では、道具を買いに行きましょう!」

 あ、アマンダさんの後ろに炎が見える……。



 想定よりは早く帰れた。王都では畑仕事なんてないので、扱う店が数件しか無かったのだ。

 結局、アマンダさんちから買ったし。


 翌日は朝から庭の大整備だ。

 とはいっても、売り家だった割に庭はきれいだった。雑草が伸びているわけでもなく、木々もそれなりに手入れがされていた。

 ただ、やはり花壇などには何も植わっていないので、空き家だったのか怪しいというわけではない。ちゃんとしたとこから買ったということなのだろう。


 庭は敷地の南側に大きくとられている。窓側に庭があるので当然だろう。

 遊歩道のような場所と花壇があって、きれいにすれば素敵な庭になりそうだ。

 だが、さっさと取っ払っていく。さよならこじゃれた庭。


 土を見ると、やはり花壇ならよくても畑としては物足りない土だった。

「山から土とってくるのがいいかなぁ。」

 王都は下水が完備されているので、自家製で堆肥を作るとかできない。まぁ、家族じゃない知り合いの糞尿を扱うのは気が引けるのでそれでいいが。

 なので、せめて広葉樹林の栄養豊富な土が欲しい。ゴブリンがいたあの森から拝借しよう。

 しかし、ちょっとのぞけば門番さんに見えてしまう。土の移動は夜中にこっそりやるしかない。

 今日は残念だが耕すところまではいかないようだ。


 そうやって数日かけて畑ができた。

 しかし、これで冬を越して、土の状態をもう一度見る。定着してくれればいいが、ダメになることもある。土は生き物。簡単に行かないものなのだ。

 まぁ、精霊がいるので、強制的に最強の状態を作ることも出来るんだけどね。それでは意味が無いのだ。やはり自分で作るのが楽しい。


 さぁて、何を植えようかなぁ。

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