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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
53/102

53.ディアの過去とアマンダさんの未来

 誤字脱字がないよう努めてまいりましたが、この度過去分の三点リーダーを5点で打っていたことに気が付きました。

 というか、諸事情により「……」を「・・・・・・」にコピペして直していたのですが、1点を含め忘れてたようです。

 過去分は直しませんが、この話から「……」に変更しますので、ご理解いただけると幸いです。

 ドラゴンの鶴の声……いや、アホウドリの鳴き声により、うやむやになったまま夕飯は終わり、我々はまた談話室に集まっていた。というか、ディアに呼び止められたのだ。


「で、話って?」

 また焼き菓子食ってる亜空間胃袋のドラゴンは無視して、ディアに聞く。

「これを貴女に。」

 そう言って、ディアはアマンダさんに封筒を渡した。

「え?私ですか?」

 アマンダさんがそう言って封筒を手に取ろうとしたのに、ディアは手を引っ込めた。

「ただ、渡す前に言っておきたいことがある。」

「え……。」

「皆にも聞いて欲しい。」

 ディアはそう言って、私とシュレインさんと、ハムスタードラゴンを見た。


「この国のことを全く知らないが、お前たちを見ているとわかる。ここはきっと平和なんだろう。だが、ベリンダールは違う。冬が厳しく、魔境に隣接しているから人々の心は荒みがちだ。」

 確かにオスカラートとベリンダールの雰囲気は全然違った。

「俺は孤児院で育った。だが、孤児院てのは表向きで、汚い仕事をさせるために子供を育ててるんだ。」

 え……。

「俺たち孤児はそれでもよかった。何せ外では冬を越せないからな。雪深い国では、人が簡単に死ぬんだ。」

 うあー。拾われても地獄、拾われなくても地獄じゃないか。

「俺は、その孤児院でタイドに会った。というか、その教会のトップがタイドなんだ。タイドは人の能力が見えるから、はじめから素質のある子どもだけを拾って育てていたんだよ。

 俺は運が良くて騎士になれた。だが、ほとんどの子供は暗殺者やスパイになって散らばっていった。今は皆がどうしてるかは全く分からない。」

 重すぎる……。


「それでその教会だが、タイドが騎士団にいるんだからわかるだろ?国が噛んでる。」

 あ……。

「ワイバーンの巣で起こったこともだ。団長が全てをかぶる形になったが、団長に一任していたとしても、国が全く知らなかったとは思えない。

 メリルが聖女じゃなかったり、ドラゴンが現れなかったりすれば、メリルを殺して何もなかったことにしたと思う。」

 そう思うのは当然だろうなぁ。

「俺は王族がどのような仕事をそれぞれに受け持ってるかは知らない。騎士団のことは一応第一王子の管轄だが、第二王子が本当に知らないかは分からない。」

 そう言って、ディアは再び封筒を差し出した。


「ただ、第二王子が国政に興味が無いのは本当だ。国にいるのはせいぜいが数か月。今年は冬に帰ってきたが、いつもは春まで他の国にいる。

 数年前までは国の産業にもかなり手を入れていたが、その時の評判は国よりも国民を大事にする王子だと言われていた。孤児の俺でも知ってるほどだ。」

「……。」

「個人がどんなに優れ、正義を持っても、あの国では正直それを実行することは難しい。貴女が思う正義は砕かれるかもしれないし、第二王子が護るかもしれない。

 しかし、それを見極めるだけの猶予がないようだし渡しておく。でも、あの国に嫁ぐということをよく考えて欲しい。」

「わかりました。ありがとうございます。」

 アマンダさんは、しっかりと封筒を受け取った。多分、あの封筒は第二王子からの手紙なんだろう。


「ディアはベリンダールが嫌いなの?」

 私が聞くと、ディアはしばらく考え込んだ。

「よくわからない。俺はあそこしか知らなかったから。孤児院で隣国の言葉や情勢は教わったが、国を出たのはこれが初めてだ。

 トウワを見て、外の世界はこんなにも色とりどりで美しく温かだと知って、戸惑ったさ。」

「うん。」

「ただ、俺はベリンダールのことも分かってない。俺が知ってるのは孤児院と騎士団だけだ。狭い世界しか見ていないのに、評価のしようもない。だが、会ってきたやつはほぼほぼ酷かったな。」

 捨て鉢に笑うディアが、とても悲しそうに見えてやりきれない。


「少なくとも、私はディアさんは誠実に私と向き合ってくださったのを知っています。荒んだ一面もあるかもしれませんが、全ての人がそうではないって、ディアさんが証明してくださいましたよ。」

 アマンダさんがそうニッコリと言った。

「私もディアが前向きに努力しているのを間近で見てきた。口は悪い部分もあるが、礼儀を通すことも出来るのを知っている。私は、ディアがどのような出自や育ちであろうと、立派な騎士だと思っているよ。」

 シュレインさんもそう言って、ディアの肩に手を置いた。


「買いかぶりすぎだ。俺はタイドがあぁなって、真っ先に自分がどうなるかを恐れた。俺が騎士でいれたのはタイドの後ろ盾があったのが大きいからな。

 俺は、騎士団では厄介者だ。型がない。血に汚れている。身分もない。俺の剣は汚いんだ。」

 ディアはそこまで言って、息を吐きだした。

「だから、一人ではやっていけない。お前たちについていって、逃げようとしたんだ。」

 そう言う顔が、笑っているのに泣いているようだった。

「武闘大会も、それで成績を出したらこっちで拾われるかと思った。だが、シュレインがこの国の騎士なら無理だ。

 一緒に稽古して分かった。信念のある剣の強さを。俺は生きるのに必死でここにいるだけで、何の信念もないんだ。俺ではこの国でも厄介者でしかないだろう。」

 ディアはそう言って目を閉じ、ソファに体を預けた。


「私は、よくわからない。平凡な村の平凡な家族に生まれて、ついこの春まではのんびり暮らしてたし。

 一応、聖女なのははじめから知ってた。自分がやらなくちゃいけないことがあるのも。

 でもね、信念なんて持ったことないよ?今だって、面倒くさいことはやりたくないもん。」

「……。」

「国に見つかって、城で夏まで暮らしたのね。でも、その間なーんもしなかった。

 私なら、色んな事が出来たと思うよ。人の役にも、国の役にも立つことができたと思う。

 学校にだって入れてくれたし、素敵な学園生活を送ることだって、もしかしたらできたかもしれない。

 何なら今頃王子と婚約してウハウハしてたかもしれない。

 でも、全部面倒だから逃げたんだわ。ディアなんかより、もっともっと信念なんて無いよ。」

「……。」

「でもさ、信念があろうがなかろうが、私は私で、私ができる事ってなんも変わらないし、それで偉い偉くないが決まったりもしないと思うんだ。ディアだってそうじゃないの?

 それに、今までやってきたことが無くなるわけじゃない。嫌な過去もあったと思うけど、ディードと過ごしたことは良い事だったんじゃないの?」

「……あぁ。」

「私はさ、賢いわけじゃないから、ディアが安心したり、自信を持ったりできるようなことは言えない。

 でも、ディアが強い事も、突入する時は真っ先に行くことも、私たちがワイバーンに攫われた時に魔法使いたちに文句言ってたのも知ってるから。

 過去がどうとか、信念がどうとかは知らないけど、悪い子じゃないことはわかってるし、そうじゃないって言われても、その考えは変わらないよ。それはアマンダさんもシュレインさんも同じなんだから。」

 そう言った私の言葉に、二人は頷いた。


「ディアはまだ若いんだし、これから自分のなりたいようになれるよ。」

「もう十分にちゃんとしてると思います!」

「私はディアの剣技が羨ましい。」

 そう口々に言う私たちに、弱々しく笑うディア。そして、その空気をぶっちぎる声が響いた。


「なぁ、このお菓子もっとないの?」

 このアホドラゴおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおン!!!!!!!!



 翌日、私はアマンダさんの部屋を訪ねた。

「昨日の封筒、王子から?」

 ド直球に聞いてみる。

「はい。婚約の打診の手紙でした。正式には後に届くそうです。」

 口説く手紙くらいかと思ったが、あの王子やりおる。

「受けるの?」

「……今まで、色んなことを考えてきました。商人として頑張ろうと思って、でもなれないとわかって。何度も諦めてはそれでもどこかで期待していたんです。

 正直、父や弟を恨んだこともありました。そして、そんな自分が嫌でした。」

 アマンダさんはとても悲しそうにそう言う。


「そもそも、本当に商人になることが夢なのか?他に何かないのか?そうやって考えても、何もわからなかった。

 幼い頃に商人になるって父と話したあの時、父の夢を刷り込まれただけで、自分の夢だというのは錯覚なのかもしれない。そう思うと、商人にならなかったら、私には何もないのではないかと……。

 ただ、それを認めたくないだけで、商人という夢だと信じている物に縋り付いてるんじゃないかと考えたら、すごく怖くて……。」

 アマンダさんの目から涙が落ちる。


「私は魔法が使えるわけではないですし、刺繍が上手かったり淑女教育が行き届いていたり……。そういった貴族の令嬢として誇れるものが何もありません。だから、殿下が本当の私を知ったら、絶対に呆れると思います。選んだのを失敗したと思われるでしょう。」

「アマンダさんて、何の取り柄もないみたいに思ってるみたいだけど、才能の塊だと思うの。だって、何か国語しゃべれるの?」

「え……あぁ、十か国くらいは。」

「あのねー、それで何もないってあり得ないから!っつか、十か国語もしゃべれんの?本当に?!」

「あ、でもそれは、通訳を探すのが無理そうな弱小国も併せてなので。大きな国で言ったら五か国です。」

 語学つよつよにもほどがある。これが特技だと思ってないの逆に怖い。

「普通はね、そんな話せないと思うよ?

 それに、買い物に行った時とか、ゲーベリオンに行った時とか。全部の店まわって値段調査してみたいのやってたじゃない?確かにそういうことする人は他にもいると思うよ?

 でも、限度があるんだよ。アマンダさんは普通の人のソレの遥か数倍の量見てまわってるし、値段調査も細かくつけてるし、万が一夢ってのが思い込みだったとしてもだよ?才能は絶対にあるよ!」

「そうでしょうか?」

「そうだよ!っていうか、心配はそっちなの?ディアの話の方は良いの?」

「正直、商人をやっていると、胆力がないとやっていけないと言いますか、争いや嘘なんて身近にあるものですから。まぁ、メリル様とハルドリック様が危害を加えられそうだったのに加担していたらさすがに無理ですけれど。

 それはもう本人と話すしかないですし。」


「……ふっ。はは。あはははは!」

「え?何ですか?え??」

「あのねー、そこまで肝が据わってるんだもん。大丈夫。絶対やってけるから!あはは。」

 自分では見えないことって、本当にたくさんあるんだと思った。

「まぁ、何か嫌なことがあったら遠慮なく言って。アマンダさんの為なら国ごとぶっ潰すからさ!」

「またそんなこと言って。」

 困ったようにそう言いつつも、少ししたらニッコリといつものように笑ってくれた。私はこの笑顔を、超級過激派厄介ファンとして、護っていきたいと思う。

 にしても、ディアは自分の暗い過去を話し損だよなぁ。ナムー。

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