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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
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49.ベイダルさんの考察

 翌日、騎士二人はディアンガさんに剣を習うことに。私とアマンダさんと龍兄弟は美代さんに作物や調味料を見せてもらうことになった。

「今日は主様に代わりまして、皆様を案内させていただきます。」

 美代さんは紺色の長い髪を一つに結び、黒い瞳というディアンガさんとおそろいカラーである。


「ディアンガさんと同じ色の髪と瞳だよね。ディアンガさんも初めからあのカラーなの?」

 そっとベイダルさんに聞くと、少し考える。

「瞳は俺たちと同じだ。皆そうだから。髪の色は元からあんな感じだな。言われるまで気が付かなかったけど、色が変わってるな。」

 なんと、ディアンガさんの方が寄せているっぽい!はぁ、尊い。


「そういえば美代さんて、オスカラート語話せるんですね。」

 私が聞くと、美代さんは首を振った。

「いえ、私はここの言葉を話していますが?」

 なんですと?!

「え?!もしかして、そんな魔法があるんですか?」

「申し訳ありませんが、私はわからないです。」

 美代さんは困ったように、頬に手を当てる。


「それは多分念話だ。」

 私の疑問に、グレンドさんが答えてくれた。

「念話?」

「私たちはそもそも、ドラゴン語しか話さない。しかし、人間はそれを知るわけがない。だから、話そうと思えば相手に合わせて言葉が勝手に変わるようになっている。魔法を使っているつもりはないが、気が付いた時にはそれができるようになっていた。」

 私も世界の言語を習得しているように、龍兄弟もそうなのかと思ったが、どうやらまたちょっとパターンが違うようだ。

 というか、ベイダルさんとドラゴン語で話したことがあるが、あれは私がドラゴン語が分かるから普通に聞こえていただけということなのだろうか?

 そういえば、皆に話してってお願いしたら、変な言い回しで了解してくれた気がしなくもない。よくわからないが、多分、龍たちもわからないのだろう。

「でも、なんで美代さんが?」

「さぁ。ディアンガはそれを他者にも能力として付与できるのかもしれない。」

「二人はできないの?」

「私は知らん。兄さんは?」

「知んねー。」

「そっかー。」

 残念ではある。何ならアマンダさんにつけて欲しかったのだが、そう簡単にはいかないようだ。

 でも、ディアンガさんに聞いたらできるかもしれないので、できるならやってもらおう。



 その後、美代さんが貯蔵室を見せてくれた。そこには懐かしの食材や調味料があった。

 そしてまた思う。やはりこの世界は現代日本の影響を受けている。

 作物は品種改良をされたであろう日本で見ていたそのものだ。

「あーここに住みたい。むしろ住む。もうここに永住する!」

 私は両手にさつまいもを持ちながらそうつぶやいた。

「その芋はそんなに?!」

 アマンダさんは芋に執着していると思っているのだろうが、目の前にある食材たちは全てが懐かしくも飢えていたものだ。

 大根おろしをベリンダールで食べたとはいえ、やはりそれは辛み大根であり、青首大根ではないのだ。

 このさつまいもだって、品種の違う二種類の芋だったりする。右手は安納芋っぽいし、左手のは紅あずまか紅はるかとかそこら辺のやつだ。焼き芋食べたい!

「芋もそうなんだけどね。栗やカボチャなんかも日本で出回ってたやつだもん!このお家の子になる!」

「え?にほ?え??」

 あ、つい口走ってしまった。まぁ良いだろう。


「私、ここのご飯の方が口に合うんだ。それだけだけど、それってすごく大切だと思うんだ。毎日お米食べたい。」

「メリル様はここの食材がお好きなのですね。」

 美代さんが本当に嬉しそうに言う。

「ハイ!昨日の里芋といかの煮物本当においしかったです!」

 干し魚に煮物にお漬物。そして白米とお味噌汁。懐かしの味だったので、本当においしかった。

「お口に合ったようで良かったです。皆さんの住む場所とはかなり違うと聞いていましたので不安でしたから、そう言っていただけたら作った甲斐があります。

 それに、お米は主様が一番注力した作物です。褒めていただけるのは本当に嬉しいです。」

 美代さんが頬を染めながらニコニコと言うので、私はほんわりとした。

「興味がおありでしたら、作り方も教えますが。」

「えっ?!いいんですか?!是非お願いします!」

 これには私よりもアマンダさんが食いついて先に返事をしたとこが、さすがである。



 あっという間に時間は過ぎ、お昼になった。

 料理や配膳を手伝って席に着くと、抜け殻のようになっている騎士二人がじっと座っていた。

「どうしたの?大丈夫?」

 私が恐る恐る声をかけると、二人は人形のようにギギギとこちらを向いた。

「やばい。強い。」

 ディアが絞り出すその言葉と、遠い目になったシュレインさんを見て、ディアンガさんがかなりしごいたのだとわかる。

「そっか。じゃぁ、疲れただろうしご飯食べたら帰ろっか。」

 私がそう言うと、二人は首を振った。ええ?

 その様子を見て、ディアンガさんが二人に声をかけた。

「今日はもう終わりだ。長く鍛錬したところで強くはなれない。休息も必要だ。」

 その言葉に、二人がしょんぼりとする。


「皆帰るのなら、お前たちだけでも泊まっていくか?帰りは私が送ろう。」

 二人があまりにもしょんぼりしたので、ディアンガさんがそう提案してくれた。すると、シュレインさんがこちらを向いて眉をひそめたと思ったらハの字にし、目をつむったと思ったら決心したように口を開く。

「聖女殿、ここに残ってもよろしいですか?」

 真面目な顔でまっすぐと見つめてくるシュレインさんに、私は笑ってしまった。

「もちろん!強くなってきなよ。あ、ちゃんと迎えに来るから。」

「ありがとうございます。」

 私から離れようとしなかったシュレインさん。瞬時に願い出ることはなかったけれど、それでも自分のために動いた。本当に変わりつつあるんだと思うと嬉しかった。


「いつくらいまで置いて行ってもいいですか?」

 ディアンガさんに聞いてみる。

「好きなだけいい。その間は労働もしてもらうが。丁度稲を刈る時期が来る。」

「ありがとうございます!」

「もちろん働かせていただきます。」

 ディアンガさんが私に返事をしたのに、それに対して騎士二人が前のめりで返答するので苦笑した。ディアンガさんは何をしたんだろう。すっかり二人が虜になっている。


「俺たちも残るわ。な?」

「兄さんがそう言うなら。」

 急にベイダルさんが言うのでびっくりしたが、別にベイダルさんは我々の仲間であるわけでもないので、止める理由もない。

「わかった。ドラゴン同士で楽しんでね。」

「でさ、ディードを連れてきてくんね?」

「ふぁっ?」

 話が終わったと思っていたのに、意外な言葉が続いたので、変な声が出てしまった。

 ディアの方を見ても、知らないと首を振る。


「え?でも、いいの?」

 ベイダルさんとディアンガさんとディアを順繰りに見る。

「大丈夫だよな?」

「ディードとは?」

 ディアンガさんに満面の笑みで言うベイダルさんだが、ディアンガさんはそっけない。でも、そりゃそうだ。

「あ、ワイバーンだよ。そこの子供の。」

 そう言われて指をさされるディアも困惑顔だ。っつか、指をさすな指を。

「あぁ、お前の近くに住むあれか。いいが、さすがに村には置けない。西に山があるから、そこでもいいか?」

「いいよ。んじゃ、よろしくな。」

「ええ?あー・・・・・・わかった。」

 勝手に決めていく龍たちに困惑しつつも、ディアの方を見ると頷いたので連れてくることにした。

 なんだかしばらく、ゆっくりできそうである。


「あ、すみません一つ聞きたいんですが、よろしいですか?」

 ディアンガさんに尋ねると、頷いてくれた。

「美代さんが念話できるのは、ディアンガさんが美代さんに魔法をかけたりしているんですか?」

 私の問いに、ディアンガさんはため息をついた。

「いや、そういうわけではない。歳をとらなくなったように、気がついたらこうなっていた。」

 うーん。原因不明かぁ。

「それなんだけど、俺に思うとこがあんだよね。」

 意外にもベイダルさんがそう言う。アホの子だけど大丈夫なの?


「どんなこと?」

「ディアンガって、人里におりてからその間、何食べてた?」

「初めは何も食べていなかったがな。旅をするときにそれだと怪しまれるからと、人と同じ物を食べるようになった。」

「じゃぁ、ゲボ石って最後に吐いたのいつ?」

「それよりも前だな。」

 その答えに、ベイダルさんはご満悦そうに頷いた。

「多分それだ。お前の魔力、ゲボ石じゃなくてその女に吸われてる。」

「ええ?!でも、美代さんからは魔力の流れみたいの感じないよ?!」

 私が驚いてそういうと、ベイダルさんは小ばかにしたような顔をする。

「お前もゲボ石見ただろ?魔力は持ってるが、漏れ出ない。」

 そういやそうだった。

「まだ生きてるとか変だと思ってたけど、多分グレンドんとこの眷属と同じようになってるんじゃね?」

「眷属と同じってどういうこと?」

 龍たちだけで話が完結しそうなので聞いてみた。

「グレンドの眷属は、ゲボ石にグレンドが魔力を更に入れて作り出してるんだ。グレンドと意思疎通もできるし、絶対服従だ。その女もそれに近い状態どころか、ゲボ石丸々一塊分は魔力吸ってるかもしんねー。」

「それはあまりよくないな。」

 ベイダルさんの言葉に、グレンドさんがそうつぶやいた。見ると、ディアンガさんも険しい表情で美代さんを見ている。


「何か問題があるの?」

 私が恐る恐る聞くと、ベイダルさんが珍しく眉をひそめた。

「まぁ、すでに人外になってるのはわかるだろ?お前も強いが、お前以上に強くなってるかもしれない。」

 は?

「眷属は普通、ゲボ石の棘一つ分だ。でも、五百年だとすれば、丸々一塊位を吸収してるだろ。」

 あ、それはやばそう。だって、クレアライトってドリアンみたいなもので、水晶に見える棘がびっちりくっついてるのだ。

 あれ一個が眷属のドラゴン一匹分なら、何百匹分が美代さんってことになる。

「俺たちは食べないでも生きていけるが魔物は食べるとも、魔物を食うと消化に悪いとも言ったろ?それって結局ゲボ石作るためってのも若干だけどあるんだよな。俺たちって、存在自体がかなり凄いし、魔力がでかすぎて、近くにいるとやばい物でもあるんだよなぁ。」

 まて、最後の方は聞いてないぞ?!


「まって?じゃぁ、今も私たちもやばいの?」

「いや、だから、普通はゲボ石に行くんだって。そんなしょっちゅう食べる必要はないし、普通なら食ってなくたって徐々にではあるけどゲボ石ができるはずなんだ。

 だけど、ディアンガはずっと食ってなかった上に同じ人間と暮らしたから、ゲボ石に行くはずのがそっちに流れたんだろ。

 なんかきっかけとかあったんじゃね?覚えてる?」

 最後はディアンガさんに聞くが、ディアンガさんは首を振る。

「まぁ、俺らだって俺らがどうしたら何が起こるなんて全部知ってるわけじゃないからな。下手したらお前たちもこいつと同じようなことになるかもしれないけど、まぁ、きっと大丈夫だろ。」

 恐ろしいことを言うドラゴンに、言いえぬ不信感と恐怖がわいてきたが、まぁ、なるようにしかならないので仕方ない。

 人間組はちらりと視線を交わし、それぞれにため息をついたのだった。

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