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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
38/102

38.クレアライト

 私たちは結局、城に連れてこられた。

 そして、昨日と同じ部屋で待っていると、第二王子と騎士団三人組が入ってきた。

「これがクレアライトだよ。」

 そう言って、第二王子は布に包まれた結晶を見せてくれた。

 そこには真っ黒な水晶があった。しかし、これって本物?魔力感じないけど?


「これが・・・・・・始めて見ました。」

「そうだね。オスカラートには二個ほど売ったかな。」

 たった二個?!そう思ったのが分かったのか、第二王子はくすりと笑った。

「この結晶はとても貴重でね。ほとんどとれないんだ。で、自国で使うもの以外で外に出せるとなると、そう多くはない。一番多く出したのが、さっき言ってたジュディアル帝国かな。

 だが、それでも五個ほどだよ。なぜなら、これは本当に多くの魔力を持っているからね。危ないんだ。

 君たちはゲーベリオンに行っただろ?あそこの核はね、この石なんだよ。」

「殿下!」

 少年が鋭い声を上げる。言っちゃいけないことなんだろう。

 しかし、第二王子は手を軽く振っただけだった。

 それにしても、殿下と呼んだということは、本当に第二王子なんだろうし、それを見破ったこともばれているのだ。


「でも、それ本物?全然魔力感じないけど。」

 私の言葉に第二王子は眉をハの字にした。

「そうなんだ。だから、これを魔力をたどって探すことができない。しかも、ある場所が点々としている。だからこそ貴重なんだ。

 だが、これが本物だっていうのは、私の命をかけてもいいよ。」

 そう大きく言い切るのも怪しいが、判断しようがないので、本物あるいは本物に限りなく近い偽物なのだろう。

 とすれば、この石を探せばいいのだな。ウヒヒ。


「クレアライトの魔力は莫大だ。だからこそ、何百年も昔の術が残っている。この石は、そんなものを生む石だ。だから、外に出すことがそもそもできないんだよ。」

「そうだったのですね。そう聞けば、私も諦められます。」

 アマンダさんは悲しそうに微笑んだ。

「すまない。でも、それ以外にもこの国の良さを知ってもらいたい。その、昨日は冗談のように言ってしまたが、本当に私とのことを考えてもらえないだろうか?」

「殿下!」

 またも少年の鋭い声が飛んでくる。しかし、聞こえていないように、第二王子は真剣にアマンダさんを見つめている。

「な、なぜわたくしなのですか?身分が違いすぎます・・・・・・。」

 本気で言っているとわかって、アマンダさんは顔を真っ赤にさせながら、絞り出すように聞いた。


「昨日の偽名だけどね、本当に私の商会を作るつもりなんだよ。」

「え。」

「私にはとても優秀な兄がいるから、この国の国政に参加するつもりがないんだ。それなら、私は国の為に諸外国と貿易をしようと思ってね。そのために、ここ数年は色々と準備をしてきたんだ。

 でも、パートナーだけは見つけられなくてね。」

 そこまで言ってにっこりと笑う第二王子。皆まで言わない。それが王子流。という感じである。何を見せられているのだろう・・・・・・。

「し、しかし、わたくしは思っていただいているほど優秀ではありません。」

「私もね、人を見る目に自信があるんだ。」

 第二王子はそう言うと、ウィンクをした。

 その見る目は間違いないと言いたいが、この人、なんか軽いんだよなぁ。

 若干心配になりながらも、のけぞっているアマンダさんを、ほほえましく眺めるのだった。


 まぁ、泣かせるようだったら国ごと滅ぼそう。嫁姑問題も発生するなら姑をぶち転がせばいいだけだし。

 私の黒い笑いに気が付いたシュレインさんが半目になっているが、なんでホントいっつもその顔なんだい君は!


 

「んで、何がどうしてこうなってるのかね?」

「そりゃ、ワイバーンの卵を取りに行くからだろ。」

 私とシュレインさんは三人組に連れられ、騎士団の訓練所近くへと来ていた。


「じゃぁ、これが支給される装備と荷物だ。」

「あ、杖がある。」

 指し示された荷物には、服や革鎧の他に、杖があった。

「お前、何も持っていないから、一応な。」

 確かに、他の人は魔法を使う時に杖を使っている。でも、おじーちゃん先生や、三人組のおっさんのように、杖を持っていない人もちらほらいるのだ。

 まぁ、多分だが、それはかなり高位の魔法使いということなのはわかる。

 三人組のおねーさんも騎士団だし相当強いのだろうが、背丈ほどの杖を持っているので、杖は本来必要なものなのだろう。

「コレくれるの?」

「貸すだけだよ。まぁ、この旅の中でなら、壊れても責任は問われないから安心しろ。」

 あーヤダヤダ。壊れるようなことになりかねないと言っているようなものだ。


 私は渡された杖を持ってみる。

 木の柄の先に魔石がくっついている、いかにもな形なのだが、その重心具合から、なんとなく木製のバットのように感じ、つい素振りをしてしまった。

「おい、お前杖の使い方も知らないのかよ!そんな風に殴る武器じゃないからな?!」

 少年が呆れたように言うが、そんなん言われても振りたくなったもんは仕方がないじゃないか。

 しかし、大人しく素振りを止めて、私は支給品を受け取った。

 横では同じようにシュレインさんが荷物を受け取っている。さすがに彼用の剣は出されていなかった。

「お前たちが来てくれたから、月曜には出発できる。日曜の夕方に迎えに行くから、日曜は城に泊まれるぞ。」

 いかにもよかったな。というように少年が背中をたたいてきた。

「宿は決まっているのか?」

「うん。」

 頷いた私にしか聞こえない声で、少年はささやいた。

「ファムに気をつけろ。絶対に護衛の男と離れるな。」

 内容が内容だけに、聞き返さずに無反応で通す。

「じゃぁ、日曜に。」

 そう言って、少年は去っていった。



「ってことがあったんですが。」

 訓練所から移動しながらシュレインさんにこっそり伝えると、少し考え込んでいる。

「殿下が言ってたことにつながったみたいですね。」

「ファムって誰?」

「確か、魔法使いの女性をそのように呼んでいた気がしますが。わからずに聞いていたんですか?」

「むしろファムって覚えてただけ褒めて欲しいよ!」

「まぁ、確かに。」

 私が言っておいてなんだけど、納得するな!

「でもまぁ、特に離れたりしないだろうし、離れたところで別に危なくないからな。」

「そうですが、身辺にはお気を付けください。何をしてくるかわかりませんし。

 というか、行くのを止めた方が良くないですか?」

「それなんだけどさ、私やりたいことあるんだよね。アマンダさんと一緒の時に説明した方がいいし、宿ではなそっか。」

 私の言葉に、シュレインさんは頷いた。



「なんだか第二王子といい感じになりそうだねぇ。」

 宿屋に着いたので、ミーティングと称したおやつタイムである。

 あの後、アマンダさんと合流したら、第二王子がめっちゃ口説いてる最中だったので、私とシュレインさんは回れ右したのだ。それをアマンダさんが気が付いて、助けてと言ってたけども。

「あの、本当にそう思われます?」

 アマンダさんがおずおずと聞いてきた。

「え?何か裏がありそうなの?」

「いえ、そうではなくて。むしろ、本当なのかと思えて。でも、なんでなのかが本当にわからなくて。」

「え?だって、アマンダさん最高じゃん?王子の見る目は間違ってないよ?」

「えっ、あっ・・・・・・ありがとうございます。」

 アマンダさんの顔が真っ赤である。チョロイ。

「でも、うちは子爵ですし、隣国とはいえ王族の方だなんて無理です!」

「まぁ、その気持ちはわかるわ。だって、私も王子と婚約させられそうになってぶちぎれてここにいるわけだし。

 行儀も何もないし、面倒くさいし、国を背負って生きてくなんて責任持ちたくもないもんね。」

 ボロカスに言ってしまったが、本当にその通りだから仕方がない。

「え、あ、まぁ、そうですね。うん。」

 若干歯に何か挟まってそうな感じの返事だけど、まぁ良い。


「昨日も聞いたけどさ、あの人が第二王子じゃなくて、商人だったらどうなの?

 私はさ、王子が王子じゃなくてもまっぴらごめんだったわけ。でも、アマンダさんは若干揺れてるじゃん?

 それが王子だから嫌だって意味でなら、王子としてじゃなくて一人の男性としてみて、お付き合いしたいかしたくないかなんじゃない?」

 この世界って、お付き合い=結婚な感じだから、そうも割り切れないんだろうけどね。

「うぅ・・・・・・。」

「全然知らない商売の手伝いもさせてくれない男と結婚するか、王子という十字架を背負った商売やらせてくれるおにーさんの二択だったら、私はまぁ・・・・・・。やっぱどっちもけるわ。あはは。」

 私の他人事すぎる笑いに、二人共でかいため息をついた。まぁ、そうよね。


「とにかく、アマンダさんがどうするかはアマンダさんが決めるべきだと思う。

 アマンダさんが結婚しなくても、世界は回るんだし、親の言うことなんて聞きたいことだけ聞いとけばいいんじゃないの?

 刺繍の先生も言ってたよ。逃げじゃない。次へのステップだって。」

 そう言うと、アマンダさんは困った顔をした。

「私は割と自由に生きたように思っていましたが、聖女様を見ていると、狭い枠にはまっていたと感じます。

 自分の人生ですもんね。私ももっと素直に色々見てみます。」

 うんうん。そうして欲しい。


「そういえば、城で話していたやりたい事とは何だったんですか?」

 シュレインさんの問いに、そんな話をしていたのを思い出した。

「あ、そうだ。あのね、クレアライトのことなんだけど。」

 その切り出しに、アマンダさんの顔が一瞬で切り替わる。

「鉱脈は無いんだって。」

「え?」

「は?」

 私の発言に、二人がぽかんと口を開けた。

「えっと、私は聖女なので、精霊と話せるのね。それで、クレアライトの鉱脈を探してってお願いしたら、それは無いよって言われて。あの石、ドラゴンのタンなんだって。」

 ちなみに、あれは本物だったらしい。魔力を感じなかったけど、そういうこともあるようだ。

「え?すみません。意味が分かりません。たん?たんって・・・・・・えっと、たん?????」

「ペってする痰。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 うん、その反応分かるよ。

「でね、じゃぁ、その痰はどっかにあるか聞いたら、まぁ、国が管轄してるワイバーンの山の先にいくつかあるっぽいんだよね。」

「はぁ。」

 なんかもうアマンダさんが魂が抜けたみたいになっている。まぁ、そりゃそうだよね。

「だからさ、紛れて拾いに行こうかなーって思うから、ワイバーンとこ行こうよ。っていうお誘いだったんだけど・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「え?ダメなら飛んで拾いに行った方がいい?」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 二人の時が止まっている。うん、まぁ、そうだよね!

 そんなわけで、我々はドラゴンの吐いた痰を拾いに行くことになったのであった。字面が汚い!!


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