34.招集
私たちはギルドに戻ってきた。最奥の部屋を調べていたのもあり、夕方を過ぎるどころか夜もいい感じに回ってしまった。
今、私にはべそっかきのアマンダさんが張り付いている。
帰りが遅いので、心配してギルドまでやってきて、ギルドの皆と待っていたらしい。
ギルドに着いたとたん、弾丸のようなアマンダさんが飛びついてきたので、肉体強化魔法のかかった私でもよろめいてしまった。
「すまなかった。驕りだ。食ってくれ。」
ギルドの受付横のスペースは、即席の宴会場になっている。
私たち三人と、騎士団の三人もギルド民と混ざって、夕飯をごちそうになることになった。
「やったー!タダ飯だ!」
目の前の肉!肉!!肉!!!みたいな料理を適当に取って頬張る。無料のご飯はなんでもうまいのである。あーくそ、白米が欲しい!
「おい、お前たち。」
満腹になり、まったりしていたら少年が声をかけてきた。
「なんです?」
「王都に来い。」
単刀直入である。
「え?あ、え?」
「お前たちに話がある。」
「ここじゃダメなんです?」
「ダメだ。」
わがままー。
「えー、おねーちゃんどうする?」
「え?あ、別にどっちでも?」
「もう魔道具いいの?」
「あらかた見たと思いま・・・・・・思う。」
言いなおすのかわいいか。シュレインさんもそれを聞いて、ふっと息を吐いたので、笑ったな?
「ギルドマスター!お金!お金ちょうだーい!」
「あ?」
「なんかこの人たちが来いっていうから、私たち王都に行くの。だから、お給金!」
「え!待て、明後日になる!いや、明日の夕方に渡すから、それで勘弁してくれ!」
「いくらだ?」
少年が聞いてくる。
「それを計算するんだろー?!」
ギルドマスターが悲鳴を上げる。その肩にサブマスターが手を置く。どうも、事務手続き上ギルマスが何か頑張ることになるのだろう。
まぁ、現地に行った人にしか判断できないことも多いだろうしな。
「ざっくりでいい、その倍払えば誤差なんていいだろ?明日の朝に北門に来い。いいな?」
そう言って、少年は返事も待たずに、今度はギルドマスターのところに行く。ざっくりな金額を今ださせるのだろう。なーむー。
「なんか稼ぎが倍になるみたいだね。ラッキー。」
「そんな軽くていいのですか?というか、受け取ったら後々面倒なことになりませんかね?」
「難癖付けてきたらぶちのめせばいいでしょ。」
「そういう解決方法は最後に取っておいてくださいね。」
クソデカため息をつきつつ、眉間のしわをもみほぐしているシュレインさん。久しぶりに見たので、なんとなく嬉しくなるのだった。
朝、北門へ来ると門の外に三人組がいた。そして・・・・・・。
「ワイバーンだ!!」
私はちょっと距離を開けて止まった馬車から飛び出て、ワイバーンの方にかけていくが、少年に止められた。
「アホ。食われるぞ。」
「ええええええええ!ヤダヤダ触らせて!」
「お前んとこはどんな教育してんだ。」
私が両手を伸ばしてワイバーンに触ろうとするのを止めつつ、少年は後から追ってきたシュレインさんに呆れたように言う。
「すみません。学校すらまともにいかず・・・・・・。」
おい、バラすな。
「まぁ、お前くらい強いと馬鹿らしいのはしょうがないか。」
そういうと、少年は私を小脇に抱えた。
「へ?」
シュレインさんが動くが、少年が手を上げる。
「攫わないよ。どうせ無駄だろ。」
そう言われ、シュレインさんも止まる。納得すんな。
「ほら、ディード。変な奴だが、ちょっと触らせてやってくれ。」
そうワイバーンに話しかけ、私を両手でその顔に近づけるように持ち上げる。どう考えてもエサやりなんですけど。
ワイバーンが私の匂いをクンクンとかぐ。犬のような全力ではなく、猫のような警戒しつつもかぐ感じだ。
息が当たってくすぐったく、ちょっと身じろぎするとスッと引っ込む感じ。
その内、満足したのか、顔を離した。
「首の上側をなでろ。ここら辺。」
少年が私を降ろし、ワイバーンの触っていい場所を指をさすので、そこに手を伸ばす。
そっと触っても、ワイバーンは身じろぎ一つしない。なので、私は小さくなでてみた。
大きなうろこはすべすべで、思ったよりも温かい。
「わー、いいなーいいなー。これに乗って空を飛ぶんでしょ?」
「あぁ。」
「速い?」
「あぁ。」
「頂戴。」
「アホか。」
あぁ。としか言わないからつい承諾してくれるかと思ったけどダメだった。後二回くらい言わせてからだったら成功したかもしれない。
「王都へ行ってから、お前がちゃんと言うこと聞くなら乗せてやる。」
そう言いながらまた私を抱え、ワイバーンから離した。わたしゃ猫かなんかなのかね?
「王都の場所はわかるか?」
「えぇ。」
「なら、これを渡しておく。外門で見せてくれ。城に案内するように言っておく。」
そう言って、シュレインさんに何かを渡した。
「後、こっちはギルドからの給金だ。マスターから渡された。やはり正確ではないそうだから、それと同額を城に来たら渡す。」
少年が視線を送ると、おねーさんがお給料の袋を渡してくれる。
「悪いがここで失礼する。王都にちゃんと来いよ。」
そう言って、三人組はワイバーンに乗ると、砂煙を上げて飛び立った。
「わー速い!」
あっという間に見えなくなったが、しばらくそちらを見つめていた。
「まぁ、なんかよくわからないけど、王都に行こうか。」
「はい。」
「でも、よくこの距離まで大人しく来てくれたねー。偉いなー。」
私はうちの馬たちをなでた。うちの子たちもかわいいのだ。
「訓練してありますからね。馬車があるので控えめにはしましたが、もっと近くまで行けると思います。」
私とは馬車に乗り込む。中にはアマンダさんがいる。ワイバーンが怖くて外に出なかったのだ。
アマンダさんにも怖いものがあるとは・・・・・・。
「訓練て、あっちの国にもワイバーンいるの?」
「同種ではないですが、この前話したドラゴンの眷属があのくらいの大きさですからね。」
「そっちは乗れないの?」
「無理です。グレンドの命令しか聞かないですから。」
神話に出てくるっていう竜のことか。まぁ、眷属っていうくらいだから、そりゃそうだろう。
「乗れそうなワイバーンはいないんですか?」
「いませんね。」
もうそこで後れをとっているのだな。まぁ、あの国は何つーか、平和そうだったからな。
「聖女様はワイバーンがお好きなんですね。私は怖いです。」
アマンダさんが身震いをして言う。
「かわいかったですよー!あったかくてすべすべでしたし。」
「私、昔にシーサーペントに会ったことがあって、それから蛇とかそういうのが苦手になったんです。」
「しーさーぺんと?」
「海にいるでかい蛇です。商船に乗ってる時に遭遇してしまって、危うく死にかけました。」
結構修羅場をくぐってきているようだ。
「そういえば、海にもドラゴンがいるんですよ。」
「そうなの?」
「はい。海竜ルーシルという白くてきれいな竜らしいですが、きっとシーサーペントのでっかいやつってことですよね。うー怖い。」
ドラゴンにもいつか会うことがあるんだろうか?どうせなら、ワイバーンよりもドラゴンに乗りたいものだ。
王都への旅は順調だった。天候に恵まれたのもあるし、何より季節が良かった。
この国は北方に位置するだけあり、冬が厳しいという。
今は夏の終わりだ。王都に着くころに秋が来る。そして、一瞬で冬になるそうだ。
確かに、もうすでに朝晩は肌寒いのだ。
「春が来るまではベリンダールで過ごすことになりそうですね。」
アマンダさんがつぶやいた。
「そんなに凄いの?」
「そうですね。専用の乗り物に乗らないと移動もままなりませんから。」
「まぁ、いざとなったら転移で帰ろうか。」
「それも致し方ないかもしれません。ただ、せっかくなので王都で色々と見て周りたいです。
そのために、どこかに部屋を借りてもいいかもしれませんね。」
せっかくなので、クレアライトの輸入を実現させたい。そのためには時間も必要だろうし、これでよかったのかもしれない。
そしてそんな旅路が二週間。我々はようやく王都へ着いた。はぁ、長かったー。
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