33.ゲーベリオンの地下迷宮
深層の攻略もサクサクと進んで行く。だが、本当に広い。
どうも、ここが本坑道らしく、横道もかなりある。
そして、戦闘がひっきりなしに起きているのだ。
それでも、三人組は休むことなく進んでいく。
しかし、横道が未探索なので、後ろからアンデッドがやってくるようになったので、私たちもそこそこ戦うことになる。
そうなると、実力の差が顕著になってくる。二組に間ができてしまうのだ。
さすがに横道がある場所で止まってくれるが、少年は若干イラついてきている。
それもそうだろう。あっちは実質二人で戦ってるのに、こちらは四人なのだ。そう考えると、騎士団は本当に強いのだろう。
どうにかこうにか追いつきつつ、もう一度休憩に入る。
ここで三人組も含め、皆がポーションを飲んだ。渡したのは疲労回復のポーションなので、サブマスとおねーさんに魔力の残量を聞く。
「私はきついです。」
サブマスがそういうので、別のポーションを渡す。
「これ、魔力回復のポーションです。戦闘は頼ってしまってすみません。」
「いいんですか?ありがたい!」
サブマスはポーションを受け取ると、一気に飲み干した。
「え、あ、凄い!これも効き目高いですね!」
「うっふっふー。一流の調合師が作ってますからねー。」
私だが。
そのやり取りを見て、おねーさんもこっちへやってきた。
「私もいただいてよろしいですか?」
「もちろんです。」
おねーさんにポーションを渡すと、すぐには飲まず、二人の方へ帰っていった。
私も弱いふりをしないといけないので、ポーションを飲む。うん、味の改良が必要だな!
「もうすぐ部屋に着く。お前たちの持ってる聖水とやらはそろそろ使った方がいいんじゃないか?」
少年がそういうので、シュレインさんを見た。
「二人でいっぺんに使っても仕方がありませんし、私が先に使います。」
シュレインさんはそう言って、聖水を剣に振りまいた。ちゃんと光精霊の加護が付与されたようなので、安心した。ぶっつけ本番且つなんとなくで作ったからね!それでもできちゃうなんて、私天才!
と、自画自賛タイムを堪能したので、先に進むことにする。
少年のいう通り、ネズミの近くまではそんなにかからなかった。
聖水効果で、後衛部隊の殲滅力が上がったのもあるだろう。
「待て。」
ネズミのほど近くで、騎士団のおっさんが少年を止めた。
「なんだ?」
「さっきの下級魔族がこの先にいる。・・・・・・多分三体だ。」
「なっ?!」
そんなやり取りを見ているが、とっくに知っていたので、三文芝居を見ている気分になってくる。
「おい、お前、ちょっと来い!」
「なんですかー?」
「さっきの下級魔族がまだいたようだ。お前、またあいつの攻撃を遮断できるか?」
「できますけど、今三体って言いませんでした?」
少年がおっさんを見ると、おっさんが頷いた。
「配置を見てみないといけないですけど、三体いっぺんは難しいので、準備に時間がかかっちゃうかもしれませんが、大丈夫ですかね?」
「だったら、その遮断魔法ってのを俺にかけろ。俺が全部倒す。」
キャー強気ー。
「わかりました。それなら大丈夫だと思いますけど、合体技とか使ってきて、貫通したらごめんね。」
「・・・・・・待て、それは考えてなかった。どのくらいもつかわかるか?」
「さぁ?やったことない物はぶっつけ本番なので。」
実はコレ、本音だったりするんだよね。多分大丈夫だと思うけど、本当の意味では理解できてないからなぁ。
「チッ、しょうがない。それでもいいからやれ。タイド、回収が必要そうなら頼んだ。」
「わかった。死ぬ前に拾ってやる。」
え、そういう回収なの?物騒。っていうか、でっかい舌打ちすんなや。
少年が頷くので、遮断魔法を少年にかける。せっかくだから薄くかけてみようかな。はじけ飛んだらどうなるのかが知りたい。
いや、冗談です。
やはりネズミがいる場所は部屋のようなつくりで、全てがきれいにならされている。
今度は三体。一体は後ろに停止し、二体が前に出てくる。
その内一体に少年が突っ込んでいく。ネズミは攻撃が効かなかったのを察知したのか、小さく鳴くと、今度は魔法を発動させた。
少年の前に土壁ができる。
舌打ちをする少年が迂回しようとすると壁が突然消え、ネズミが持っていた棍棒を振っていた。
突如現れた棍棒をよけきれず、そのまま横に吹っ飛ぶ少年。すまん、想定してなかったから物理は遮断できないんだわ。
「ぐっ!」
横滑りした先ですぐに立ち上がり、再びネズミに突っ込んでいくが、またも視界をふさぐように壁が現れる。
こちらから見て斜めに壁が生えたのでわかったが、その壁、若干少年を包み込むような形になっており、少年が真横に出れないようになっている。ネズミっぽいのに賢い。
私は後ろに下がった。
「二人とも、次は斬れる自信がありますか?」
ギルマスとシュレインさんに聞くと、一瞬目を見開くが、二人とも頷く。
「じゃぁ、いってらっさい。」
私は二人の背中をパンと叩いた。
二人が前に出る。
「おい!」
おっさんが止めようとするが、二人は部屋に突っ込んでいく。
少年がちらりと見て舌打ちをしたが、三人がそれぞれ突っ込んでいく。
「三体同時は難しいんじゃないのか?効果は切れないだろうな?」
「きっと多分大丈夫ですよ。そんなことより、こっちもサポートしないと。」
どうやら、ネズミは視界をふさいでからそこに攻撃を入れたり入れなかったりと、ランダムでやっているようで、三人とも苦戦している。
だが、さすがにギルマスとシュレインさんは二対一になっているので、ネズミの方が押されているように見える。
「とりあえず少年はおいておいて、二人で戦っている方に、壁が出るタイミングでなんか攻撃魔法入れてください!」
おねーさんとサブマスが頷く。
おねーさんとサブマスがが魔法を唱えた瞬間、目の前に壁が現れた。
「キャ!」
目の前で魔法が壁と衝突し、危うく被弾しかけたが、守護魔法が効いて無事だった。
しかし、部屋が無情にも閉ざされてしまった。
「これ、どけれます?」
「既にやろうとしてますけど、向こうの魔力の方が強いです!」
あ、やばい。
「おい!どうにかできないのか?!」
「脱出の魔法ってできないんです?」
おっさんが聞いてきたので、逆に聞き返してみた。
「あれは近くにいないと無理だし、回収は視認が必要なんだ。」
なんか、よくわからない魔法体系の人っぽいけど、それ聞くと、さっきの脱出魔法って下手したら私たちは脱出できなかったんじゃない?と思えた。
サブマスを見ると、顔が青ざめている。ギルマスが中で死んでたら物凄い損失だろう。
中の状態は索敵魔法でわかっているので、焦っていない。ネズミが三体とも出て一人ずつ戦っているが、さすがの三人。そこそこ健闘している。
しかし、やはりシュレインさんとギルマスはこのままだとまずそうだ。
しょうがないなぁ。
「ちょっと離れてもらっていいですかね?」
私がそう言うと、三人が下がった。私は壁に手をついて、むにゃむにゃと詠唱の真似をする。
「開けごまー。」
こういう時はこの呪文しかあるまい。壁にぽっかりと穴が開いたので、よっこらしょと中へ入る。
「あ、そこにいてくださいね。」
後ろを振り返ってそう言うと、三人がぽかんと見ている。
とりあえず外の三人は置いといて、中の三人にちょっと強くした強化魔法をかける。
三人の動きが良くなり、ネズミを押し返す。これでいいだろう。
ほどなくして少年が一体のネズミを倒す。そこからはすぐだった。
うまい具合に挟んで、ネズミを攻撃する。
もちろんネズミもそれぞれに壁を出すが、壁のよけ方が少年の中で理解できたようで、するりと抜け出し斬りつける。
そして、ついに三体のネズミが倒されたのだった。
「ダメージは与えられたみたいですね。」
ギルマスとシュレインさんに言うと、二人は苦い顔になる。
「浅くしか斬れませんでした。」
シュレインさんの言葉に、ギルマスはシュレインさんの肩に手を置いた。
「こうも実力の差を見せつけられるとへこむよな。だが、お前にはまだ先があるさ。だろ?」
シュレインさんはそう言われ、ギルマスに頷いた。
なんか熱い友情みたいな展開に半目になりつつ、少年を見る。
少年はまっすぐこちらを見ていた。え、怖い。
「ディア!ごめんなさい。私では中には入れませんでした。」
おねーさんが少年に抱き着いた。おっさんも入り口から入ってきているが、苦い顔をしてこちらを見ている。
「シュレインさーん。倒せたのは良かったですが、なんかひと悶着ありそうで怖いですよー。」
「助けられた身ですから、何も言えることはありません。」
強いってバレないように見捨てるか、バレても助けるかだもんなー。
いや、まだバレて無いって信じとこ。私は村人。私は村人・・・・・・。
「けがはないか?」
少年がギルマスとシュレインさんに聞く。
「大丈夫だ。」
「大丈夫です。」
「そうか。なら、最後の部屋が残ってる。」
少年の視線の先を見ると、ここにはちゃんと扉がついている。
「この先が最深部だ。タイド。」
「わからないが何かは居る。」
おっさんの能力は、私の索敵と同じで、見たことないとわからないのかもしれない。
「聖水の効果は残ってるか?」
シュレインさんがこちらを見るので、シュレインさんの剣を見ると、まだ加護は残っていたので頷く。
「はい。」
「だったら、合図をするまで控えててくれ。何がいるのかだけ確認させてほしい。」
少年がそういうが、私は心配になった。
正直、ネズミよりやばいのが中にいる。でも、多分三人組は中に何がいるのかちゃんと確認したいのだろう。
今までを見ていると、おっさんは視認して解析をするんだと思うが、そんな悠長なことをしてられるだろうか?
もうばれるばれないとか言ってられないかもしれないと思いつつ、私は後ろについた。
少年が扉を開ける。中は意外に明るかった。明かりの魔道具が生きていると言っていたからそれだろう。
少年が中に入ると、部屋の奥に紫の光が瞬いた。
「下がれ!」
少年の言葉に、全員が下がる。
最後尾、少年と共にアンデッドがあふれ出てきた。
シュレインさんが動き、アンデッドを倒していく。
そのまま、少年と共に部屋に押し入っていく。
しかし、斬っても斬ってもアンデッドの波が止まらない。
「中には一体だったのに!ためてやがったのか?!」
おっさんが悪態をつく。
多分、中にいるものが召喚魔法を完成だけさせて、少年が中に入ってきたと同時に発動させたのだろう。
しかし、さすがの光の精霊の加護。シュレインさんの剣さえ当たればアンデッドは消滅する。
何十はいたアンデッドも、ほどなくして光の精霊の加護の前に消し飛んだ。
そして最奥には、司祭のような服を着た、骸骨がいた。
「まだ魔法詠唱してるよ!」
私が言うと、シュレインさんが走っていく。しかし、それを少年が塞ぐ。
「タイド!」
「・・・・・・やはりノーライフキングだ!いい!やれ!」
しかし、その間のせいで召喚魔法が完成し、紫の光と共に骸骨との間にアンデッドが沸きだした。
その時だ。ぞわっとした。
私が魔法を打ち消す。範囲の即死魔法だ。魔法への対処を私しかしていないので、私がいなかったら全員死んでいた。
しかも、そう思っている内にどんどんと即死魔法が放たれる。
打ち消すのはたやすいが、ふと気が付いた。大きな魔力の流れが他に二つある。
一つはおっさんが何かを唱えている。そしてもう一つは、即死魔法の裏で発動する別の魔法・・・・・・。
二重詠唱!
私もとっさに守護魔法を放つ。
その瞬間、爆音と共に視界が光で白く飛んだ。
骸骨は雷魔法を放った。しかも、かなりの高威力。
私の守護魔法がそれを防ぐが、その間も即死魔法が飛んでくる。
しかし、それを見て私は嬉しくなっていた。
ダクテオンもネズミも強かったが、本気を出せば殺せるのが分かった。でも、この骸骨はそれの上を行くのが分かる。そうなると、面白くなってしまったのだ。
せっかくだ。私もやったるぜーと思った瞬間、横のおっさんの魔法が完成した。
「ターンアンデッド!」
そりゃないわー・・・・・・。
いいね、評価、ブックマークしていただけると喜びます!




