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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
28/102

28.中層再び

 私たちはまたゲーベリオンの中層に来ていた。

 先日と同じように、別の人たちは浅層の掃除をしていて、中層にいるのは私たち三人だけだ。

「やはりこの前よりは簡単にこれたな。」

 聖水効果という名の精霊の加護がなくとも、ここまでは簡単にやってこれた。

 ギルマスはうきうきと中層に降り立ったが、私はそうもいかなかった。


 索敵魔法を唱えた感じ、どうも中層のアンデッド数がそんなに減っていないのだ。

「ここって、森の動物が来てアンデッドが増えるって言ってましたよね?」

「そうだな。弱るとここへふらふらと来て、アンデッドに殺される。そして、自身もアンデッドになって動き出すんだ。」

 そう考えると、二日で数がそう増えることはないはずだ。しかし、この層には前回と同じ程度のアンデッドがいるのだ。

「シュレインさん、なんだかおかしいよ。前回減った分が補充されてる気がする。」

 シュレインさんに耳打ちすると、シュレインさんが小さく頷いた。

「さ、行くぞ。今日は深層に潜ろう。」

 そんなことを知らないギルマスは、意気揚々と足を進めた。

 しかし、そんなギルマスの意識が変わるのに、そう時間は要さなかった。



「なんだ?全然減ってないんじゃないか!なんでこんなに接敵する?」

 五回目の戦闘の後、ギルマスが苦々しく唸った。

「そうですね。減ったように感じません。復活したんですかね?」

「わからん。だが、前回は嬢ちゃんが死骸を灰にしてくれてたし、復活するはずがないんだ。中層だと違うのか?」

「どうでしょう。」

「とにかく進むしかない。奥に行ってどういった仕組みなのか調べられたらいいんだが。」

 前を見据えるギルマスの顔が厳しい。その顔が進むにつれ、どんどん険しくなっていくことになる。


「キリがねぇ。なんだここは。」

 中層の半ばも過ぎると、バカみたいに魔物がひしめいていた。

「ギルドの人総出でも厳しいですか?」

「そうだな。これが続くのなら、無理だろう。どこかで絶対にケガ人が出ちまう。」

 そう言うギルマスの言葉に頷いたが、これは本当におかしかった。

「もしかしたら、下の層から上に出てきてるんですかね?」

 私はそう言ったが、これは本当にその通りなのだ。どうも、深層からアンデッドが湧き出してきている。

 そう、文字通り湧き出しているのだ。どうも、最奥の変な奴の近くでアンデッドが出現している。

 これだと状況が変わる。絶対にギルドの人だけでここへ来させてはいけないだろう。


「下から出てきてるなら、下は空いてるのかもな。」

 希望的感想をつぶやくギルマスに、なんと声をかければいいかが分からない。何なら索敵魔法を使えると言ってみようか?

 そう思ったところで、シュレインさんが口を開いた。

「ギルドマスター。私たちの国では最近になって急に魔物が多く出現しています。もしかしたら、ここでも同じようなことが起きているのかもしれません。

 そうなると、上位クラスのアンデッドが出現している可能性もあります。」

「上位クラスだと?」

「そうです。万が一アンデッドを召喚できるようなものがいたら、深層も魔物がひしめいているのではないかと。」

「ノーライフキングか・・・・・・。」

「深層に行った者がいないのなら、その存在に気が付いていないかもしれません。騎士団に確認をしてみた方がいいのかもしれませんし、そうでなくともあまり楽観視しない方がいいのでは?」

「わかった。だが、進めるだけ進もう。まだ大丈夫だよな?」

 ギルマスの声に、私たちは頷いた。少なくとも、中層奥の変な奴に会わせないといけない。


 私たちはひたすら戦った。私は手を抜いているとはいえ、二人は懸命に戦っている。だんだんと辛くなってきているのが分かったので、もうすぐ中層の最奥という地点で、カバンから瓶を取り出した。

「これ、疲れを癒す回復ポーションです。飲んでください。」

 この世界にも、ご都合アイテムポーションがある。調合の教科書にも、回復ポーションがいくつか載っているのだ。

「こんなもの持ってきていたんですか?」

 ごくごく飲んでいるギルマスの横で、いぶかしむように聞いてくるシュレインさん。

 彼には昨日の夜中に転移で学園に行って、材料ちょろまかして作ってきたとは言えない。

「はっはっは。用意が良いのだよ私はね!」

 そう言って笑っておいたら、疑いつつもそれを飲んだ。

「これいいな。効くわ。お前の家の商品か?」

「ですよー。」

「これ、今度うちに売ってくれないか?」

「姉に伝えておきますねー。」

「メリル様、勝手にそんなこと・・・・・・。」

「ま、大丈夫でしょ。毎度ありー。」

 私のお小遣い稼ぎに使えるので、やっておこうと思う。ちゃんと注文してもらいさえすれば、実家の薬草を買い取って作れば実家も潤う。ウヒヒ。

「悪い顔になってますよ。」

 シュレインさんが呆れた顔でつぶやくのだった。



 回復をした一行は、順調に中層最奥へと進んだ。

「あれは何だ?」

 ギルマスの視線の先には、紫色のでっかいネズミにコウモリの羽の生えたようなのがいる。

 それは深層への階段があるであろう前にじっと立ちふさがっているのだ。

 答えを求めてシュレインさんを見るが、彼も首を横に振る。

「私も初めて見ます。」

「あれ、今までと違って凄く嫌な感じするんだけど。」

 そう言ってギルマスを見ると、彼も頷いた。

「帰るぞ。ここでよくわからんものと戦うわけにはいかねぇ。」

 三人とも頷き、帰路につく。


「あいつ、どうするんですか?」

「この調子だと俺たちの手に負えないかもしれない。騎士の要請をするよ。」

 ギルドでどうこうしようとするのを止めてくれてホッとする。これで目的は果たせた。

「すぐに来てくれるんですか?」

 シュレインさんが聞くと、ギルマスは肩をすくめた。

「それはわからん。でもまぁ、一昨日の勢いのまま、ギルドで潜らなくてよかったよ。お前たちには本当に感謝している。」

「報酬が楽しみだなぁ。」

 私の言葉に、ギルマスはガハハと笑うのだった。



「えええ?!」

 その夜、宿の部屋でアマンダさんの声が響いた。

「ど、どうするんですか?そんな聖水やらポーションやら商品にする数を作れるんですか?」

 すでに数の話になってるところが商売人である。

「そこは任せてもらって大丈夫!実家が薬草作ってるから、材料の確保は完璧よ。」

「でも、それってまだご実家には話されていないんですよね?本当に大丈夫なんですか?」

「大丈夫大丈夫。」

 鋭いところをついてくるが、最悪パケマネに頼んで薬草を出してもらうから問題はない。


「でも、調合する場所と道具が必要なんだよねぇ。学園に忍び込むのも限度があるだろうし。」

「そんなことなさってたんですか・・・・・・。」

 入口に立っているシュレインさんが、呆れた声でつぶやいた。

「仕方ないじゃない。私にはまだそんな道具買うお金ないし。」

「材料はどうしたんですか?」

 アマンダさんも半目でこちらを見ている。二人とも鋭くないだろうか?

「なにいってるのよ。世界平和が何よりも大切でしょう?」

 私は自信たっぷりに言ってみた。・・・・・・はったりで。

「それとこれとは別です。泥棒も世界平和を乱す行為ですよ。」

 どうにかならなかった!おかしい。

「でもまぁ、効いたでしょ?あれが流通すれば、平和に貢献できると思わない?その実験に貢献してもらったといえば、学園も許してくれるわよ。」

「大人の汚い打算をわかってますねぇ。」

 アマンダさんが苦笑する。私もいい大人なので、その辺はばっちりである。胸を張って言うことでもないけれど。


「とにかく、そんなわけで、ポーションの受注してもらってもいい?できたら前金でどうにかちょっともらってもらって、それで器具買うからさー。」

「いえ、そんな簡単に買える値段じゃないですよ・・・・・・。」

「えええ?!」

 日本ではハンズとかに実験器具が売ってたりしたし、そこまで高い値段じゃなかったけれど、ここではそうでもなかったようだ。

「まぁ、それはうちが用意しますけど、旅をするのにどうやってポーションを安定供給するんですか?」

「魔法で帰ればいいからさー。どっかに調合用の部屋でも作ればいいかなって。で、夜の空いた時間にそこで調合するわけよ。」

 私がウィンクすると、シュレインさんは呆れた顔になるが、アマンダさんの目は光っていた。あ、この人もう頭の中でそろばんはじいてる。


「じゃぁ、家を作りますかね?」

「は?」

「広めたくないでしょうし、一軒家を買って、そこを聖女様に使ってもらいますよ。そこになら転移しても気楽でしょう?」

 一軒・・・・・・家を・・・・・・買う・・・・・・?

「んんん?スケールが大きくはないかね?」

「転移というのなら別にどこにで建ててもいいのでしょうし、何なら山とかにしてその辺一帯で薬草を育てたり。」

 やばい。この子金持ちだ。放っておいたらスケールがどんどんでかくなってしまいそうだ。

「んんんんんー。ちょっと待ってお嬢さん。そこまで甘えるわけには。」

「いえ、むしろ効果の高いポーションとして売れるのなら、需要は普通にありますよ。初期投資も商売には必須ですからね。これほど売れる商品と馬鹿でもわかるものなら投資はいくらでも出せますよ!」

 ヤバイ、アマンダさんの目がマジである。

「ま、まぁ、器具はお願いするとして、場所は自分で用意するわ。」

「そうですか?まぁ、それならそれでいいですけど、どの程度の期間にどの程度の商品がそろえられるかちゃんと報告ください。盛ったりしないでくださいね。」

「わかった。」

 アマンダさんの商人魂にひきつつ、私はポーションづくりに思いをはせるのだった。

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