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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
19/102

19.仕事の後のお弁当

 転移魔法を唱える時、行った場所を思い描き、その場の索敵をする。周囲に人がいないのを確認し、魔法を発動させる。


「うおっ!」

 目の前に私たちが出てきたことで、素早く立ち上がり剣を抜いていたギルドマスター。さすがというべきか。

「団長、申し訳ありません。」

「なんだ、お前たちか。ここには進入禁止の魔法もあるのになんてやつらだ。」

 ギルマスは苦笑いしながら剣を鞘に戻す。

「で、用は何だ?」

「見ていただきたいものが。お忙しいとは思いますが、来ていただけませんか?」

「わかった。どこだ?」

 シュレインさんがこちらを見て頷くので、私は元の場所に転移した。



「・・・・・・嘘だろ・・・・・・。」

 自分が移動させられたことに驚きつつも、目線はすでにダクテオンにある。驚愕の言葉はどちらを指して出たものか。

「ダクテオンか?」

「はい。」

 やはり有名な魔物のようだ。

「あの依頼、本当に調べてみたんだな。」

「はい。」

「騎士団は?」

「私の独断です。」

「そうか。さすがに俺も半信半疑だった。だが、お前と見た文献が頭をよぎってな。本当にいるとしたら厄介だと。」


「団長、お願いがあるのです。」

「なんだ?」

「倒したのはいいのですが、聖女殿の力でここへきていて、ギルドでは依頼を受けてはいないんです。聖女殿の転移の魔法のことも、できれば秘密にしておきたいのです。」

「お前、それは騎士団だけじゃない。国にも隠すってことだぞ?」

「はい。」

 あ、即答した。


「それで許されると思っているのか?」

「いいえ。ですが、聖女殿の力は一国が内包していいようなものではありません。

 このダクテオンも私では全く歯が立たなかったのを、聖女様が一人で倒されました。

 そんな聖女殿の力を見たら、何を考えるかわかりませんから。」

「お前は国が信用できないのか?」

「・・・・・・団長であったら言ったと思います。」

「・・・・・・わかった。とりあえず今回は任せておけ。」

 二人の会話の端々に不穏な空気を感じるのが怖い。

 以前アマンダさんに言われた言葉が頭をよぎる。私は本当に、知らないところでシュレインさんに護られていたのかもしれない。


「隠したいと言っているそばからこんなことを言うのは申し訳ないが、ここへサブマスターも呼んでいいか?信用はできる。」

 ギルマスとシュレインさんがこちらを見る。

「いいですよ。」

 どんどんばれていってるが、もうどうにでもなぁれ。



「本当にいたんですねぇ。」

 そう言って、サブマスターはまじまじとダクテオンを見ている。この男性、初めてギルマスに会った時に案内してくれた男の人だ。

 あの時も思ってたのだが、長髪の銀髪を後ろで縛っている糸目の男。話してみればおっとりとした口調と来ている。なんだろう?強キャラ感ある人である。


「子供だからこそ気が付いたと言わざるを得ませんねぇ。これは全てのギルドに通達しないといけません。こんな依頼があっても、普通なら笑い話で終えてしまいますし。」

「そっちは俺がやっておく。こっちはお前に頼めるか?」

「わかりました。私が処理しておきます。帰りは他も視察していきますから、しばらくギルドの事はお任せしますね。」

 サブマスはろくに説明もされていないだろうに呑み込みが早い。仕事もできるようだ。もしくは、こういう内密の後処理がよくあるかだ。まぁ、深くは考えないでおきたい。


「それにしても、これから忙しくなるな。ここはお前のとこの領だろう?ここに前線が張られるかもな。」

 なんだか物騒な物言いである。

「そうかもしれませんが、ここまでの道のりも長いですから。」

「しかし、ここにいたのは間違いない。他の個体も近くに潜んでいるなら、ここが一番可能性があるしな。」

「あ、そういうことです?だったらいないですよ。」

 私が急に話に加わったので、三人はこちらを見た。

「索敵魔法ですか?」

「はい。パッとかけてみましたけど、周辺に他の個体はいないですよ。」

 シュレインさんと私のやり取りを聞いて、今度はギルマスが割ってくる。

「それはどのくらいの広さだ?」

「国全土は行けてますね。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 三人の視線がなんか痛い。こちとら最終的には世界から魔王を見つける仕事するのだ。やろうと思えば世界全ての個体数だって調べられるに決まってるだろう。えっへん。


「だが、こんなものがぽっと出現するのか?」

 確かにそうだ。よくゲームで幻だとか伝説だとかで個体数のいない生物が出てくるが、そんなものは普通はあり得ない。

 分裂で増えるとかでもなければ、どうやっても生物には親と子という関係があるはずなのだ。


 でも、本当にそうなのだろうか?

 だって、魔王はどうやって出現するんだろう?

 それに、精霊だって親と子という関係はない。

 花が開いた時に生まれる精霊や、水のしずくから生まれる精霊がいる。

 それと同じように、この世界では何かの現象が起きた時、何かが生まれるということがあるのではないだろうか?

 それが魔族に当てはまるとしたら?


「私の索敵に間違いはないです。ただ、常に索敵をしているわけではないので、今この瞬間にも横にダクテオンが出現する可能性は否定できません。

 それに、私の事を隠すなら、結局ダクテオンがいないということを明言するための証拠がありませんし、結局はダクテオンの捜索はすることにはなると思います。」

「それもそうだな。だが、本当にこいつが単体で瞬間的に現れるなら厄介だ。何度捜索をしても、終わりがないということになる。」

 ギルマスが頭を抱えた。

「いっそのこと、静観すべきとの意見とした方がよろしいのでは?」

 サブマスが荷づくりを終え、ギルマスに言った。荷部分には特殊な模様の彫られた板が張られており、一種の封印のようになっているようだ。


「国中の依頼を洗った後でそう言うか。」

「このような内地で誰にも見られずひっそりと長年暮らしていたとは思えませんしね。馬もこの森なら通るでしょうから。」

「そうだな。まぁ、どうにかするしかない。そいつが届くまで時間はあるから、何か考えよう。」

「ビレートが近くにいるかもしれません。迂回して帰りますので、いたらこの件を任せましょう。」

「その手があるか。シュレイン、お嬢ちゃん、このダクテオン、別のやつが倒したことにしてもいいか?」

「大丈夫です。」

 シュレインさんは返事せずこちらの判断を視線で仰いだので、私が答えた。

 よくわからないけれど、私たちの替え玉として用意するのだろう。

「わかった。じゃぁ、よろしくな。」

「わかりました。」

 サブマスがそのまま一足先に出たのを見送り、私たちも王都に戻った。



「ただいまでーす。」

「おかえりなさいませ。」

 部屋に突如現れる私たちに、アマンダさんは驚くことなく返事をした。もう慣れっこだ。

「アマンダさんごめんなさい!せっかくお弁当もらったのに、時間かからなかったです。アマンダさんの分と一緒に、皆で食べましょう。」

「中身は見られました?」

「いいえ。え?何何?なんか特別なんです?」

 そう言って、背負っていたリュックからお弁当を出すと、さっと開けてみる。


「うああああああああああああああああああああああああああああああ!」

 開けた途端に私が叫んだので、シュレインさんがぎょっとする。

「こ、これ!」

「はい。この前聞いたものを再現してみたんです。」

「凄い凄い!」

 私がぴょんぴょこはねるのをみて、シュレインさんもお弁当を覗き込んだ。

「これは?」

「これ、おにぎりって言うんです!白米の中におかずが入ってるんですよ!それに、卵焼きとから揚げも!」

 そう、アマンダさんがくれたお弁当は、日本式だったのだ。

「もう食べる!今食べる!!いいですか?!」

 二人を見ると、優しい顔で頷いている。


 私はおにぎりとぱくりと頬張った。

「うああああ!塩サケ?!嘘だ!こんなものまで?!」

 おにぎりの具は、塩サケだった。海苔はまかれていないものの、見事なおにぎりだった。

 卵を食べれば、だし巻き卵だった。凄く懐かしくてうれしい。

 から揚げは風味がスパイシーなので、フライドチキンと言った方がいいような味ではあったのだが、しょうゆの味もほのかにして、おいしくできていた。

 アマンダさんの優しさと優秀さをかみしめながら食べていたら、涙がこぼれてきた。

 それに気が付いた二人が、ぎょっとする。

「急にすみません。泣くつもりではなかったんですけど。なんだか本当に懐かしくて。」

 魚の煮つけを食べた時は興奮が勝ったが、お弁当を食べてたら、懐かしさがこみあげてきてしまった。

「アマンダさん、本当にありがとうございます!」

 私はグジグジと泣きながら、お礼を言った。

「いいえ。また何か新しいものが届いたら、必ず聖女様にお出ししますね。」

「はい!」

 私は涙と塩でしょっぱいおにぎりを頬張ったのだった。

 

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>三人の目線がなんか痛い。 視線 では? 意味的に同じだと思うが『視』は見る・見られる意味する言葉だで、そういう意味合いのものには『視線』が妥当かと。
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