16.ウィーペラ
すみません。15話が載っておりました。
自動で更新してるので気が付きませんでした。教えてくださった方、ありがとうございます!
王都のギルドでは、国中の依頼を見ることができる。
オークやゴブリンの件もあって、騎士団もギルドに寄せられた依頼を観覧しているとのことなのだが、シュレインさんが騎士団で上がっている遠征ポイントのメモとギルドにある一覧を見比べている。
「何かあったの?」
「そうですね。これはまだ行く地域に入っていない依頼ですが、本当だったら結構大規模な作戦になりそうですね。」
「口調口調!」
「あ、すまん。」
素になってしまってるくらいの依頼ということか。前はゴブリンの時だったので、気を引き締める。
見てみると、蛇の調査依頼のようだ。
「それ行ってみる?」
「いや、遠いな。」
「そこ、行ったことってある?」
「あぁ。」
「じゃぁ、実験してみたいから、ちょっと付き合ってもらっていい?」
「あぁ。」
私たちは王都から出て、人気のない場所にやってきた。
「馬の手綱頂戴。で、手を握ってー。」
シュレインさんは頷いて、その通りにする。
「その町のできるだけ人気のなさそうなところを思い描いて。」
シュレインさんは目をつむった。
これは、転移の魔法の実験である。
転移の魔法は私の行ったことのある場所にしか行けない。
周辺の地形の把握ができないと、変な場所に転移してしまうからだ。
だが、ゴブリンの件で索敵魔法をシュレインさんと見た時、魔力の流れを感じた。
聞いてみれば、シュレインさんも魔法学園出身だという。
私を通して索敵魔法を共有できたことを考えれば、逆にシュレインさんを通して魔法を共有することができるのではないだろうかと思うのだ。
ならば、転移魔法はどうだろう?シュレインさんが強く思い描けさえすれば、そこへ移転できるのではないかと考えたのだ。
人体実験がしたいだけではないよ?・・・・・・きっと多分。
というわけで、人体じ・・・・・・テスト移転をしてみることに。
私は右手からシュレインさんに魔力を流し込み、左手からその魔力を受け取る。
私の魔力が交わったところで、シュレインさんのイメージから、索敵魔法をかける。
はじめは不明瞭だった。暗い部屋で明かりのスイッチを探すような、なんとなく場所が分かるものの手探りで細かい場所を探る感覚。
そして、そのスイッチを手にし、明かりを点けたような一瞬で世界が開ける感じがあって、行けると思った。
私たちは転移した。
「どうです?合っていますか?」
「はい・・・・・・。凄い。町からちょっと離れていますが、水辺があったので馬を休ませたことがある場所なんです。」
「よっしゃ!これはシュレインさんがちゃんと思い描けたからですよ!シュレインさんは転移の魔法の才能が有りそうですね。」
私がそう言うと、シュレインさんは眉をハの字にした。
「そんな魔法使えるのは、大魔法使いとか聖女のレベルですよ。」
「そんなもんですかねー。」
はじめから息を吸うように魔法が使えたので、自分がどれだけ凄いのかがいまいちわかっていないのだった。
私たちは町のギルドへやってきた。
シュレインさんによると、ここは王都から1週間ほどの距離にある町らしい。
「この依頼だ。」
そう言ってシュレインさんが差し出してきたのは、Cランクの依頼書だ。
それを受け取り、受付に出す。
「このクエスト受けたいのですけど。」
私が依頼書を差し出すと、受付のおにーさんは怪訝そうな顔をする。
「PTの方は?」
「私です。」
受付のおにーさんの問いに、シュレインさんが答える。
「二人?」
「はい。」
おにーさんにはシュレインフェロモンが効かないので、めっちゃ眉間にしわ寄せてる。
「お二人のカードをお願いします。」
おにーさんにカードを渡すと、私たちのランクが分かっただろう。
「オーク退治は他にPTの方がいらっしゃいました?」
「いいえ。二人です。」
「・・・・・・そうですか。システム上受けることは可能なんですが、あまりお勧めしません。本当に受けますか?」
フェロモンが効かないとこの対応が普通だと思う。死ぬこともあるだろうし。
「うちのおにーちゃん騎士だったから大丈夫だよ。」
そういう美少女の私がランクCで、兄がランクE。任せるには不安しかないPTだろう。あ、オークの件で、二人共ランクアップしました。
「・・・・・・手続きはしますが、ウィーペラは本来Bランクの敵です。確認するか、危険だと思ったらすぐに逃げてくださいね。いいですね?」
渋々といったようにおにーさんが手続してくれる。心配してくれてるので、対応が悪いわけではない。まさか目の前にいるのが聖女とエリート王宮騎士だとは思うまい。
とりあえず無事に依頼を受け、私たちは森へ移動することにした。
依頼の場所は森の中の湿地だ。そんなに広い場所ではないし、特に危ない場所ではなかったようだ。
しかし、ここ数ヶ月大きな蛇がいたという証言が数件出た。
はじめは特に気にしていなかったようなのだが、その蛇の大きさがどんどん大きくなっているというのだ。
そして、この依頼はその蛇が何なのか確認するというものだ。
確認するだけなのにCランク。こんなにおいしい仕事はあるまい。
なのにこの依頼が残っているのには訳がある。
この世界には大蛇と呼ばれるものが数種類いる。
アナコンダのようなでかいだけのただの蛇もいるけれど、ここにいるのはウィーペラと呼ばれる魔物ではないかという。
名前の由来は毒蛇。でかくて毒を持ってる蛇と言われたらそりゃ嫌だ。でも報酬がおいしいから行きたい人もいるはずだ。
しかし、そんなことを思わせない特徴がさらにあった。
「ウィーペラの最大の特徴は毒でも大きさでもありません。雷を放つことです。しかもかなりの威力のあるやつです。」
そう説明してくれるシュレインさんだが、最大の特徴が名前に反映されてないのおかしくない?という問いは無視してきた。
更にここは湿地帯。電気を放たれたらやばいのである。そりゃ確認するだけでも死ねる可能性あるのに来ないわ。
そんなわけで、我々は湿地帯の上空に浮いていた。
「毎度のことながら、反則な気がします。この楽さに慣れてはいけない・・・・・・。」
最後は独り言のようにつぶやいている。
「感電で死にたいならそれでもいいんだけど?」
「いいえ、毎回ありがとうございます。」
素直でよろしい。さて、索敵を開始しよう。大まかに蛇というくくりでしてみる。
「・・・・・・シュレインさん、良い報告と悪い報告があります。」
「はい。」
「まず良い方。大型の蛇を見つけました。」
「はい。」
「では悪い方。結構いるんですけど・・・・・・。」
私は困惑した。こんな世界だもの。アナコンダなんてそりゃいるでしょうよ。
そうじゃなくとも、蛇なんていっぱいいるだろう。蛇の生息数なんてよくわからないから、この湿地にどれだけいるのが正常かの判断はできない。
ここには大小合わせて蛇と思われる生物が十数匹ほどいるのである。
これが多いのか少ないのか。試しに同じ範囲位の森を索敵すると、結構な数がヒットする。
とすれば、この湿地にいる蛇は少ないわけだ。
それと、森の方の蛇は皆小さい。
こちらの蛇は数メートルのものが十匹ほどいて、残りが小さいのや中くらいのである。
「確認できてないからわからないけれど、下手するとこの湿地に一種類の蛇が繁殖していて、それは今回見つかってる蛇なんじゃないかな。」
でかくて毒があって放電する蛇が繁殖している。これって結構やばいんじゃない?
「一番大きいものを見てみましょう。」
「え?!小さいのがいいんじゃない?」
「いえ、ウィーペラは小さい内は普通の蛇にしか見えません。三メートルを超えるあたりから放雷器官が成長して、外見で判断がつくんです。」
大型の蛇を初めて見つけてから数か月たった理由がここにあるのかもしれない。
仕方がないので、一番大きな蛇の場所へ移動する。
シュレインさんの操縦は自分でやってもらっているので初めはグラグラとしていたのだが、移動し終わる頃にはちゃんと移動できていたのはさすがだ。学園でもさぞ優秀だったのだろう。
「この下の水の中で泳いでますね。」
そう言ったまさにその時、水面にその姿が浮かび上がってくるのが目視できた。でかい蛇って影だけでも怖い。パニック映画を思い出し、身震いした。
ほどなくして蛇の頭が水面から出てくる。そして口を大きく開けたかと思うと、ビュッと液体が飛んできた。
もちろん毒も電気も遮断するように守護魔法の幕を張っているので、それに阻まれ広がったその液体は、ドロリと粘り気を帯びつつ滴り落ちて行った。うげぇ。
「毒を飛ばされましたね。わかっていたのに反応できませんでした。魔法が無かったら危なかった。」
シュレインさんが若干青くなってるの怖いからやめて欲しい。エリート王宮騎士にこんな顔をさせるなんてさすがランクBの魔物だ。
「で、あれはウィーペラなの?」
「ここからでは確認できません。放雷器官は頭の左右に出ているはずですが、もっと近づかないと。」
シュレインさんは眼鏡なだけあって、目が悪いのだろう。目を細めて見ている。
「んじゃ、こっちに引き寄せるよ?」
「はい。・・・・・・え?」
了承したものの、意味を測りかねたのか聞き返された。が、遅い。
私は蛇を浮かばせてこちらに引き寄せた。目の前に逃れようと暴れる蛇がいる。かなり見た目が怖い。全身に鳥肌が立っているのが分かる。
沖縄で蛇を肩に乗せたことあるけど、ああいうレベルじゃない。こちらに敵意むき出しで暴れてる五メートルくらいのぶっとい蛇なのだ。蛇好きでも逃げると思う。
「で、これはウィーペラなの?」
シュレインさんが口と目を見開いて蛇を見ている。急に引き寄せたことに驚愕してる顔なのだろうが、その顔をアホ面だと思った瞬間、バチッと音がした。
「・・・・・・ウィーペラですね。雷を発しました。」
なぜがクソデカため息をつきながらシュレインさんが絞り出すように言った。
蛇の周りには我々と同じ守護魔法がかかっている。ということは、電気も毒もその魔法の膜の外には出られない。二重に安全策を取っているというのに非難がましい目でこちらを見ないでほしい。
「今索敵してみたけど、やっぱりこの湿地にいる蛇は同じ種類だよ。森の中には今のとこいないけど、まだ魔法が全体にいきわたってるわけじゃないからいい切れはしない。」
そう言うと、またクソデカため息をつく。ため息は幸せが逃げるなんて言うけれど、ストレス緩和に役立つそうなのでどんどんついていいと思う。だが、ストレスの原因が私だとは思わないでおきたい。
「もしかして、全部捕まえられます?」
「楽の勝ですけど。」
「あなたを見てると、本当に自分が小さな存在だと思いしらされます。」
そういうシュレインさんの遠い目は見なかったことにする。しかし、いよいよ聖女の凄さをわかってきたようで、そこは満足だ。
私は他の蛇たちも同じように捕獲した。
「これで全部ですが、殺していいですかね?」
のたうち回る蛇たちを前に、シュレインさんが目頭を強く押さえている。
「殺していただいて構いません。危険ですし。ただ、これをどう報告しましょうか。」
「いやまぁ、別に普通に倒してきましたって言っていいと思うけど。」
「この地域の蛇を全部捕まえて退治したって言いきれるってことは、この辺の蛇の数を正確に測れることにつながってしまいますけれど。」
「あぁ、確かに面倒くさいか。」
「それと、蛇の中には小さいものがいます。この湿地にはまだ卵があるかもしれません。」
「あー・・・・・・。」
索敵では引っかからないのだが、探そうと思えば探せる気もする。ここは森の中だけあって、精霊も豊富だし。でも、何でもかんでもできるのを見せてもいいのか?という気持ちもあった。
「とりあえず出てきたものは倒したけど、ちゃんと捜索してくださいって言ってもいいんですかねぇ。」
「全て倒したんですか?」
「今この湿地に蛇はいませんよ。多分この蛇が他の蛇を遠ざけたか駆逐したんでしょうね。」
「ですと、騎士団を要請するのは無駄ですね。ウィーペラだとちゃんと編成しないといけないので。」
「あー・・・・・・。」
とても悩ましい事である。簡単に倒すのも面倒なのだなと学んだのだった。
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