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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
101/102

101.五年後

「どうしてこんなことになったんでしょうか……。」

 城に入ってくる馬車の群れを見ながら、アマンダさんはため息をついた。

「駄目だった?」

 私の問いに少し考えた後、アマンダさんは小さく首を振った。


「まぁ、なるようにしかならないし、なるべくしてなったのだよ。」

 首を振ったアマンダさんを見て、私はそう言った。というか、なんか昔にもこんなことした気がする。


「他人事ですねぇ。」

「他人事だからねぇ。」

 私がそう返すと、梅干しを食べたような顔になったあと、がっくりと肩を落とすアマンダさん。

「そうなんですよねぇ。」

 そうつぶやいて目を覆った後、ため息をついてまた外を眺める。


 そしてまたつぶやく。

「どうしてこんなことになったんでしょうか……。」



 メイドさんたちが群れをなして部屋に入ってきたので、忙しいアマンダさんを置いて、私は久しぶりのメンツにあいさつに向かった。

 メイドさんに割り振られた部屋表をもらってので、目当ての部屋はすぐに見つかった。


 ノックをすると、恐る恐るといった感じにドアが開く。そして、薄っすら開いた隙間から、目だけがのぞき込む。

「おねーちゃん?怖いから。」

 私が呆れた声でそう言うと、ドアが勢いよく開いて、姿を現した姉によって部屋に引き込まれた。


「ちょっと!おねーちゃんとか大声でやめてよ!」

「普通の声だし、実際おねーちゃんだし……。」

「あんたこっちで聖女として生きてるんでしょ?」

「ばれちゃってるからね。」

「だったら嫌よ!他人ってことにして!」

 久しぶりだというのに、酷い言われようだ。


 まぁ、私がベリンダールに行ったことで聖女の圧力が無くなったようで、シュレインさんをはじめ、ディアとおねーちゃんも苦労したようだ。

 そこで、ようやく聖女の家族という危うい立場に気が付いたのだろう。



 ベリンダールに来てから五年が経った。その間も、私は転移があるし、トイレは岩山のお家のを普通に使っていたので、結構な頻度でディアとは遭遇していた。

 ディアはディードがいるから、毎日岩山の家に来るのだ。

 しかし、おねーちゃんやシュレインさんはずっと見ていなかったし、ディアもおしゃべりな方ではないので、挨拶だけの事も多い。だが、時折話し込むこともあって、そこから情報を得てはいた。


「それはそうと、それはやっぱりディアなの?」

 私は窓辺に立っている全身甲冑を指さした。

「そうだよ。」

 甲冑から知った声が聞こえたので、ふきだしてしまった。

「なんでそんな格好よ。」

「顔見知りがいるだろうからな。」

 まぁ、それは確かにそうだ。


「明後日もそれで参加するの?」

「もちろん。俺はこれを脱ぐつもりはないぞ。」

「いや、部屋ではいいじゃない。」

 私よりも早く姉が突っ込む。その通りだよなぁ。


「こうやって急に人が来るかもしれないからな。」

「死角に隠れるとかやりようがあるでしょ!」

「嫌だ!」

 夫婦のやり取りを見て、相変わらず仲がよさそうでよかったと思う。


  いま、王都の家はこの夫婦に管理してもらっている。

 さすがに働いている二人があの広い家を維持できるはずもないので、ちゃんとメイドさんも派遣している。

 しかも、結婚式に呼んだ家族と話し合って、今はおじーちゃんとおばーちゃんも王都の家で暮らしている。ディアにうちの家族押し付けて申し訳ない。


 二人は身の丈に合っていないと言うが、家は住んでいないと傷んでしまうので、頑張って欲しい。

 それに……。


「ママー!これ何ー?」

 かわいい女の子が絵本をもって姉の足元にやってきた。そして、ベッドでは赤ちゃんが寝ている。


「んー?これはねぇ、ワイバーンよ。」

「わいばーん?」

「そう。とっても強くて、とっても優しい生き物よ。」

「パパより?」

「んー。パパと同じくらいかな?どう?」

「俺より強いだろ。」

「ママー。パパ何であんな変なかっこなのー?」

「もう!だから脱いでって!」

「嫌だ!」

 見てたら一生続きそうである。


「仲いいとこ悪いんだけど、服どうするの?」

「あ!そうよ!お願いできる?」

 この前ディアに会った時に、服を貸してくれないか頼まれたのだ。

 そりゃそうだよね。ディアは騎士だから正装があるだろうけど、おねーちゃんは一般市民だし。

「一応用意したけど、いくつかあるから見てくれる?」

「えっ!そんな何着も用意してくれたの?無難なのでいいのに!」

「もう流石に昔の趣味と変わってるでしょ?それに……。」

 私はディアの方を見た。


「ディアとも合わせるだろうと思ったけど、必要なかったみたいね。」

「いやいやいや!必要!本当に必要だから!」

「大丈夫。ちゃんとあるから。でも、こっちで見た方がよさそうだね。こっちに運んでもらうわ。」

「バカやめろ!人をよこすな!」

「もう!ディアは黙って!でも、ここだと汚したら大変だから。」


「じゃぁ、近くの空いてる部屋に用意するわ。あ、フィオレとランディも連れてきて。そっちも用意してるから。」

「は?!流石に連れてけないでしょ!」

「大丈夫だよ。アマンダさんとこの子もいるし、ちゃんと避難部屋とかも用意してるから。」

「えええ……。」

「フィオレはいい子だもんね?」

「うん!フィオレいい子だよ!」

 渋る姉をよそに、かわいい姪は満面の笑みで頷いてくれた。


「じゃ、用意できたら呼びに来るから。私も用があるから、しばらくかかるんで、ゆっくりしてて。」

「わかった。ありがとうね。」

「いいのよ。おねーちゃん!」

「もう。外ではやめてよね。」

「あはは。じゃぁ、また後で呼びに来るね。」

 私は手を振って出て行こうとしたが、ぎりぎりで姉に引き留められた。


「ねぇ、メリルはこれからどうするの?」

「どうって?」

「ずっとこっちにいるの?それに、結婚とか……。」

 最後は小声になる。


「んー。まぁ、色々考えてはいるよ。」

「えっ!こっちでいい人ができたの?!」

 裾を申し訳程度に持っていた姉の手が、そう返答したとたんに強く肩をつかんでくる。ひぃ!怖い!


「いやいやいや。それどころじゃなかったからさー。でもまぁ、言いたいことはわかってるから大丈夫よ。」

「そう……。じゃぁ、またあとでね。」

「あいよー。」

 今度こそ、私は部屋を後にした。



 次の部屋をノックすると、中から懐かしい声が聞こえる。

「はい。」

「俺俺。俺だよ。」

 私が絶対に伝わらない俺俺詐欺で返事をすると、ドアが開く。


「なんですかその返事は。相変わらずなようですね。」

「お久しぶり。シュレインさんも相変わらず無表情で。」

「お久しぶりです。お元気そうで何よりです。」

「シュレインさんは最近どう?色々聞きたいからさー、中に入っても?」

 お小言が続くと面倒なので、中に入れてもらおうとするが、堅物騎士は眉間をもみつつ、クソデカため息をついた。懐かしい。


「どこか別の場所で話しましょう。」

「聞こえちゃったらまずいんじゃない?」

「そんな話をなさるおつもりで?」

「まぁね。こっち側で起こったことだって言うからさ。」

「はぁ。わかりました。どうぞ。」

 今度は小さくため息をついて、中に招いてくれる。どうせ危ないことなんてないんだし、最初からそうしてくれてもいいのにね。真面目だなぁ。



 そんなわけで、こちらに来て五年。さほど変わった生活をしていたとは言えない……わけではないけれど、アマンダさんとは段違いで自由に色々遊び暮らしていた。

 とはいえ、色々あったことはあった。


 まず、気になっていたので、魔境からどれほどの魔族が流れてくるのかを調べることにした。

 ベリンダールは防衛費にかなり投じていただけに、一年に二体ほどは強い魔族が来ていたようだ。

 しかし、この五年で強い魔族の移動は観測されていない。

 多分だが、マザーを倒したことで、そこの縄張りを制した魔族が、その他の魔族を排除しているのだろう。多分。大事だから二回いっとく。

 

 もちろん、下級魔族は結構いる。というか、下級魔族は世界的にかなり増えている。

 私がシュレインさんに話したように、魔素の量は、魔王出現に満たないところで安定するように精霊たちの間で管理されている。

 しかし、精霊が好む魔素の多さは魔族や魔物も好み、魔族の発生はその魔素の量が多いほど増えてしまう。

 そんなわけで、下級魔族は増えているのだが、強い魔族に比べれば、ベリンダールの先鋭たちにとってはそこまで脅威ではない。


 ということは、防衛力が現状維持に必要な分を超えるのだ。



 それがわかってからしばらくした後、ディアの元チームのおっさんが、移動した。

 国の端の方の町にいたのだが、王都から二日ほどの街に住むようになったのだ。

 こっそり見に行ってみると、孤児院をやっているじゃないか。

 表向き処刑されてるわけだから、そんなことがあってはならないんだけど、結局国はおっさんの能力を手放すのが嫌だったのだ。

 まぁ、おっさんの能力、私ですらできないことをしてたからなぁ。

 で、孤児院もやっぱりディアの時と同じことを繰り返そうとしていたようで。


 それを調べていく中、武力の余っていたベリンダールが、オスカラートとクレイベル王国に侵略しようとしていたことが発覚。


 魔王討伐前に聖女を殺そうとしたのは、世界の崩壊を招く行為である。

 そのうえ、侵略もしようとしている。

 これは、世界に宣戦布告するようなものだ。

 

 もう見過ごすことができない状況だど判断せざるを得なかった。

 それを理解した第二王子は国王を説得しようとしたが、聞き入れられなかった。


 この国には、まだクレアライトがいくつかある。

 そして、それをもって、ゲーベリオンの不死迷宮のような術を各国ですればいいのだと。


 第二王子は悩んだ。そして第一王子にも打ち明け、一緒に説得しようとするものの……第一王子も国王と同じ考えだった。


 絶望する第二王子を、アマンダさんは必死に支えた。

 そして、運が悪くというか運がいいというか……その傍には、白龍ルーシルさんがいたのである。



 ベリンダールに住み始めて二年目に、アマンダさんは結婚した。

 シュレインさんたちを招待するようなことはできないほど小さな結婚式。

 でも、その時にアマンダさんがルーシルさんを呼べないかと、召喚アイテムをコップの水につけた。

 結果、海じゃなくても呼べた。おい。そして、海がない地域に住んでいることを知ってしまい、そのまま居ついてしまったのだ。


 それからアマンダさんの厄介守護者となっていたルーシルさんが、アマンダさんの苦悩を見守ることに限界を感じ、人間の国に詳しいであろうと、フィアルさんを呼んでしまったのだ。



 そうなったらあっという間だった。諸外国の連名にて、ベリンダール国王と王妃、第一王子と王子妃を筆頭に、おっさんや関わった者たちが処刑された。


 そして、第二王子が新国王に就くことになり、アマンダさんは、王妃となったのだった。

 そりゃ、なんでこんなことにってなるわなぁ。私だってどうしたらそんなことになるんだかわからないよ。

 でもまぁ、世界を救ったということになってる聖女を殺そうとした男を隠匿していたのはまずいだろう。世界の敵だもんなぁ。


 でもまぁ、ルーシルさんが大嫌いなフィアルさんを頼った位だ。あの時のアマンダさんは本当に酷い状態だった。

 ルーシルさんがフィアルさんを呼んで無かったら、私が国ごと滅ぼしてた。国が残っただけましだと思う。

 何度か聞いたよ?殺す?滅ぼす?って。

 でも、もう少し頑張るって言うから、私だって唇かみしめてアマンダさんを支えてたんだ。傍観してたわけじゃないよ。

 って、まぁ、おっさんやら戦争の証拠やら見つけたの私だから、私が一番心労をかける元だったというのは考えないようにしとくわ。


 というかね、ベリンダールに来る前に、あらかた第二王子とは話しあったのよね。

 だから、もう少し長期戦で国を乗っ取るつもりではいたんだけど、それはあくまで現国王から第一王子へ代替わりという意味だった。

 第一王子も向こう側になっていたのを、第二王子が納得するまでにかなり時間がかかった。

 そのためにアマンダさんの苦悩が深くなってしまったわけで。


 そんなこんなで、今集まってるのは戴冠式があるからなのである。

 ついでにオスカラート、ベリンダール、クレイベルで和平を結ぶことにもなっている。

 ベリンダールはトップが変わったとはいえ、未だ戦力は十分。両隣の国にとっては脅威でしかない。

 しかし、トップの処刑が行われたので、そちらから侵略することもはばかられる。ということで、色んな思惑が重なって、和平という流れになったのだ。


 正直、オスカラートも若干不穏だったもんね。弱いくせに。



「てなもんよ。」

「ご活躍だったようで。」

「全然!アマンダさんの十円ハゲが四つ目になった時、自分の無力さを呪ったわ。」

「じゅうえん?」

「あ、こっちの事よ。で、シュレインさんはどうだった?」


 そう聞いて、最後に会ったのは結構前だよなぁ。と、その時を思い出すのだった。

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