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転生聖女は自由に生きたい  作者: 辻 壱
10/102

10.楽しいお金稼ぎ

 更に時が過ぎ、すっかり乗馬に慣れた頃、私は思い切って切り出してみることにした。

「シュレインさんシュレインさん、明日でかけたいんです。馬を借りたいんですけど、どうしたらいいんでしょうか?」

 扉を開けて横のシュレインさんに毎度のことのように声をかける。

「明日ですか?」

「はい。」

「どこへ?」

「所用で。」

 すっとぼけておく。

「お供させていただきます。」

 即答するシュレインさんにびっくりする。

「え?明日お休みですよね?」

 そう、明日は土曜。なので、シュレインさんがお休みの日だ。だから言ったのに、ついてくるというのだ。

「かまいません。」

「えー、ちゃんと休みましょうよ。一人で大丈夫ですから。」

「・・・・・・他の騎士だと融通が利きませんよ。」

「え?シュレインさんだと融通が利くんですか?」

「契約がどうとかおっしゃってましたよね?」

 あ、すっかり忘れてた。他の人だとばれちゃうもんなぁ。


「チェッ。しょうがないので、明日の八時頃に出掛け始めたいんで、来てもらってもいいですか?馬はどうしたらいいですかね?」

「私が手続をしていきます。」

「そうですか、じゃぁ、服装は・・・・・・。」



 そんなわけで、シュレインさんと街へ繰り出してきた。

 目的地の厩舎に一旦馬を預けていると、シュレインさんが眉間によってるしわをもみほぐしながら言った。

「メリル、こんなとこで何を?」

 今日は二人共街人に見えるような服装で来ているので、呼び捨てタメ口で話すように言ってある。

「バイトだよー。」

 そう、ここは冒険者ギルドなのだ。

 もう二ヶ月近く来れていなかった。

 まぁ、その分おじーちゃん先生の治療院でお手伝いしていたのだが、お給金があるわけではないからね。

 おじーちゃん先生は出してくれるっていったけど、おじーちゃん先生の趣旨とずれると思ったので、おやつをもらっている。

 それだって、いいとこのおやつを用意してくれてる気がするので、もしかしたらお給金もらった方が安いのかもしれない。


「そういえばさ、おにーちゃんは冒険者カード持ってるの?」

「持っているわけがないが。」

「ふーん。じゃぁ作らなくちゃね。」

「・・・・・・。」

 シュレインさんのクソデカため息が炸裂するのだった。


「おねーさん、こんにちはー。」

「あら、お久しぶりですね。今日は・・・・・・。」

 そう言っておねーさんはシュレインさんを見上げる。頬がほんのり赤いのは気のせいではないだろう。忘れていたが、シュレインさんはかなりかっこいいのである。

 しかも、王宮騎士の中の超級エリート第一部隊という王族を護る役職にいるだけあって多分強い。そして多分爵位も高い。聞いたことないから憶測だけど。

 そんなわけで、そんなお方がむさくるしい冒険者ギルドに来たので、よく見ると他の職員のおねー様方もシュレインさんをガン見している。こんな目立つとは思わなかった。まずったかな。


 ま、いっか。


「今日はおにーちゃんを連れてきたんです。おにーちゃんこんな見た目だから俳優してたんですけど、デブスマダムの夜のお誘いを断ったらクビにされちゃって。仕方なく冒険者に転職することにしたんです。」

 そんな説明をしたら、おねー様方はシュレインさんの顔面力に負けて正常な判断をなくし頷いているものの、当のシュレインさんは私の腕を強くつかんだ。顔を見ると、ひきつっている。何たる不敬。我聖女ぞ?


「そんなわけで、登録お願いします。」

「あ、あ、はい。では、こちらに手をかざしてください。」

 カードが置かれた石板に手をかざすと、カードと個人が結びつくようだ。精霊の魔法でもないし、私も見ただけではどうしてそうなるのかわからない。謎な仕組みのギルドカード。

 ちなみに、個人の能力を測るシステムは無いようで、皆はじめは最下位ランクの冒険者だ。

 名前の登録もないので、身分証にはならないけれど、聖女も王宮騎士もばれずに作れてしまうのである。

「こちらのカードが毎回必要になりますので、必ずお持ちくださいね。再発行には手数料がかかってしまいますので、無くさないようにお気を付けください。ランクのシステムなのですけれど・・・・・・。」

 おねーさんは見とれながらも淀みなく説明をしてくれる。プロである。


 この世界の冒険者のランクは、平々凡々のシステムS・A・B・C・D・E・Fランクに分かれている。

 私は今Dランクだ。しかし、薬草で点数を無限に稼いだとしても、上げられるのはここまで。

 Cに行くにはDランク以上の魔物を一定以上倒さなくてはいけない。

 依頼自体はCランクまでは一つ上のランクまでは受注できるので、Cランクの敵を倒せば点数的にも楽に上がれる。

 PTで受けた場合点数と討伐数はメンバーの人数で割られてしまうので、一人で討伐する方が効率がいい。

 また、Bランクに上がる時は試験もあるらしいが、そこまでランクを上げるつもりがなかったので、よく知らない。

 ついでに豆知識だが、アルファベットはこの国の言語ではない。

 しかしランク制度には使われている。やはりゲームかラノベの世界なのかもしれないとこういう時思うのだった。



「さ、できそうなやつ探そ。」

 説明を一通り聞き終わったので、掲示板に連れていく。

「おにーちゃんは何ができる?ドラゴン退治する?」

 一番上のランクにドラゴン退治がある。これは緊急クエストではなく、私が初めてギルドに来た時にもあったくらいの年季の入ったクエストである。多分、倒してくれたらめっけもんくらいの感覚で出てるんだろう。

 シュレインさんが前に飛竜がうんたらといっていたが、それはどの程度の大きさで、このドラゴンはどの程度の大きさなのだろう。


「何バカなことを言ってるんだ。というか、前から来ていたのか?」

「こっち来て二週間くらいは三日に一度は来てたよ。」

 シュレインさんは眉間を押さえている。まさか聖女が城を抜け出して冒険者していたとは思わなかっただろう。

 正直、賭けだった。シュレインさんと出会って二ヶ月。信頼できると思ったので、仕方なくではあるものの連れてきたのだ。

「村にいた時からやってたし、悪いことはしてないって言ったじゃん?むしろ人助けじゃん?」

 悪びれることなく言ってのけつつ、退治クエストを受けてみることにした。


「えっと、この依頼を受けるんですか?今までずっと薬草摘みでしたよね?しかもいきなりオークだなんて・・・・・・。」

 依頼書を渡すとおねーさんが心配そうに私とシュレインさんを交互に・・・・・・いや、シュレインさん多めに見比べて言う。

「大丈夫、おにーちゃん強いから!ね!」

 シュレインさんを見て念押しをすると、ため息をつきながら頷いてくれた。

「大丈夫です。鍛えていましたし、剣の腕もきちんとありますので。死にそうになったら妹を囮にして逃げますし。」

 おい!

 低くて心地の良い声に、またもおねーさんの判断能力が削られた。

「わかりました。お気をつけて行ってらっしゃいませ。」

 何やらうるんだ瞳で見ている。シュレインさんなんかホルモン・・・・・・じゃない、フェロモンでも出ているのかな?


「さて、頑張って稼ぐぞー!」

「・・・・・・。」

「ちょっとー。おーとか言ってよ。」

「・・・・・・行くぞ。」

 ノリが悪いシュレインさんと、オーク退治が始まった。

 

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