第71話 決戦の時!
「よし、洞窟に入ろう」
勇者様が大きな声で言った。いよいよコーチャとの戦いか。何だか怖いよ。もう少しレベル上げをしてからの方がいいんじゃないかな?
「ちょっと待って」
サラが勇者様に声をかけた。
「このままではまずくない? 結局マジック玉は手に入らなかったし」
そうだよね? まずはマジック玉を手に入れないとダメだよね? これで少しは寿命が延びたかも?
「あれ? さっきのマジック玉って本物じゃない?」
アイラが落ちていたマジック球を拾って言った。
「本当ですね。これは本物のマジック玉です」
「なら問題ないな。よしコーチャとの決戦だ」
せっかく寿命が延びたと思ったのに。でもよく考えたらこれって窃盗だよね? 異世界だからいいのかな?
私たちは勇者様を先頭に洞窟の中へと進んでいった。嫌な冷たい空気が怖い。そしてついに明るい広間へと出た。と言うか出てしまった。中央には怖そうなモンスターが6体いる。
「真ん中にいるのがコーチャだ」
勇者様が余計な説明をしてくれる。ああ、いよいよ戦闘だよ。どうしよう。
「かなり強いモンスターをセレクトしてきたな」
これって聞きたくない一言だよ~。
「おかしいぞ。両脇にいるモンスターはミミナシだ。なんでこんな弱いモンスターが混ざってるんだ?」
これはきっと余裕を見せてきたんだよ。私たちなんかこれで十分だってことだよ。だから逃げよ! とは言えないよね?
「よくぞここまで来たな。褒めてやろう」
これってロールプレイングゲームのエンディング前に聞くセルフだよね? もう終わりだわ。
「褒めてやるのは私の方だ。よく逃げずにいたな」
勇者様~! お願いだからあまり煽らないで!
「一度だけ考えるチャンスをやろう。俺の部下になるなら今回は見逃してやるがどうだ?」
「四天王ごとき身分の輩が言うセリフではないな」
だ・か・ら~煽らないで!!
「どうやら覚悟はできているようだな。この洞窟でお前たちはゲーム終了だ。覚悟するがいい」
戦闘が始まっちゃうよ!
コーチャの攻撃。あああああは13520のダメージを受けた。
「う! 強い!」
ええーーー! 予想以上に強いよ! まさか本当に負けちゃうの? こんなところで倒れたら蘇生なんかしてもらえないよね? 本当に終わっちゃうパターンだよ!
クレアが回復魔法をかけた。あああああはHPが8720回復した。ダメだ。回復が追い付かない。このままでは確実にやられる。何とかしなきゃ。でも、どんどんみんなのHPが減らされていく。両脇のミミナシ以外は物凄い攻撃力だし。
あああああは膝をついた。残りHPは35だ。
「勇者様!」
何とかしなきゃ。クレアさん! ええ? クレアさんも倒れかけてる。早くマジック玉で。もしかしてもう全部使っちゃったの? アイラさん! サラさん! ダメだ全員倒れかけてるよ!
「これで終わりだな」
「待って!」
私は無我夢中で勇者様の前に飛び出して両手を広げた。
「何だと!」
コーチャが攻撃を止めた。そしてミミナシがコーチャを守るように前に出る。何で? ええ~い、こうなりゃやけくそよ! 私の弱い攻撃をお見舞いしてやるわ。
でも何の魔法を出せばいいの?
「今だ! クロッシングフラッシュを出すんだ!」
久しぶりにポチの声を聞いた気がするわ。
「さあ、早く!」
「それは嫌!」
こうなったら全力で体当たりよ! 私が大きく手を挙げると、
「た、退却だ!」
大きな声を出してコーチャたちが逃げて行った。どうなってるの? もう1回攻撃をしたら確実に勝てるのに。
勇者様たちが立ち上がると大きく深呼吸をした。そして勇者様が私に話しかけた。
「わかったぞ。麗華ちゃんのおかげで助かったんだ」
「どういうこと?」
「コーチャはありとあらゆる情報をもとに攻撃を仕掛けてくる。おそらくゾーチャが麗華ちゃんにやられたという情報を持っていたんだろう」
「それで音が聞こえないミミナシがいたの?」
「たぶんその通りだ」
何が幸いするかわからないよね? でもコーチャが私に何の能力もないという情報を得たら確実に終わりだよ。やっぱりレベル上げが必要か。
「クロッシングフラッシュだったら確実にコーチャを倒せたのに」
絶対に嘘だよね? 私は前途多難な未来に大きくため息をついた。まさかここでも呪いの剣に助けられるとは思わなかったわ。