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第70話 森の道具屋

 森の奥まで行くと大きな祠が見えてきた。隣には洞窟の入口がある。

「ここかな?」

勇者様がそれを見て呟いた。

「絶対にここだよ。早速乗り込もう!」

サラが元気に歩き出そうとしたが、

「ちょっと待ってください。まずは持ち物やHPそしてMPのチェックをしましょう」

クレアが落ち着いた声で言った。


「確かにクレアの言う通りだ。焦るといい結果は出ない」

勇者様の冷静な言葉にみんながチェックを始める。私もポチに言って例の画面を出してもらうことにした。

「麗華はチェックなんか必要ないよ」

「どうして?」

「どうせHPなんて一撃でなくなるからね」

とんでもないことを言っているが、おそらく事実だよね?


「私はMPを増幅させるマジック玉が不足してました」

『クレアさんはみんなの回復役だからMPは大量に必要だよね。特に私には絶対に必要だよ』

「だが、こんな森の中では道具屋もないし困ったな」

勇者様が当然の悩みを呟いているとサラが何かを発見した。

「あそこの家って道具屋じゃない?」


 サラの指さす方向には小さな掘立小屋があった。看板には森の道具屋と書かれている。

「まさかそんな都合よく道具屋があるものなのか?」

勇者様の言う通りだよね。でもロールプレイングゲームの世界ではあり得るような気もするけど。私たちは迷った挙句道具屋を覗いてみることにした。


「いらっしゃい」

店の中に入るとアイドル歌手かと言わんばかりのイケメンが声をかけてきた。

「どんな道具でも揃ってるよ。安くするから買っていってね」

とても爽やかな笑みを浮かべている。


 この状況に真っ先に食いついたのはアイラだ。

「マジック玉ってありますか?」

「もちろんだよ。何色にしますか?」

マジック玉には5色の色がある。色によってMPの回復量が違ってくるのだ。一番弱いのは白色で100%全回復できる最上級モデルは虹色だ。


「店員さんのおすすめはどれですか?」

「やはり虹色かな。コーチャは強いので意外とたくさん使うからね」

「そうですよね。あら私ったら店員さんなんて言っちゃいました。お名前は何ておっしゃるのですか?」

アイラさんてイケメンに弱かったんだ。


「虹色のマジック玉はおいくらですか?」

「一つ50000マネさ。いくつ必要だい?」

「ちょっと高くないか?」

勇者様が言葉をかけた。

「道具を買えるのはここしかないけど。買わなくていいの?」

これって人の弱みに付け込んで売りつける手法だよ。こんな人本当にいたんだ。


「お嬢ちゃん、どうする?」

イケメン店員はアイラに向かってウインクした。

「そうだよね。ここで買わないと大変なことになるよね」

完全にはまっちゃってるよ。


「だが、そんなに高いとあまり買えない」

勇者様が否定をするとイケメン店員は、

「男の人には言ってないのだが」

と言った。勇者様を男性だと思っているみたい。わかる気もするけど態度変わりすぎだよ。


「ん? そこの超かわいいお嬢さん」

え? 私のこと?

「君はあまりにかわいいからいいものをプレゼントするよ。僕の秘蔵の剣さ」

そういうとイケメン店員は1本の長剣を出してきた。


「これは宝飾の剣と言って若くてかわいい女性が持つとどんな物でも切れる幻の剣になるのさ。たぶん君なら使いこなせると思うよ」

「私には無理です」

「そんなことないさ。このメンバーでは君がダントツでかわいい。使ってみてよ。代金はいらないから」


「私が使ってみてもいい?」

アイラさんが剣を持とうとすると、イケメン店員は剣をアイラから遠ざけた。

「え?」

「悪いけど君ではダメだ。この剣はただの飾りの付いた剣になってしまう。このお嬢さんくらいかわいくないと」

アイラが怖い目で私を睨んでいる。私何も悪いことしてないからね。


 店員が剣を私に差し出してきた。私は思わず後ずさりをする。

「早く持って麗華」

イケメン店員が笑顔でウインクしている。

「ちょっと待った!」

その時、勇者様が大きな声を上げた。


「何で麗華の名前を知っている? クレアこの剣を見てくれ」

「はい」

クレアが呪文を唱えると剣が赤く光り出した。

「呪いが掛けられてます」

「やはりそうか!」

「覚えてろ!」

そう言い残すと店員は店の後ろから逃げていった。そして店は消え去り、私たちは森の中に立っていた。


「どうなってるの?」

「おしらく私たちに呪いの道具を持たせて戦力ダウンを狙った姑息な作戦だろう」

なるほど。危なかったんだ。でも、どうして一番弱い私が狙われるのよ?


 とりあえずは騙されなかったんだから一件落着だよね?

「麗華」

「はい、何ですかアイラさん」

「ちょっと話があるわ。覚悟して聞いてくれるかしら?」

「えええーーー!! 私は何も悪いことしてないですよ!」

「あなたがいなくなれば私は再び一番かわいい人になれるかしら?」

「ひえええーーー!」

こうして私は新たな敵を作ってしまうのでした。


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