第7話 強力魔法をゲット
私達はいつの間にか洞窟の奥深くまで来ていた。
「僕もここまで深く来たのは初めてだ」
「大丈夫? ドラゴンとか出てこないよね?」
「そう言えばこの洞窟の中心にはブルードラゴンがいるって聞いたことがある」
「ええ!」
「冷たい息を吐いて全ての敵を凍らせるんだ」
私は無言で回れ右をするとポチを引きずって歩き出した。
「何するんだい?」
「命あっての物種よ」
「さっきの話は嘘だよ。だから離して」
ポチの言葉を当然のように無視して歩み続けるとロン毛のネズミ型モンスターに出会ってしまった。
「このモンスターって強いの?」
「僕も初めて見るモンスターだ」
「じゃあ、強いかどうかわからないの?」
「そうだね」
私はまた回れ右をして歩き出す。危険は回避するに限るよね。
しかし、モンスターは回り込んで私の行く手を阻んだ。
「どうしよう」
「戦うしかないみたいだね」
何でこうなるのよ。どうか強くありませんように。私は神頼みをすると戦いの姿勢を取った。
ロン毛ネズミの攻撃。麗華は2のダメージを受けた。麗華の攻撃。ロン毛ネズミに5のダメージを与えた。ロン毛ネズミの攻撃。麗華は1のダメージを受けた。麗華の攻撃。ロン毛ネズミに7のダメージを与えた。
「あまり強くないみたいだね」
「そうだね。これは楽勝だ。さあ一気にたたみかけるんだ麗華。」
ロン毛ネズミはヘヤーブラッシュの呪文を唱えた。ロン毛ネズミの髪が上空で固まり麗華を直撃した。麗華は70のダメージを受けた。
「痛っ!」
「まずい。もうHPが残り少ない。次にこの魔法を食らったら即死だ」
「ええー、どうしたらいいのよ?」
ロン毛ネズミの攻撃。麗華は2のダメージを受けた。麗華の攻撃。ロン毛ネズミに8のダメージを与えた。ロン毛ネズミの攻撃。麗華は1のダメージを受けた。麗華の会心の一撃。ロン毛ネズミに37のダメージを与えた。麗華はロン毛ネズミを倒した。
ポロロロン。
「やったね。モンスターを倒した上に魔法までゲットできたよ」
「凄い! それでどんな魔法なの?」
「今調べるよ」
ポチは空中に一冊の本を出すとページをめくった。
「それは何?」
「君のデータが書かれた本だよ。今取得したのはヘヤーブラッシュという魔法だ」
「ヘヤーブラッシュ?」
「自分の髪を丸めて相手にぶつけ強力な物理ダメージを与えるらしい」
「やったー! そこそこ強い魔法を手に入れたのね」
「確かに強力そうだ」
暫く喜んでいた私はふとある疑問に辿り着く。
「でも、あのモンスターはどうしてこの魔法を一回しか使わなかったのかしら?」
「言われてみればそうだね。もう一回使えば確実に勝てたはずだ」
「少し気になるんだけど、あの魔法を使った後ってモンスターの頭はつるつるだったよね」
「そう言えば髪が一本もなかったね」
ポチが慌てて本を見直す。
「ああ、わかったよ。ヘヤーブラッシュの呪文は全ての髪の毛を使い果たすため、次に使えるのは髪が通常に生えた後らしい」
「じゃあ、この魔法を使うと禿げるの?」
「そういうことになるね」
私ってつくづく不幸な星の下に生まれたんだわ。いくら強い魔法でもその後禿げるんだったら使えないじゃない。私は一応女の子だよ。あ~変な魔法ばかり覚えていく・・・・
「どうしたんだい? 急に暗くなって」
「この魔法も使えないわ・・・・」
「どうしてだい? 死にそうになったら使うしかないだろ?」
「禿げるくらいだったら死んだ方がましよ!」
「本当に若い女の子の考えることはよくわからないよ」
「どういう感覚してるの!」
こうして私は再びポチを引きずって出口に向かうのだった。