第68話 私のせいだよ
ここに出てくるモンスターは勝ちそうになっても逃げていくという不思議な行動を続けていた。
「麗華ちゃん、もっと後方に下がってください」
「はい」
どうして私ばかり攻撃してくるわけ?
クレアさんにああ言われたけどやられっぱなしって嫌だよね。こうなったら私も。
「えい!」
ジー。え? また?
「麗華! 攻撃しなくていいから防御に徹しろ!」
勇者様にきつく注意されてしまった。
「何とか倒したな」
「この辺りはコーチャの本拠地が近いのでしょうか? モンスターが強くなってきてますね」
「確かにクレアの言う通りだ。だがコーチャはもっと強いぞ」
冗談だよね? でも四天王なんだから当然か。
「ところで疑問があるのですけど」
「どうしたの?」
アイラさんがいち早く反応してくれた。
「どうして私が攻撃するとモンスターは注目するのでしょうか?」
「きっと麗華ちゃんがかわいいからよ」
「そんな~かわいいだなんて~」
「冗談で言ったのよ」
わかってましたよ。どうせ私はこの美人ぞろいのメンバーには似つかわしくない容姿だって。ふん。私は足元にあった小石を蹴った。
「痛い!」
え? 誰? モンスター?
「貴様ら許さん!」
「こいつはコーチャのナンバー2と言われるモンスターだ!」
「ごめんなさい! ごめんなさい! ごめんなさい!」
ヤバいよ~。ナンバー2って強いよね? ただでさえぎりぎり勝ちそうなモンスターばかりなのにナンバー2が出てきちゃったよ。どうしよう。私のせいだよね?
「みんな戦闘態勢に入るんだ」
「はい!」
皆さんは勇者様の声に反応して一斉に戦闘態勢に入った。私はいつものように一番後方で防御態勢に入る。早く強くなってこの足手まといな状況をなんとかしたいよう。私がいなかったらもっと楽に勝てるんだよねきっと。
でも、もしここで負けちゃったら私はどうすればいいの? さんざん世話になって私のせいで全滅なんて絶対に嫌!
「うおーーー!」
「ものすごいエネルギーだ! 油断するな!」
勇者様の言葉を聞くと私は思わず先頭に躍り出た。
「麗華! 何を考えているんだ! 後方に下がれ!」
「お願い! 倒すなら私だけにして! 石をぶつけたのは私なの」
「何を言い出すんだ! 下がってろ! 全員で麗華を守るぞ!」
「うん? お前が例の娘か。なるほど」
コーチャの手下は私を睨んでいる。めっちゃ怖いんですけど。
「うむ。よかろう。望みを叶えてやろう」
ひえええーーー!!!
「と思ったが今日のところは見逃してやる」
え? 何で?
「それではコーチャ様の祠でまた会おう」
そう言い残すとモンスターは去っていった。た、助かったー!
「何だったんだ?」
私はその場に座り込んだ。こんな緊張したの初めてだよ。
「麗華ちゃん。無茶したらダメだよ」
勇者様が優しく微笑んでくれた。なんかほっとするよ。
「ごめんなさい。私のせいでみんながやられたら大変だと思って。無我夢中で‥‥」
「まあ、気持ちはわかるけど、あいつの戦闘力なら麗華ちゃんは一瞬で灰になるところだったよ」
げっ! そんなに強かったんだ。
「麗華ちゃんのおかげでコーチャがどこにいるのか教えてもらえたけどね」
「祠で待っていると言ってましたものね?」
クレアが微笑んで言った。あのモンスターって凄いのかと思ったけど意外と抜けてたのね?
「あのモンスター私を見て『お前が例の娘か』って言ってたけど、私のことを知ってるのかな?」
「よくわからんな」
「きっと麗華ちゃんがかわいすぎるのでモンスターの間では有名なんだよ」
「アイラさん、もうそんな冗談はやめてください!」
ここで『そうかなぁ』って言ったらまたからかわれるんだよね。
「でも、ちょっとは『そうかも』って思ったんでしょ?」
「ちょっとだけなら。って、そんなわけないですよ!」
「言っちゃったよ。『ちょっとだけなら』って言っちゃったよ」
「確かに聞いたぞ」
「アイラさんとサラさん。冗談ですよ。ノリツッコミって知ってますよね?」
私の必死の弁明も聞いてもらえずみんなで盛り上がっています。もう絶対にガラでもないことはやめようと固く誓う私なのでした。