第67話 コーチャの手下
大騒ぎだった村を出ていよいよコーチャとの戦いに備える私たち。ようやく元の平和な生活に戻ったよね。四天王と戦うのは嫌だけど勇者様を取られるのはもっと嫌。も、もちろん勇者様と結婚したいとかそういう意味じゃないんだからね。
「この森を抜けると近道だがどうしたものか?」
「だったら抜けようよ」
勇者様の言葉にサラが即答した。
「いや、麗華のレベルを上げるなら遠回りでもいいのだが、かなりの遠回りになるんだ」
「だったら遠回りをしましょう」
クレアが優しい言葉を発している。
「大丈夫だって。近道で行こうよ」
「麗華さんが死んだら大変です。少しでもレベルを上げたほうがいいに決まっています」
その通りよ!
「麗華は私が守るから」
「守り切れなかったらどうするのですか?」
そうだそうだ! がんばれ! クレアさん!
「死んだっていいじゃん」
何てこと言いだすのよ!
「蘇生の魔法もあるし」
そういうことか。
「蘇生の魔法は100%生き返るとは限りません」
やっぱダメじゃん!
二人の会話にアイラさんが一声かけた。
「じゃんけんで決めたら?」
私の命がかかっているのにじゃんけんてあまりだよね。
「じゃあ、行くよ。じゃんけん」
本当にじゃんけんをするんかい!
「ぽん」
「私の勝ち!」
ええーー! サラさんが勝ったの!
「仕方ない。森を抜けて行くか」
勇者様まで! みんな森に入って行くよ~。嘘だよね?
「ちょっと待ってよ〜」
私は慌ててみんなの後を追った。
森の中は薄暗く不気味だ。
「ガオ-!」
「早速、強いモンスターが現れたな。行くぞ!」
勇者様の声でみんなが戦闘態勢に入る。もちろん私は一番後方で待機。
「かなり手強いぞ!」
「あれ? モンスターが逃げ出したわ」
アイラさんの言う通り、余裕があったように感じたモンスターが逃げ出していった。どういうこと?
その後、こんなことが何度か繰り返される。どうして?
「うむ。わからん」
勇者様が考え込む。
「本当ですね。どうして逃げていくのでしょうか?」
「これじゃレベルが上がんないよ」
本当だ。サラさんの言う通りモンスターを倒さないとレベルは上がらない。もしかして私たちのレベルを上げさせない作戦? それは困るよ。
グレートブレインが3体現れた。
「珍しいな。こんな所にグレートブレインが現れるなんて」
「そうなの?」
「こいつは非常に頭がいいので幹部になることが多い」
「3体も出てくるなんておかしいわね」
アイラが言い終わる前に攻撃してきた。
「キャー」
「気を付けろ。このモンスターは頭もよいが攻撃力も強い」
戦うこと10分。なかなかやっつけるこができないよ。こうなったら私も攻撃してみようかな? 私が構えるとグレートブレインたちが一斉に私を注目してきた。普通は防御態勢をとるとかするよね? もしかしてバカにしてない?
「えい!」
当然、私の攻撃などでは全くダメージを与えられない。グレートブレインたちはお互いに見つめあうと少し会話を交わして逃げて行った。何なの? 心なしか少し笑っていたような。
「大丈夫か麗華」
「はい、大丈夫です。でも有利だったのにどうして逃げて行ったのでしょうか?」
「さっぱりわからん」
やっぱり何かあるよね? 言えることは私の攻撃をバカにしていたことくらいかな。なんて失礼なモンスターなの。絶対に強くなってやるんだから。
「とりあえず先に進むぞ。みんな私について来い!」
「オー!」
勇者様が格好良く決めると、
「キャー! 勇者様格好いい。こっち向いてー」
と若い女性たちの声がした。村の女たちだ。ざっと10人はいる。
「お前らまだおったんかーい!」
またまた不似合なツッコミを入れてしまう私なのであった。