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第3話 空腹とクエスト

 ぐうう。お腹減った・・・・。お昼のお弁当半分しか食べなかったもんなぁ。ただでさえ小さなお弁当なのに半分も残しちゃったし。今から考えると私ってバカよね。そのお弁当も鞄と一緒にどこかへ行っちゃってここにはないし。とほほほ・・・・。


 ぐうう。

「何か音がしなかったかい?」

「し、してないわよ」

私は慌ててお腹を押さえた。

「ああ、お腹が空いたんだね」

「ううう・・・・」


 ポチは辺りをキョロキョロ見回した。

「どうしたの?」

「この辺に掲示板がないか捜してるんだ」

「掲示板がどうかしたの?」

「君はお金を持ってないだろ?」

「一銭も持ってないわ。あなたのおかげでね」


 ポチがいきなり走り出した。

「ちょっとどこに行くのよ。そっちに行くと村から出ちゃうよ」

私は必死でポチを追いかけた。因みに私は50メートル12秒の強者である。

「掲示板があったよ」

掲示板にはいろいろな紙が貼られている。


「何これ?」

「クエストだよ。この紙に書かれたことをすればお金が貰えるんだ」

「本当!」

当たり前だけど私は自然と笑顔になる。これで何か食べられるのね。


「早速クエストしようよ」

「問題はどのクエストを選ぶかだ」

「たくさんお金が貰えるのがいいわね。これなんかどう? 100000マネだって」

「大金が手に入るのはクリアが難しいんだ。『ファイヤードラゴンの髭を持ってくる』なんて君には無理だろ?」

「ファイヤードラゴンて強いの?」

「体長が30メートルはある」

「ひえーーー。絶対無理!」


 私は食い入るような眼差しで掲示板を見つめた。何しろこの任務には私の空腹を満たすという使命ががかかってるんだから。

「これなら行けるかも。『スライムを倒しカツラを持ってくる』だって。さっきは負けちゃったけど、武器さえ手に入れれば何とかなるかも」

「よく見なよ。スライムじゃなくてズライムだよ。レベル15はないと倒せない相手だ」

「そんなあ・・・・」

それはそうよね。スライムのカツラって変だもんね。え? じゃあ、ズライムってスライムがカツラを被ってるの!?


 ぐううう。ダメだわ。何も食べられないと思うと余計にお腹が空いてきた。あの木の下に生えてるキノコって食べられないのかな? 毒だったらやばいよね。もしかしたら巨大化したりして。

「どうしたんだい? 木を見つめて」

「何でもないわよ」

「もしかしてブタキノコを食べようと思ったのかい? あれは料理しなくても食べられるよ」

「本当!!」


 私は大慌てでブタキノコとやらをもぎ取った。

「いただきまーす。うーん、美味しい!」

「ただ副作用があるんだ」

私の動きがピタッと止まった。

「何? 何があるの? お腹壊すとか? 下痢なんて絶対に嫌よ!」


 ポチは落ち着いて呪文を唱えると目の前に大きな鏡が現れた。

「きゃー!!!!!!」

わ、わ、私の顔がブタになってる!

「驚いたかい?」

「驚くも何もどうして言ってくれなかったのよ!」

「あれだけのスピードで食べ始めたら言うのは無理だよ」

ああ、私って何て不幸なの・・・・。いきなり異世界に連れてこられたかと思ったら、突然ブタになるなんて。


 私は両手を地面について自分の人生を見つめ直した。今まで黒歴史なんてなかったんだけどなあ。家族は優しかったし、女子高生ライフはエンジョイしてたし、いい人生だったはずなのに。これで結婚すらできなくなってしまったわ・・・・。

「どうして落ち込むんだい?」

「落ち込むに決まってるでしょ!」

「その顔で言われると迫力があるね・・・・」


 その時、私の背後にモンスターが現れた。

「麗華! セクシーウーマンだ。このモンスターは強すぎる。逃げるんだ!」

「え? そんな急に言われても」

私は足がすくんで動けない。踏んだり蹴ったりとはこういうことを言うのね。もう、どうにでもして!


 モンスターが攻撃をしようとした時、私は咄嗟に手に持っていたブタキノコをモンスターの口に突っ込んだ。


 セクシーウーマンはブタキノコを食べた。

       ↓

 セクシーウーマンはポチの出した鏡を見た。

       ↓

 セクシーウーマンは自分の顔がブタになっているを知った。

       ↓

 セクシーウーマンは「きゃー!!!!!!」と叫んだ。

       ↓

 ボカン! セクシーウーマンは自爆した。


「あれ? 私、勝っちゃったの?」

ピロロロン。

「何この音?」

「経験値が上がったんだよ。凄い一気にレベル5になってる! え? え? え? 何が起こったの?」

「君はレベル5になったんだ。もうスライムには負けないね」

「じゃあ、お金が貰えるってこと? 何か買えるのね♪」

「今のはクエストじゃないから一マネも貰えないよ」

「えええー!」


 とてつもない倦怠感に襲われながら私はその場に座り込んだ。そして、『ブタキノコの副作用は5分しかなく、すぐに元の顔に戻る』と言うことを3時間以上気付かずにいたのだった。

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