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第21話 別れと旅立ち

 私はお世話になったおばさんにお別れの挨拶をしていた。

「今までありがとうございました」 

「気を付けて行くんだよ」

「はい」

私はあああああさんのパーティーに加わってこの町を旅立つことになったのだ。


「ねえ、どうして僕をペット用の檻に入れるんだい?」

「辛かったらいつでも帰ってきていいからね」

「おばさん、本当にお世話になりました」

「何だか娘が嫁に行くような気分だよ」

「ねえ、麗華聞いてる?」


「私きっと立派になって戻ってきます」

「ああ、麗華ちゃんならきっとやれると信じてるよ」

「麗華、僕をここから出してくれないか? もう出かけるんだろ?」

「じゃあ、私もう行きますね。ポチのことはよろしくお願いします」

「おい!」

「店の招き猫として使わせて貰うよ」

 別れってとても悲しい(おばさんの方)。でも厄介払いできた(ポチの方)から何か晴れ晴れしてる感じ。


「麗華ちゃん、お別れは済ませた?」

「はい、これからよろしくお願いします」

私は目一杯の笑顔で答えた。勇者様にいい印象を与えておかないとね。だってだって将来のお婿さんになるかもしれない人だし。ああ、私ったら何考えてるんだろ?

「どうしたの? まっ赤な顔をして?」

「な、何でもないです」

私は両手で顔を覆った。


「あれ? 猫ちゃんがいないけど」

いつも明るい魔法使いのアイラが聞いてきた。

「おばさんの店に置いてきたの」

「あの猫ってガイダーでしょ? ガイダーがいなかったらどうなるの?」

このアイラの素朴な疑問に勇者様が答える。


「ガイダーがいないとレベルの上がり方が少なくなるんだ。でも大丈夫だよ。そのうち仕える人を失った野良ガイダーが麗華ちゃんを見つけてやってくるさ」

なるほど。そういう仕組みなんだ。結局ポチはいなくてもいいってことか。


 あれ? さっきからモンスターが私達を避けていく。どうしたのかな?

「どうしたんですか? 麗華さん」

僧侶のクレアが私の様子を見て聞いてくれた。

「モンスターが襲ってこないなって思って」

「ああ、私達のレベルが高いので襲ってこないんですよ」

「そんなのわかるんだ?」

「野生の勘ですね」


 あれ? この場所って以前に来たことのある洞窟だよね。あそこの地底湖ってやばいとこだったような?

「麗華ちゃんのレベルを上げるために強そうなモンスターと戦うことにしたよ」

勇者様が笑顔で言ってくれた。


 もしかして目の前にいるのはあのブルードラゴン!?

「麗華ちゃんは一番後方で身を守ってるんだ。下手に動くと即死だからね」

「ええーーー!!!」

ちょっとちょっと! と言ってる間に戦闘が始まってしまった。どうしよう。逃げ出したらみんな怒るよね?


 あああああの攻撃。ブルードラゴンに1325のダメージを与えた。サラの攻撃。ブルードラゴンに987のダメージを与えた。


 凄い! みんな強いよ! ブルードラゴンのブリザードフラッシュ。クレアは魔法のバリアを張って麗華を守った。

「今だ麗華。クロッシングフラッシュを唱えるんだ!」

「クロッシング・・・・・・」

私は慌てて口を押さえた。

「危ないところだったわ。誰よ変なこと言ったの? え! ポチ? 何でここにいるの?」

「あれくらいの檻なら余裕で抜けられるよ」

計画は失敗したのね。


 私が落ち込んでいる間にブルードラゴンは倒れていた。ピロロロン。物凄い勢いでレベルが上がっていく。

「ガイダーが戻ってきたからレベルがかなり上がったな」

嬉しいやら悲しいやら。みんなは一斉に笑っている。私の気持ちも知らないで、もう。

こうして私は再びポチと旅することになってしまった。短い幸せだったわ。

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