復興の一歩
「此処がよく氾濫する箇所です」
「かなりの曲がりくねってますね」
「緩やかな曲がりに変えたいのですが流れてくる土砂が多く、その土砂は乾くと硬い、石の様になってしまい崩すのに時間が掛かるのです」
ガイムからの説明を受けその固まった石をさわってみた
これは.....
「...ブラウン辺境伯様...確かな事は山林の調査に行っているダリルに聞かないと解りませんが、この石の様な物は《セメント》ではないかと...」
「《セメント》?ですか?」
「はい、某国の建造物を作るのに使用された物だと...水で混ぜ合わせ乾かすと石になる...細かい砂と石灰、粘土等を混ぜ合わせ作るものと思います」
「それでは雨が降ればこの様な事はずっと続くと言うことですね?」
「何処から流出してるのか調べてみて対策を練った方がよろしいかと」
「何かに利用又は使用する事は出来ませんか?」
「ツルハシで簡単に崩れるので、耐久性は無いかと思われます」
「利用出来ないのですね...」
残念ですと呟かれたガイム
自分達が来たのだから何としてでも力になりたい
崩したセメントは水捌け様に使用したいと思っていることを伝えると
具体的にどう利用するのか聞かれた
まず、凸凹な道を一旦綺麗に、平らにする
50センチ位掘り下げて、その上にセメントの崩した物を平に敷き詰め土を固め戻す
「そんなやり方で大丈夫なのですか?」
「水捌けが良いと水溜まりも出来ませんし、何日も湿ったりしません
使い混んでいけば磨り減り凹みも出てくるでしょう、その部分だけを掘り起こし直して行けば良いのです」
夕刻過ぎにダリル達が戻ってきた
報告は夕食後となり国境付近を警備していない者達以外が大広間の長テーブルについた
大間かな紹介をして食事が始まった
「シルビア嬢、兵士食で申し訳ない」
「お気になさらずに、とても美味しいです。」
「何時かは夜会等社交の場を開かなければいけないのですが、如何せん招いた方々の宿泊等の世話など到底出来ません」
「何も出来ない事を解っていて何時、招待してくれるのかの催促が多く困ってるんです」
ガイムの妻シェルリは自分に教養も知性も無いが為に夫であるガイムの足を引っ張ってると感じてるようだった
何とかしてあげたい!と思っても復興を優先してみてはシェルリや邸で働く騎士達に、婦人として使用人として心構え等を教えられない...時間が足りないのだ...
どうしたものかと考えていたら良い案が浮かんだ
「ブラウン辺境伯様、ブラウン辺境伯夫人不躾ですが邸の使用人が使う部屋などはあるのですか?」
「ありますが...今は騎士達の寝床に成っています。入りきらない騎士達は北側の建物に住んでいます。」
「私が連れてきた使用人の大半の両親達は元々うちの使用人でした。父や妹と折り合いが付かずお暇を言い渡されたのです。母、マーガレットがその子供達を執事、使用人、伯爵騎士に雇用したのです」
「...?と言いますと?」
「その者達をこの邸で雇って頂けませんか?此方での生活の基盤が出来たら呼び寄せる予定でした。邸内の事はその者達に任せても大丈夫かと...騎士の方々も警護や鍛練に加えて邸での仕事等をしていては休まることもできませんでしょうし」
「...そうですが...」
「ブラウン辺境伯夫人の不安も取り除けます!私の侍女マリーの母親はマーガレット付きの侍女でした。それに残して来た伯爵邸の使用人達も何れはこの地に来る予定です。もちろん、伯爵邸の騎士団も来ます」
騎士団はここにも居ますと言うガイムに
近衛騎士の預かりは国王陛下です
私的な警護と言われてしまいます。少なからず面白くないと思っている輩の良い餌食になると伝えると
「解りました、お願いします」
「私もお願いします。辺境伯夫人としての教養を教えていただきたいです」
直ぐにギル準備が整い次第此処に来るようにと伝令をお願いした
邸で働く者達を邪険にしているであろう事は大体予想が付いている
体よく辞めるには口煩く父達に言ってる筈だからね
それから2週間後にマリー達の両親や使用人達の親、兄弟、家族が西側の辺境に着いた
この頃、私達は川の整備を始めていた
ダリルに聞いたところ確かに《セメント》と言う物質だと
私の見解通り軟弱な為、建造物には使用出来ないが、粘着液と混ぜれば強度が増すから城壁位には使用出来る様だ
又、山林はかなりの荒れ果てた状態だったので手入れをしないと大雨が降ったらまた土砂崩れを引き起こす可能性が高いので棟梁達にも手伝って欲しいと連絡を入れた
この地に移住してきて半年経った頃
大分復興が進んだ
王都に向かう道のりは馬車がすれ違うのにも余裕なほどの幅になり
今まで4日も掛かった道のりも2日程で着く様になった
当初連れてきた人数で復興しようとしたが、気付けば2週間余りで移住予定の人達が来たお陰で復興の時間も早く進んだ
ちなみに棟梁達も弟子や職人、親、兄弟に家族を引き連れていつの間にか移住していた
これも皆、ブラウン辺境伯様や辺境の民達のお陰だ
住む所の確保を迅速に準備してくれたので着いたその日から雨風しのげる生活が出来た
私の住む所は南東だったが、ブラウン辺境伯様の計らいで
戦が始まるまで商いが住んでいた南西の屋敷を提供された
荒れ果てていたが辺境にはガラス職人が数人残っていたので
ダリル達と一緒に屋敷を改装してくれた
200人弱の辺境の民達も何かと手伝ってくれていたので
皆で和気あいあいと復興に勤しんだ
ゲインが辺境の民達の住民登録等を駆って出た
そのお陰で何処其処の誰さん、誰さんは何処其処の子供等が分かり
民達の支援金が正確に出来たことで以前より生活が出来るようになった
また、王都までの道の整備が3ヶ月余りで出来た事で出稼ぎに出ていた人達も頻繁に帰ってこれるし、不足している物資の調達もスムーズに行えた
そんな中、棟梁に相談があると言われて
ブラウン辺境伯様と共に話を聞いた
辺境から王都迄の道の途中に開けた場所が幾つかあると言う
辺境伯様の領地ならばその場所に宿屋等作ってはどうかと言う物だった
荒れ果てた山林の整備で伐採した木材は建築に適応しているそうで
乾燥させてから使えるまでまだまだ時間が掛かるが
一つの雇用を生み出す事は出来ないか?と言う物だった
一つの案として預かる旨を伝えた
あっちこっち手を出しては全てが中途半端になる
だから先ず領地内の復興の目処が粗方付いたら
その場所を視察してみようと言う事になった